お待たせいたしました。
昭和初期の岸和田型だんじりの中でも特に多くのファンを魅了する一台、上町。
昭和初期の岸和田型だんじりの中でも特に多くのファンを魅了する一台、上町。
過去にも何度かUPしておりますが、昨年夏に「網ナシ」という好条件で拝見させていただく機会を上町関係者の方からいただき、隅から隅まで撮影。
材木や彫物がいいのは一目瞭然なのですが、昭和初期の作を今の時代にまでこうして保存・継承されているのは、歴代上町の皆さんのこのだんじりを大切にする気持ちの表れでも有ります。
昭和4年、地元の老舗「小寺の仁左衛門」の分家“大宗”こと植山宗一郎師と、その弟・義正師により製作されたのが上町地車。見送り内には「當町 植山宗一郎」と記されております。
彫物責任者は淡路彫りの名匠・開正藤師、助には息子生珉師が腕を振るった地車で、ほかにも若手の木下舜次郎師・松田正幸師ら当時の若手彫刻師も新調時の写真には顔を並べておられます。
彫物責任者は淡路彫りの名匠・開正藤師、助には息子生珉師が腕を振るった地車で、ほかにも若手の木下舜次郎師・松田正幸師ら当時の若手彫刻師も新調時の写真には顔を並べておられます。
地車新調の際、ひとつのエピソードがあります。
岸和田の他町でも、上町と同様に新調計画があり、両町とも淡路の開師に依頼しようとしており「明日の朝に頼みに行く」という上町役員に、大工棟梁の植山宗一郎さんは、「行くんやったら今日頼みに行かなあかん」とひと言、役員が夜船に乗り淡路へ急いだとのこと。
その結果、見事に“快諾”を得たその翌朝、帰りの道中に他町役員とばったり遭遇したという逸話が残っているのだとか。。。
岸和田の他町でも、上町と同様に新調計画があり、両町とも淡路の開師に依頼しようとしており「明日の朝に頼みに行く」という上町役員に、大工棟梁の植山宗一郎さんは、「行くんやったら今日頼みに行かなあかん」とひと言、役員が夜船に乗り淡路へ急いだとのこと。
その結果、見事に“快諾”を得たその翌朝、帰りの道中に他町役員とばったり遭遇したという逸話が残っているのだとか。。。
そんな逸話を持つ銘だんじり上町。
昨年7月、うだるような猛暑の中、水分補給も忘れるほど撮りまくった写真の数々から厳選しUPいたします。
昨年7月、うだるような猛暑の中、水分補給も忘れるほど撮りまくった写真の数々から厳選しUPいたします。
では、ご覧頂きましょう。
どうぞ~☆
どうぞ~☆
▲まずは前後の姿見です。
『男性的で姿見一番』と称された“植山型”の代表作。
▲三手先八段の組物に切妻の屋根が、惚れ惚れするほどマッチングしてます。
▲主屋根前後の懸魚です。
後面は三羽の千鳥が付け木ではなく彫りこまれたもの。格好ええなぁ。
▲鬼板と後屋根隅木。
主屋根には木瓜紋、後屋根には橘紋。
▲屋根周りで見落とせないのが桁隠しの千鳥。
写真上:主屋根
写真下:後屋根
▲さぁ、桝合いです。まずは主屋根正面から。
おなじみ“天之巌戸開き”。
仕上げの繊細さ、構図、ともに非の打ちどころ無し。さすが開さん。
▲桝合い下がりには“日輪月輪”。
このあたりも見逃せません。
▲そして、ふだんなかなか見ることのできない主屋根後面です。
唐子の獅子遊び。癒されます。。。
▲お次は右の平“源頼朝 鶴ケ岡八幡宮社頭にて千羽の鶴を放つ”です。
鶴が動く細工がなされています。
二重桝合で上段は日本武尊熊襲征伐。
▲そして左の平は“後醍醐帝 隠岐より帰るを名和長年迎え奉る”の名場面。
二重桝合で上段は素戔嗚尊大蛇退治です。
▲左右の桝合い下がりも注目です☆
ほんまに細かい細工、凝ってますね。。
▲後屋根桝合い部分は二重見送り形式。おなじみの“本能寺”です。
写真は左右の平と、桝合い下がりです。
奥には蘭丸の姿も見えます。
▲後正面から見ますと、奥に本能寺の館が見えますね。
ここでも見落とせないのが桝合い下がり。
木瓜紋と橘紋が確認できます。
▲いよいよ腰周りです。
▲正面土呂幕は、みなさんご存知「川中島」です♪
何回見てもいいですね。。。
▲続いて右の平です。
▲土呂幕平右「本多出雲守忠朝 天王寺口にて荒川熊蔵と一騎討をす」。
躍動感あふれる雑兵も見逃せません。
▲そして左の平。
▲土呂幕平左「加藤清正 薩摩にて新納武蔵守忠元と一騎討をす」
後に舜次郎師もよく刻んだⅤ字開脚の雑兵、ええ味出てます☆
▲さぁ、見送りです!!
淡路彫りファンならずとも圧巻の空間。
良すぎてため息がでます・・・(汗)。
▲彫刻師 淡路住 開藤太郎
棟梁 當町 植山宗一郎
御大典記念新調
大阪城夏之陣
・・・と、記されています♪
▲ええのんがいっぱいです。
▲どや~!!最高ですね。
井伊勢を蹴散らし奮戦する木村長門守重成。
▲これも秀作!
組討ち「薄田隼人、河村新八郎に短刀を突き刺さんとす」です。
▲左右の脇障子です。
▲表情豊かな雑兵。
おなじみ黒田一門の作風。
▲竹の節は、おなじみ「波に兎」。
丸く流れるようなラインはさすがですね。
▲木鼻あれこれ。
安定した雰囲気。
木鼻が良いとだんじりの姿見をキュッと引き締めますね。
◆上町地車紹介◆ ・製作:昭和4年 大工:【大宗】植山宗一郎 彫師:【淡路彫】開正藤・正珉(親子)、木下舜次郎ほか黒田一門 ・主な彫刻 ・主屋根枡合い 正面「天之巌戸開き」 後面「唐子の獅子遊び」 平右(上段)「日本武尊熊襲征伐」 (下段)「源頼朝 鶴ケ岡八幡宮社頭にて千羽の鶴を放つ」 平左(上段)「素戔嗚尊大蛇退治」 (下段)「後醍醐帝 隠岐より帰るを名和長年迎え奉る」 ・土呂幕:正面「川中島 信玄本陣に謙信の単騎躍り込む」 平右「本多出雲守忠朝 天王寺口にて荒川熊蔵と一騎討をす」 平左「加藤清正 薩摩にて新納武蔵守忠元と一騎討をす」 ・見送り:上段「明智光秀 本能寺に織田信長を急襲す」 下段「大坂夏の陣」
何度も書きますが、何回見ても飽きないええだんじりです。
平成の豪華な新調だんじりが増えてくる中、古いだんじりに含まれてゆく上町。
しかしながらその彫物と、バランスの良い姿見から生まれる威圧感は他を圧倒します。
平成の豪華な新調だんじりが増えてくる中、古いだんじりに含まれてゆく上町。
しかしながらその彫物と、バランスの良い姿見から生まれる威圧感は他を圧倒します。
今回、作業中ながら素晴らしい機会を与えていただきました上町関係者のみなさまに暑く御礼申し上げるとともに、今年も格好のいい曳行風景をカメラに納めたいと思います。
ありがとうございました。
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