私と二人のモロッコ人が
遊び始めてしばらくして
Aさんに

結婚してください。

と言われ
私はズッコケそうになった。



あの、私達、まだ公式にお付き合いもしていないのに
まずは付き合ってください
じゃね?



ずいぶん後から知ったのだけど
イスラム教徒は、婚前に性交渉をしないのが常識なので

一線を超える = 結婚

となるのだそうだ。



つまり、Aさんの「結婚してください」は、

結婚を前提としてお付き合いしてください

だったようだ。



モロッコでは婚前のカップルが
ホテルで同室に泊まれないし
(結婚している証明を身分証明書で提示)

婚前のカップルが公然とデートするのも
はばかられる文化で、何れにしても
通報され逮捕される場合もある。


女性に手を出す事が
それ程重い行為なので
モロッコ人男性は処女である事を重視しない
外国人女性に一生懸命声を掛けて遊ぼうとするのだ。

Aさんは決して私と遊ぼうとしていたのではない。




しかし私には唐突すぎて
その言葉の裏の意味など全く理解出来ていなかったので


きちんとお互い知り合って、吟味してから
そういう言葉を聞きたかったな、とか

それから考えすぎて

そんなに安売りしてねーよ!

とか思ったり
悶々としてしまったけれど
結論から言えば

彼は私と結婚を考えている
という事実であり

唐突なプロポーズでもあったわけ。



私は結婚しましょう
と即答は出来なかったけれど

真面目で誠実な人だし
いつもエディ マーフィーばりに幸せそうに笑っているし
見ていて気分が悪くなることはないので

結婚は置いておいて
お付き合いすることを承諾した。




↑私の友人が貸し切って結婚式を挙げたお城。


私は小さい頃から
自分が結婚する姿をイメージ出来なかった。


女性なら誰もが憧れる
ウェディングドレスにも全く興味がなかった。


どちらかというと
きらびやかな物質的なものより

揺るぎない安心感のような
本質的なものを、いつも欲していた。

一時的な自己満足よりも
永続的な一体感を望んだ。


孤独である事に何の恐れもなく
ただ一人の理解者がいてくれる事実が
私を心から満足させた。


Aさんの出現で
この人が私の本質的な理解者に
なってくれるといいなぁ、と思った。