筋海町地車(岸和田市) | 板原村のだんじり会館

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だんじり時々、旨いもの♪
2006年にヤフーブログを開設、これまでの多くの人との出会いに感謝。
「館長いつも見てるよ!」と声をかけてくださる方々が各方面にいて、そういうのがブログを継続して頑張れる源なのです。

どうぞご贔屓に。
ごゆっくりどうぞ。

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お待たせしました。。。
泉州屈指の銘だんじりとして有名な筋海町地車、その魅力をご紹介いたします。

ご存知のとおり、大工は名門“久吾”こと久納久吉・幸三郎(兄弟)。
数ある岸和田型地車の中で主屋根に初めて優雅な「軒唐破風」を採用した地車が、
まさにこの昭和8年作の筋海町。
それはまるで鳥が翼をいっぱいに広げたかのような美しさで魅了します。

その大工仕事に呼応するかのような、躍動感溢れる彫刻の数々。
中でも特に異彩を放つのが芸術家・西本五葉師。
土呂幕正面、左右の松良、そして見送りに組み込まれている五葉師の作は、表現力に優れ、後にも書きますが計算し尽された緻密で繊細な作。

だんじり彫刻の責任者としては、この筋海町が「唯一」というのも自慢のひとつでしょう。

さらに「関東彫」の一元(野村)正師、「淡路彫」の開正珉師、「和泉彫」の玉井行陽師らの手も加わり、まさにファンにはたまらない顔ぶれでもあります。。。

前置きはここまでとしまして・・・
では、早速、渾身のレポをご覧ください♪

どうぞ。。




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▲前後の姿見です。
 この正面に立つと、しばらくロックオン(汗)してしまいました。
 まるで翼を広げたかのような、言うこと無しの優雅な姿ですね。。。



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▲書くことが多くなりそうなので、順番に見て行きましょう。。
 まずは鬼板です。
 平成の大修理で“復活”された新調当時の意匠「獅嚙」が付くのは主正面。
 曳行中は幟で見えない後屋根の鬼板も、いい雰囲気です。



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▲続きまして懸魚。
 後屋根には纏同様“波に兎”が施されてました♪



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▲筋海といえば、軒唐破風。
 その「テリ」も最大の魅力、大工さんの腕のみせどころですね。
 


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▲主屋根正面を真下から拝見。
 柱芯を通る組物最上部で桁を支えているため、このだんじりには「桁鼻」が存在しません。
 その分、小屋虹梁と車板がすっきりと広く表現されています。
 シンプルな小屋虹梁が車板の青龍を一層際立てます。



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▲主屋根枡合い四方」(いずれも開生珉・作)です。
 正面「天之巌戸開き」
 平右「牛若丸、五条大橋に弁慶と渡り合ひ主従の契を結ぶ」
 平左「村上彦四郎義光、芋瀬にて怪力を顕し錦御旗奪還す」
 後面「陣幕に雑兵」
 


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▲「隅出す」も非常に凝ってました。
 写真は、主屋根左前「神日本磐彦命八咫鳥の飛来を見る」。



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▲木鼻は全て正面向き、手には何も持たないシンプルなタイプです。
 ええ顔してますね~♪



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▲綺麗な扇垂木の細工です。
 平側は柱芯から8本で開いているのがわかります。



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▲お待たせしました!
 土呂幕正面です!
 五葉師が荒彫りから仕上げまで一人で作り上げたとされる芸術的な作、
 「錦城(大坂城)の若櫻・木村長門守重成奮戦す」。
 馬の肉付きに注目です。
 さらに立ち向かう右の二刀流に武者は・・・宮本武蔵の説も?



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▲こちらは関東彫・一元正師の作。
 平右「荒武者・眞柄十郎左衛門、姉川にて本多平八郎忠勝と一騎打す」



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▲同じく一元正師の作。
 平左「新納武蔵守、薩州川大河に加藤清正と戦ひ破れたるも引分ける」
 一元正師、当時25歳の頃の作。
 


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▲その中央に配された銘。
 「九州川内河 新納武蔵守・加藤清正ト戦ヒテ破レタルモ引キ分ケトナル」とありました。
 さらに側面には「昭和八年春、一元正作二十五才」と。。。



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▲「縁葛」三方は、大連子・小連子とは手が違うようです。
 玉井行陽師の作と思われます。



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▲「大連子・小連子」三方は、淡路彫りの開生珉によるもの。
 躍動感あふれる繊細な細工が満載。。。



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▲松良(向テ右)
 「頼光、家来と山伏の姿に身をやつし酒呑童子の鬼退治に挑む」(西本五葉・作)
 この部分だけ見ても、タメ息ものです。。(汗)



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▲同じく松良(向テ左)
 「弁慶、安宅関にて関守富樫成経の詰問に白紙の勧進帳を読む」(西本五葉・作)
 
 ・・・今後も破損しないでいてほしいと願うばかりです。。。(汗)



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▲後屋根枡合(いずれも開生珉・作)です。
 正面「将軍頼朝、鶴ケ岡八幡宮の社頭にて千羽の鶴を放つ」
 平右「生田ノ森の風雅梶原源太景季、箙に梅一枝挿し戦ふ」
 平左「渡辺綱、平安羅生門に鬼腕斬落とす」




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▲このだんじりの最大のみせどころでもあります見送り「夏之陣」です。
 中央で槍を突くのは、眞田大助。
 その先には、落馬し天を仰ぐ笠原信濃守秀政が今にも動き出しそうです。



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▲采配を揮う大助の父・眞田幸村と、奥板には炎上する大坂城。
 


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▲大脇です。
 後より向テ左平「木村長門守重成若江堤に露と消ゆる(口伝)」(西本五葉・作)
 題材は不確定なので口伝だそうです。



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▲同じく大脇、後より向テ右平「国松君背負ふ後藤又兵衛、半田寺山にて槍を突く」(西本五葉・作)
 槍の先にある棺桶の中には家康が隠れていたそうな。 

 そしてその横には「千姫を救い出す坂崎出羽守」の姿も。
 


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▲後藤又兵衛と国松君を正面からどうしても拝見したい・・・そう思う方も多いかと。
 そんな想いを可能にしたセンス、これには参りました。。。
 写真の通り、大脇を妻側(だんじり後方)から見たときに武者の脇から見えるポイントがあります。



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▲天蓋に注目です。
 北斗の星宿(せいしゅく)が彫られていて、その北斗の剣先が幸村の進む方向(後方より向かって左)
 に向いています。
 この「剣星」は“破軍星”と呼ばれ、指し示す方向は不吉とされていました。
 つまり、その方向へ走るということは豊臣軍の敗北を意味していたとされます・・・。
 
 ここまで演出するとは、ほんまにすごいだんじりですね(驚)。。
 


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▲左右の脇障子です。
 後より向テ右「千姫を救出する坂崎出羽守を追う大坂方の兵」(西本五葉・作)
 後より向テ左「淀君と大蔵卿の局、野々村伊豫守の注進を聞く」(西本五葉・作)



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▲大脇上物見は、見送り虹梁へと続く題材。



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▲見送り下の腰組です。
 その中にひとつだけ未完成のコブシがあります。
 ゲンを担いだ工夫とアイデアがここにも表現されてました。


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◆筋海町地車紹介◆

●製作:昭和八年
・大工:「久吾」久納久吉・幸三郎(兄弟)
・彫師:西本五葉師、一元正(野村正)師、開正珉師、玉井行陽師(助)ほか

●主な彫刻
◎主屋根まわり
・車 板:正面「渦巻く波濤に青龍」
     後面「雲海」

・枡 合:正面「天之巌戸開き」(開生珉・作)
     平右「牛若丸、五条大橋に弁慶と渡り合ひ主従の契を結ぶ」(開生珉・作)
     平左「村上彦四郎義光、芋瀬にて怪力を顕し錦御旗奪還す」(開生珉・作)
     後面「陣幕に雑兵」(開生珉・作)

◎後屋根まわり
・車 板:「源三位頼政、紫宸殿の庭に鵺を退治す」(開生珉・作)
 
・枡 合:正面「将軍頼朝、鶴ケ岡八幡宮の社頭にて千羽の鶴を放つ」(開生珉・作)
     平右「生田ノ森の風雅梶原源太景季、箙に梅一枝挿し戦ふ」(開生珉・作)
     平左「渡辺綱、平安羅生門に鬼腕斬落とす」(開生珉・作)


◎腰まわり
・松 良:向テ右「頼光、家来と山伏の姿に身をやつし酒呑童子の鬼退治に挑む」(西本五葉・作)
     向テ左「弁慶、安宅関にて関守富樫成経の詰問に白紙の勧進帳を読む」(西本五葉・作)

・縁 葛:正面「栖賢寺にて剃髪し、坊主に化け難を逃れる秀吉」(玉井行陽・作?)
     平右「秀吉、四王天の追撃をかわし廣徳寺に難を逃れる」(玉井行陽・作?)
     平左「信長公を慕ふ百姓太郎助、秀吉に瓜を献上す」(玉井行陽・作?)

・大連子:正面「今川義元、尾張国・田楽桶狭間に露と消ゆ」(開生珉・作)
     平右「藤吉郎、初陣富士川の退き口を窺いて伊藤日向守を撃つ」(開生珉・作)
     平左「前田犬千代、尾州海津に初陣す」(開生珉・作)

・小連子:正面「赤穂義士吉良邸討入、内蔵助陣太鼓を打ち鳴らす」(開生珉・作)
     平右「大石内蔵助村上喜剣に足蹴にさるも敵を欺くに涙をのむ」(開生珉・作)
     平左「両国橋引揚げの四十七士、服部彦七の温情を受ける」(開生珉・作)

・土呂幕:正面「錦城(大坂城)の若櫻・木村長門守重成奮戦す」(西本五葉・作)
     平右「荒武者・眞柄十郎左衛門、姉川に本多平八郎忠勝と一騎打す」(一元正・作)
     平左「新納武蔵守、薩州川大河に加藤清正と戦ひ破れたるも引分ける」(一元正・作)


◎見送りまわり
・見送り:「大坂夏の陣」(西本五葉・作)
 
・脇障子:後より向テ右「千姫を救出する坂崎出羽守を追う大坂方の兵」(西本五葉・作)
     後より向テ左「淀君と大蔵卿の局、野々村伊豫守の注進を聞く」(西本五葉・作)

・大 脇:後より向テ右平「国松君背負ふ後藤又兵衛、半田寺山にて槍を突く」(西本五葉・作)
     後より向テ左平「木村長門守重成若江堤に露と消ゆる(口伝)」(西本五葉・作)


(参考:筋海町地車大修復記念誌より)




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筋海町保存会々長さん、組長のYさんはじめ青年団のみなさん、そしてFさんにMさん。

このたびは大変お世話になりました。




思う存分、見学させていただきまして、あらためてその魅力にハマりました(笑)。。

この場を借りまして、厚く御礼申し上げます。。。




こんなに素晴らしいだんじりを、しかも網ナシで・・・夢のようなひとときでした。

今年の本祭りで走る筋海町の勇姿は、私にとってまたひと味違う印象を受けることになりそうです。

どうか、末永くご安全に曳行されますことをお祈り申し上げます。







以上、350枚の写真からの渾身のレポでした(汗)