エアコンスイッチをONにすると、1分くらいでマグネットクラッチがON/OFFを繰り返すという迷宮入りの可能性が出てきたN-ONE。
いろいろと点検した結果、マグネットクラッチをON/OFFさせる6つの条件の中で、ほとんどの部品は交換しており、また、圧力スイッチの直結などのダミーでの点検結果でも悪いところはなかった。
しかし、症状からはA/Cエバポレータ温度センサーが怪しい。
ただし、依頼者の工場で、正常な車を横に並べ、その車のA/Cエバポレータ温度センサーから配線を取り出し、トラブル車のコネクタに接続しても変わらないということは確認している。
それでも、当社で良否を確認しなければいけない。
まずはA/Cエバポレータ温度センサーの単体点検である。
修理書に温度特性図があったので、測定時の温度と抵抗を比較してみたが、ほぼ特性通りの抵抗値だった。
念のため、ダミーの可変抵抗を入れ、変化させてみた。
すると、温度によって「エアコンスイッチ」信号はONになったりOFFになったりした。
このことにより、データモニター上のエアコンスイッチ信号とは、実際のスイッチのON/OFFではなく、マグネットクラッチをON/OFFさせることを示していることが確認された。
A/Cエバポレータ温度センサーの抵抗値をゆっくり変化させ、データモニター上でエバポレータ温度を6℃くらいにすると、不具合症状が現れた。
抵抗値を小さくし8℃くらいにすると、コンプレッサーはONのままで、ON/OFFを繰り返すことはなかった
これで、A/Cエバポレータ温度センサー信号に問題があることがはっきりした。
データモニター上で6℃くらいになると不具合が発生するのである。
このことは実際の不具合発生時にも確認されていた。
ただし、センサー自体に問題がないことも確認されているので、後は配線やコネクタに原因があるかもしれないのでさらなる点検が必要である。
修理書等にコンプレッサーをOFFする温度の記載がなかったが、一般的にはもう少し低い(0~4℃)のではないかと思われる。(外気温度やRECIRCモードとFRESHモードの違いによっても変化)
それに、ダミー抵抗で一定の温度にしているのに、頻繁にON/OFFを繰り返すのはおかしい。
一般的にはONする温度とOFFする温度に差を設けている。(ヒステリシス)
例えば、エバポレータ温度が3℃を下回るとOFFした場合、3℃を上回るとすぐにONするかというとONはしない。
(そんなことをすると、頻繁にON/OFFを繰り返してしまう。)
車種によっても違うが、OFFする温度よりも1℃くらい高い温度(4℃くらい)でONするようになっているはずである。
もしかして信号にノイズでも乗っているのかもしれないと思い、オシロスコープでA/Cエバポレータ温度センサーの信号を点検することにした。
すると、今までに見たことのない波形が現れた。
通常は、ほぼ一直線上の信号だが、この車の信号は全体的に交流波形で、その中に、更に最大1Vのノイズが乗っているのである。
(1マスは1V。下から2つ目の破線が0V。平均的には2.5Vくらいだが、時々、3.5Vになっている。)
もしかしたらノイズかもとは思っていたものの、内心、ほとんど期待していなかったのである。
これでやっと一筋の光が見えてきた。(^^)v
つづく