タズラなKiss ~Love in TOKYO   
  
第13話 <運命のイタズラ> PART1



病院のベッドで苦しそうにしながら、うなされている入江パパ。




「不安定性狭心症です。
ご本人には定期健診の結果をすでにお伝えしてあったんですが」

「そんなこと、なんにも」


別の部屋で先生にパパの容態を聞いているママと直樹。

すると担当の先生から初めて聞くパパの症状。

初めて知ったママは動揺を隠せない。





「そうですか。ご家族に心配かけたくないと思って、黙ってらっしゃったのかもしれません」

「それで父の容態は?大丈夫なんでしょうか?」

「今回の発作は軽いものでしたが、このまま無理をなさると心筋梗塞になる可能性があります」

「そんな・・・」

「それだけは避けたいので絶対安静で薬で治療しながら様子を見ていきましょう。お仕事も完全に休まれてください」


あまりの衝撃なパパの病状に、直樹も驚きを隠せず一気に不安に包まれる。

泣きそうになるママと何かを考え込んでいる直樹の姿。








話を聞き終わって部屋を出て来た二人。

そして心配そうに廊下で待っていた琴子とパパと裕樹。



「奥さん、イリちゃんは?」


すぐに声をかける琴子パパ。


「パパ、随分前から心臓が悪かったらしいの。
でもそんな素振り全然見せなくて。
かなり無理してたんでしょうね・・・」


不安になりながらも、三人に容態を伝えるママ。




「そんな・・・」


その話を聞いて琴子も一気に不安になる。


「しぱらくは絶対安静で様子を見ることになりました」


冷静に状況を伝える直樹。


「でも安静にしてれば大丈夫なんだろ?」

「今のところは・・・。
パパがこんなに苦しんでるのに全然わかってあげられなくて。
あたし妻失格だわ!」


どんどん不安が押し寄せて泣き出してしまうママ。


「奥さんのせいじゃないです。
イリちゃんは責任感が強いから、
その分いろいろ背負い込んだりストレスを溜めることもあったでしょう。
とにかく命に別状はなくてよかったじゃないですか」

「でも会社は? 
パパがお休みしてたらパパの会社はどうなるの?」




素直に疑問に思って尋ねる裕樹。


こういうなのは素直に思ったこと、子供やからこそ聞けるのよねぇ・・・。




「・・・オレがやる」





直樹が一言そう呟いた言葉に、すかさず反応する琴子。





ついさっき直樹の将来の夢を聞いたばかりの琴子は、まさかの直樹の言葉に衝撃を受ける。



「だってお兄ちゃん、パパの会社継ぐかどうか決められないって」

「親父、きっと自分の心臓のことわかってて、それでオレを後継者にって、急いでたんだと思う。
だから、親父の会社はオレが守るよ」




力強くママにそう伝える直樹だけど、その表情は決して前向きな表情には見えなくて。

とても辛そうに見える彼の切ない表情。


直樹さん頭がいいからあの短時間で全部理解したんでしょうねぇ。
で、考えたら自分が継ぐしか方法はないと判断して。
でも、すっごい辛そうですけどね・・・。


「ありがとう、お兄ちゃん!」


だけど力強いその直樹の言葉を聞いて喜ぶママ。

そんな二人の様子を見ている琴子の表情は、明らかに何か言いたそうな不安そうな顔で・・・。





でも私だけは知っている。入江くんの本当の夢を・・・。

入江くんはお医者さんになりたいのに。

せっかく見つけた夢、入江くんは諦めなくちゃいけないの?


琴子ちゃんもさっき聞いたとこなのに、こんな決心してる直樹さん見てツラいだろうねぇ・・・。
でもこういう状況でも本当の気持ちを知っているのは琴子ちゃんだけっていうのは、やっぱり特別な感じしますね♪





ようやく見つけた夢なのに。

仕方のない状況に、自分の気持ちを押し殺して選んだ現実。

その切ない表情の奥底に深く深くその思いを閉じ込めた彼。




彼の本当の気持ちを一人だけ知っている彼女は。

彼の気持ちが痛いほど伝わって来て。

だけど、何も出来ずに切ない想いと共に、ただ彼を見守るしかなくて。




お互い切ない想いを抱えながら、向き合わなければならないこの現実は。

これからの二人の未来を暗示するかのように・・・。



二人の運命が、少しずつ望まぬ方向に動き出した。