令和4(2022)年8月28日(日)  

 

2日目の朝、昨夕仕掛けた罠を見に行った。

ワクワクとドキドキと安堵感。何もなかった。

わたしは何を期待しているのか! 人間は身勝手だ。

 

石川さんは近くの狩猟仲間にも依頼していたようで、その方の元に向かった。

曇り空から突然の土砂降り。

 

バケツをひっくり返したような大雨の中、キョンが罠にかかっていた。若い雄。

人間が近づくとキョンは声をあげた。悲痛な声。

仲間に「来るな」と知らせていると言う。

 

大いなる存在がわたしたちに何を伝えようとしていたのか、

土砂降りの雨の音だけがするなか、キョンは命を奪われた。

石川さんの一瞬躊躇した歪んだ表情、キョンのうつろな表情、わたしは忘れない。

その時、わたしはキョンと石川さんに「ありがとう」と心中で言いながら、ずっと般若心経を唱えていた。涙がこみ上げてきた。

 

宿泊所に戻ると、解体作業が待っていた。

その時、キョンのお腹のなか内臓の温かさ、この感覚を忘れない。

そして、キョンのお肉をいただいた。

普段あまりお肉を食べないが、ちゃんとキョンの命をいただいた。

わたしのなかの細胞一つひとつにスイッチが入ったように感じた。

あらゆるものの命をいただいて、今わたしはここに在る。

 

人間は身勝手だ。

農作物を荒らす「厄介者」「害獣」とされている野生動物がいっぱい。

それを石川さんたち漁師が県や市から委託されて狩猟する。

だけど、それらの命は冷凍庫に保管されて、そのまま破棄されている現実。

もともとは、人間の身勝手な行動からアンバランスな繁殖となり、山と人里との境界線が乱れた。

 

石川さんは元戦場写真家ジャーナリストとして、人間の生き死にを見てきた。

その葛藤を正直に語ってくれた。そのお人柄に惹かれた。

だから今、漁師として奪う命を少しでも役立てようと、この活動をされている。

 

わたしは、今までいくつの命の犠牲の上に生かされているのだろう。

母との長年の確執がちっぽけなものに思えてきた。

 

「命尽きるまで精一杯生きろ!」と頭を叩かれた。

 

石川さんのところで狩猟体験をさせてもらえて本当に良かった。

地球全体から俯瞰して、人間の身勝手さを反省し、これからの命を生きたいと思った。