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<3D>映像酔いを防ぐには? 脳が「不快」に…刺激軽減を
横浜市の女性会社員(38)は昨夏、家族向けアニメ映画「ボルト」の3D(三次元)版を見に行った。上映開始から約20分後、車酔いのように気分が悪くなった。「3D酔い」(映像酔い)と呼ばれる症状だった。主人公が逃げ回る場面など、画面が早く動くとめまいを感じた。3D用メガネを外して休んだが、再度見始めるとまた気分がすぐれない。結局、見たりやめたりの繰り返し。映画が終わってもしばらく回復しなかった。
一緒に見た夫(42)も不調を感じ、長女(4)だけが平気だったという。女性は「子どものころから車酔いしやすかったが、映画まで苦労するとは。3Dはもう遠慮したい」とこぼした。
3D映画「アバター」を配給する20世紀フォックス映画宣伝部によると、不調を訴える苦情や問い合わせは特にないという。だが、乗り物酔いに詳しい東京厚生年金病院(東京都新宿区)の石井正則・耳鼻咽喉(いんこう)科部長は「年初から3D酔いに関する問い合わせが来ている。3D映画で酔いは起こる」と話す。
例えば、主人公が滝つぼに落ちるシーンでは、目からの情報で脳は実際に落ちた感じを受ける。ところが、平衡感覚をつかさどる内耳には刺激がないため、ズレが生じる。これを脳が「不快」と判断すると、むかつきや冷や汗、頭痛などの症状が表れる。「手ブレのひどいホームビデオを見た時に、気分が悪くなるのと同じ理屈」という。
酔いを防ぐには、上映中は頭をできる限り動かさず、背景や脇役にあまり目をやらず中心人物を見る方が、脳への刺激が軽減される。空腹や寝不足は避ける。酔い止め薬も効くという。
映画鑑賞に伴う酔いは、劇場が大スクリーン化した1960年代にも発生し「シネラマ酔い」と呼ばれた。石井医師は「脳には感覚のズレを調整する機能がある。酔いを心配して3Dを避けるより、体を慣れさせた方が良い」と話す。
大手シネコン各社は3D酔いに特別な対策は用意していないというが、「3Dに限らず上映途中で体調が悪くなった場合は、劇場係員に相談してみて」(TOHOシネマズ)と助言する。劇場内では、中央の前寄りの座席は3Dの効果が比較的強いとされ、心配な人は避けた方がいい。
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業界では、安全確保のためのガイドライン策定が進んでいる。電機メーカーの団体が99年、3Dのガイドライン試案をまとめたのをはじめ、電機メーカーや放送局でつくる「3Dコンソーシアム(3DC)」が今年4月、最新の改訂版を公表。視聴者に周知すべき点として、「画像と両目を水平に保つこと」など7項目をまとめた。
コンテンツ制作者向けにも、映像の飛び出しや奥行きの望ましい範囲を盛り込んだ。過度な飛び出しを多用したり長時間見せるのは避ける▽大きなディスプレーでは飛び出し効果が大きくなることを考慮する--など、視聴者が不快にならない映像や機器を求めている。
3Dテレビでは、メーカーが説明書で注意を促している。パナソニックは4月発売の3Dテレビで「個人差によりまれに体調不良が引き起こされる」などの注意書きを付した。ソニーも、6月発売予定の商品のパンフで「視聴中に体調の変化を感じたらすぐに中止を」「体調がすぐれない時は視聴を控えて」などと記した。
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子供は、視聴しても問題ないのだろうか。ガイドラインは子供の視覚発達の年齢表を示して、「影響を考慮し、大人が判断するのが望ましい」とする。「3Dコンソーシアム」の千葉滋・安全ガイドライン部会長は「立体を見る機能は生後1~2年で急速に発達し、5~6歳で大人並みになる。それまで、人工的な立体映像を頻繁に見ることは避けた方がいいだろう」と解説する。イタリアでは、6歳未満の視聴自粛を呼び掛けているという。
3D映像は臨場感が非常に強く、今までできなかった人工的な経験をできるメディア。教育ソフトの開発も進んでおり、米国では3D機器を全小学校に置こうという動きもある。千葉さんは「今でもゲームに没頭する人は余計にのめり込む恐れもあり、ソフト制作者の責任は大きい。子供の利用には大人の管理が大切で、利用内容や時間だけでなく、見ている間の様子にも注意を払ってほしい」と呼びかける。携帯電話やパソコン、ゲーム機など3Dの関連商品は今後も数多く発売が予定され、多面的な研究の継続が求められる。【田村佳子】