今から2年前の平成17年5月、厚生労働省が「日本脳炎ワクチン接種の積極的勧奨の差し控えについて 」という通達を出しました。重篤な副反応が日本脳炎ワクチンで見られたからです。ここで注意していただきたいのは厚生労働省は日本脳炎ワクチンを「中止」したのではなく「積極的勧奨の差し控え」をしたのです。勧奨接種なので、該当年齢ならば無料で接種ができます。しかし、一部の地域を除いて日本脳炎ワクチンが接種されることはほとんどなくなりました。

 もちろん日本脳炎ウイルスが駆逐されたわけではありません。新型日本脳炎ワクチンが早期に開発・供給されるはずでしたが、諸所の事情で遅れています。現行の日本脳炎ワクチンが産生されていますが、ごく少量です。

 平成17年以降も、残念ながら日本脳炎の感染症で犠牲になった人々がいます。日本脳炎に罹り後遺症を残したお子さんもいます。本来ならば、即刻新型あるいは現行の日本脳炎ワクチンを未接種の人に接種するべきなのですが、新型ワクチンの開発が送れ現行ワクチンの供給量もわずかな状態では、ままならない状況です。


 最近日本脳炎に関する報道が多くなり、不安に駆られる方もいらっしゃると思います。対応をお話しする前に、まず日本脳炎がどうやって人に感染するかお話します。


 日本脳炎ウイルスはコガタアカイエカという蚊によって媒介されます。この蚊は豚も吸血しますが、豚の体内で日本脳炎ウイルスは増殖します。この豚の血を吸ったコガタアカイエカが人に吸血することで、日本脳炎ウイルスが人の体に入ってきます。
 このウイルス量は少なく全例で感染が成立するわけではありません。また感染したとしても発症するのは1-0.1%であり、多くは発症せずに(不顕性感染)ことなきを得ます。

 養豚場が多く豚の日本脳炎抗体保有率が高い、西日本では積極的に接種する必要はあると思います。しかし、今の板橋区ではすべての人に日本脳炎ワクチンを接種する必要は、今のところありません。

 もちろん、より安全な新型日本脳炎ワクチンが安定供給されれば、接種する必要があります。また、板橋区でも、蚊帳・虫除け剤などを使って蚊に刺されない努力をすることはいうまでもありません。

 詳しくは、国立感染症研究所のコメントをご覧ください。
http://www.nih.go.jp/vir1/NVL/JEVMeeting.htm