カサブランカの親戚で

Hさんというお気楽な男性がいる。

私が見た中で恐らく

世界で一番幸せな男だ。

 

 

彼の両親は早くに亡くなり

夫の家に預けられて

夫とは兄弟のように育った。

 

 

いずれも砂漠出身の親戚で

みんなカサブランカ生まれだけれど

血筋はザゴラという砂漠の街に繋がる。

 

 

なんと私が夫と知り合う前に

初めて訪れたモロッコで

ザゴラの砂漠ツアーに参加している。

 

 

あんな遠い所に

未知の親戚がウジャウジャいるかと思うと

とても不思議な気持ちになる。










 

さて、このHさんの事を夫は

兄弟と同じレベルで親しみを感じており

毎年必ず挨拶に伺う。

 

Hさんは4人子供がいるが

男の子二人を砂漠の自分の親戚から

お嫁さん探しをして結婚させた。

 

 

近親で大丈夫か?と、心配になるが

Hさん自身も奥さんとはいとこ同士で

彼の長男は天才君として名高かった。

 

 

フランスの大学を首席で卒業して

フランスの会社からヘッドハンティングされ

チュニジアに駐在に飛ばされ

政治の騒動が起こり逃げ帰って来たのだった。

彼はフランスに帰らず、モロッコで起業している。

 

 

こうしてHさんはかなり守りに入って

絶対に信用のある親戚同士で結婚相手を選ぶ。

 

 

Hさんは、ただ、静かに暮らしたいだけなのだ。

他のとんでもない血筋の人間を

家族に迎え入れて、その後騒動が起こるのが嫌なのだ。

 

 

 

私は彼の気持ちが、とても良くわかった。

昨年、義姉が危篤に陥った時、私が殺人犯扱いされた事を思い出してみても

一番近い、他の血が混じった親戚が

一番怖い敵だったりするのだ。

 

 

うちの夫もあの時、小さい頃から

妹のように一緒に育った姪っ子が

完全に敵の位置にまわって翻っていたのにショックを受けていた。

 

 

夫は2021年現在も、この姪っ子と

同じフィレンツェに住みながら

たまにすれ違っても挨拶もしない。

それくらい深い傷として彼の中では

未だ消化できない生傷として残っているのだ。

 

 

今度は実家のお母さんが亡くなったら

その姪っ子の母親に当たる親戚が翻った。

フランスの兄嫁も翻った。

 

 

みんな、兄弟が結婚したお嫁さんが翻るのだ。

 

 

Hさんはコレが嫌なのだ。

誰かがこの世から去った時に

一気に関係が切れてしまうような

浅はかな親戚関係が許せないのだ。

 

 

 

だから、絶対に関係が切れないように

なるべく静かで温和な性格の親戚の女性を見つけて

自分の息子と結婚させるのだ。

 

 

この息子達も

「お父さん、結婚したいよぉ〜!」

と言って

 

お父さんのHさんが

「ほら、良い娘を見つけてきたよ!」

と言うと

 

「ありがとー!」

と言って素直に結婚するのだ。

 

 

あり得ないポーン

と思われるかもしれないが

モロッコでは、未だこの方式で

素直にみんな結婚していく。

 

 

夫にそれについて突っ込んで聞くと

彼らにとって、結婚とは「慣れ」なのだと言う。

 

どんな女性とでも

婚前のお付き合い無しに結婚して

静かに暮らして行けるのは

「その女性と暮らすことに慣れる」事で

そこに幸せを見つけていくのだという。

 

 

私には出来ない笑い泣き

と思うが、

実際かなりの夫婦が離婚もせずに

生涯を共にしている事から

 

あまり結婚に野望を抱かない姿勢は

とりあえず、結婚へのハードルを下げているのだろう。

 

 

逆に私たち日本人のように

背が高くて、コレくらいの収入で.....

などと注文が多くなるにつれて

結婚へのハードルは上がっていくだろう。

 

 

彼らはあまり多くを求めていないのだ。

両親と生涯同居する事も多い。

 

 

だから、モロッコ人は

あまり関係を崩さないように

相手に決定的な言葉は言わなかったりする。

 

どうせ生涯同居すると解っているのだから

言葉をグッと堪える技も身に付けている。

 

 

だからみんな裏では悪口ばかり言っているのかもしれないけれど爆  笑

 

 

私も同居してみて解ったけれど

私にとっては迷惑以外の何ものでも無いが

子供の精神教育的には、お年寄りを敬う心を持ち合わせられて

とても良いと思う。

 

だから当たり前のように

モロッコ人は率先して助け合いの行動が出来るのだ。

 

 

我が家のように、親戚との関係が崩壊する前に

結婚の時点で対策をとっているHさんは

かなり頭が良いと思う。

 

 

だから彼は、悩みもなく

いつも幸せそうに笑っているのだろう。