男は(自分だけ?)以外と単純な動物だと思う。80%以上の情報を視覚に頼っていると何かの本で読んだことがある。特に意外なこと(予想を裏切る現象)に弱い。自分がその代表選手であることは間違いない。
 一緒にサークル見学をしているとき、彼女は、とても真剣に、しかも相手の目をじっと見て話を聞く。「たかがサークルの説明で何でここまで彼女は一生懸命聞くのだろう。しかも落ち研(落語研究会)・・・」。すごく純粋なんだきっと。いい娘かもしれない・・・すこしずつ自分の心は坂道を転がりはじめいた。
サークル見学から、一緒に学食で待ち合わせをするようになった。あの3人組とHIDE。3人組はクラスが一緒で、HIDEと俺は別々のクラス。不思議な組み合わせ。ほかにも男はいっぱいいるのに・・・。というか男のほうが圧倒的に多い大学なので、学食でも特に目立った。学生ライフをエンジョイしている見本ともいうべき、HIDE。モデルといっても分からない華。少し感覚がずれているジーンズの似合う香。田舎からでてきたお嬢様ともみ。いつしかこの時間が一日の大きな楽しみになっていく。
 偶然であったHIDEとナンパされた子と3人でのサークル見学がはじまった。2人は仲がいい。昔からつきあっているかのごとく・・・。居場所がない。理由をつけて帰ろう。そのきっかけを探していた。
 そのとき、別の女の子2人組みを、ナンパされた子がみつけて、声をかけた。「サークル見学?一緒に回ろうよ!」「ぺちゃくちゃぴーちくぱーちく×●△」「きゃー」(・・・)
 完全にきっかけを失った。
「自己紹介しようよ」(・・・おいおい知らないもの同士なのか)
「私、はな!咲く花ではなくて、華麗な女性の華で(はな)ね」(・・・合っている)
<残りの2人>
「私、香(かおり)。アメリカいたから友達が少ないの」(・・・大丈夫。アメリカでなくても、今の時期は友達少ないから)
「私の名前は、小風ともみ。富山出身です。」(・・”)
 大学入学後、新入生に対してのオリエンテーションがあった。そこでとなりに座ったのが、HIDEだ。日に焼けたきれいな顔立、かれが持つリズム、話し方からしていわゆる「遊び人」にしか見えなかった。最初の言葉はこうだった。
 「祭り好き?」「好きでしょ!」「おれHIDE。よろしく」
 なんだそれ?という感じだったけど、なんとなく仲良くなった。
 それから数日後、生協の売店前で、偶然HIDEに会い、「これから、サークル見学にいくけど、一緒に行く?」と誘われた。一緒に彼女らしき女性がいた。聞くと、さっきナンパされたとのこと。田舎育ちの自分には、その感覚・スピード感がなじめなかった。
 HIDEは、私立からエスカレーター式であがってきたらしく、やたら大学の事情に詳しく、いろいろと教えてくれた。
 高校3年の8月からの付き合いは、はかなくも入試本番が近づくにつれ自然消滅になっていった。自分は、学校推薦をうけたため、11月には試験を終え、12月中旬には大学に合格していた。今思い出せば、その推薦入試の会場ですでに彼女と出会っていた。

 修学旅行のバスの席や、クラスの席替えなど、自分はいつも一番後ろの席に陣取っていた。後ろを取られるのが嫌だったのもあるが、後ろから観察できる有利さを知っていた。推薦入試の会場となる大学の教室では、20人くらいの学生が全国から集まっていた。無機質な教室がかえって新鮮だった。いつものように後ろの席を確保するとライバルたちを後ろから睨んだ。そして、まもなく説明が始まろうとする瞬間に、遅れて入ってきたのが彼女だった。
 あまりにも拍子抜けするくらいに自然に、席のとなりにきて、
「ここ ええん?」と笑顔で話しかけてきた。
全神経を総出動させ、戦闘態勢にはいろうとしていた自分は、
「あぁ」と返事になったのか、ならないかの声で答えた。
 試験は、90分の論文と面接だった。
 論文は、「壷を頭にのせた民族衣装をまとった笑顔の女性」の写真をみてテーマを決め自由に論文に仕上げるというものだった。
面接では別々の会場になったため、その後、彼女と会うことはなかった。

 
Richard Marx /Right Here Waiting がネットで流れている。彼女が好きだった曲だ。仕事が止まってしまう。
彼女の出身高校の話をしていたことを思い出す。ネットで検索する。あった。そこにあるはずのない存在を求めて、彼女との接点を探す。
何をしているんだ。やばい。戻れ!
 書き始めてからしばらく時間がたつ。今日は休業日だが、例年のごとくデスク周りの整理のために出社。電話のならない事務所でもくもくと整理をしていると、ふとこのブログを書いていることを思い出した。冷静に読み返すと、やはり「書かなくてはならない」理由が 漠然とだが、そこに確かにあることに気づく。強い人なら、新しい年を迎える前に置いていくことができるのだろう。これら書類と同じように・・・。
 時間がたって分かった事がある。普通の人でも、一つは、物語を書き残すことができるのかなと。まだまだ書き足りない。本当は、もっと書きたい・・・。
 
昔に戻るのは簡単である。あの頃一番好きだった曲を聴けばいい。本当に不思議なもので、体全体・五感が活性化し、一瞬その頃の風が吹き、自分を包む空間が変わる。そして甘酸っぱい気持ちが蘇る。
 自分にとっては、Sting & Police の「EVERY BREATH YOU TAKE(見つめていたい)」だ。美しいシンプルなメロディーからはじまるこの曲を、CDの演奏プログラムを最大の35曲リピートに設定し、それをくり返しくり返し聞いていた。



「Every breath you take」Sting & Police

Every breath you take
And every move you make
Every bond you break, every step you take
I'll be watching you

Every single day
And every word you say
Every game you play, every night you stay
I'll be watching you

Oh, can't you see
You belong to me?
How my poor heart aches
With every step you take
Every move you make
Every vow you break
Every smile you fake, every claim you stake
I'll be watching you

Since you've gone I've been lost without a trace
I dream at night, I can only see your face
I look around, but it's you I can't replace
I feel so cold, and I long for your embrace
I keep crying baby, baby please,
Oh, can't you see
You belong to me?
How my poor heart aches
With every step you take
Every move you make
Every vow you break
Every smile you fake, every claim you stake
I'll be watching you
Every move you make, every step you take
I'll be watching you
I'll be watching you

東京から電車で約1時間のところにある私が生まれた街は、西側を川が流れ、湖もあり、今思えば自然と歴史と文化が適度にブレンドされた、なかなか粋な土地である。
 青春の一ページを仲間と築いた高校は、街の中心から川沿いの土手を下ったところに位置する。昔は進学校だったらしく、その名残りでその意識が他より高いぐらいであり、それ以外は、いたって普通の公立高校である。
 ただ、自慢できるのが、帰宅コース。緑の風をあび、夕日に向かって帰る。途中にあるチョコレート型コンクリート防水壁で自転車をとめ、体いっぱいにオレンジ色の光を吸収しながら、たわいもない話を何時間もしていた。実際は部活でこんな経験ができたのも3年の後半のほんの少しの期間であったが、女性と付き合うことがはじめての自分にとってかけがえのない思い出である。
カラーではない。セピア色でもない。紫がかった
決して明るくない空間。
小さい頃よく「かくれんぼごっこ」をしたときに隠れた場所がある。
それは近所のアパートの階段の下だ。
なぜかそこに彼女と一緒に隠れている。

完全に過去と今の気持ちが同居している。
あたり前に一緒にいることの安心感と
何年かぶりに会えたことの何とも言えない気持ち
不思議な感覚・・・

すると場面が変わり、高校の体育館の部室の中。
パイプいすに二人がすわっている。
知らない人が「はじまるぞ」と叫ぶ
彼女の顔を覗き込む。怒ってもいないし泣いてもいない。
ただ何かいいたげな様子。
「大丈夫。2時間だから」
なぜか部活にいってしまう自分。

《 省略 》

帰ってくるとそこにはいない。
探す。探す。あてもなく探している。
テレビドラマのように、何かが残っているわけでもなく、
こうして、12年ぶりの夢での再会は終わってしまった。