建設業者に家を建築してもらったが、耐震に問題があったとか、家が傾いているとか・・・
請負の瑕疵担保責任の問題である。
これは、不法行為もかねることがあるので要注意だ・・・
耐震に問題があり、心理的にも安心して住むことが困難な場合、慰謝料請求も可能になる。
マンションを買うのではなく、業者にマンションを建築してもらう場合です。
今回は請負だけで考えよう!!
請負(うけおい)とは、当事者の一方(請負人)が相手方に対し仕事の完成を約し、他方(注文者)がこの仕事の完成に対する報酬を支払うことを約することを内容とする契約
第632条(請負)
当事者の一方がある仕事を完成することを約し、相手方がその仕事の結果に対してその報酬を支払うことを約することによって、その効力を生ずる。
第633条(報酬の支払時期)
報酬は、仕事の目的物の引渡しと同時に、支払わなければならない。ただし、物の引渡しを要しないときは、第624条 第1項の規定を準用する。
請負は、双務・有償・諾成契約 です
仕事の内容は有形的(建物の建設・電気工事など)なものに限らず、
債務者(請負人)の債務の内容・目的が「仕事の完成」である点に注意
これが労働契約とは異なる点である。
例・・・建築(新築・リフォーム)工事・エレベータの保守工事などでのトラブル や
コンサートに本人が登場できなかった・しなかったというトラブルも
請負は仕事の完成を内容とするものであるから請負人は仕事完成義務を負う
ただし、請負の場合には完成すべき時期までに仕事が完成しさえすれば、自己が労務に服さなくとも債務は履行されたことになるので、請負人は特約のない限り自由に履行補助者や下請負人を用いて仕事の完成にあたらせることができる.
下請けに仕事を振ることも可能であるが、コンサートや講演会のように個性が強く本人が出てこないと意味がないものは、履行補助者や下請けに出すといことは認められない
着手時期や完成時期は契約内容による。
請負人が仕事に着手しない場合や契約で定められた時期に完成しない場合には、541条により注文者は契約を解除できる。
請負人に責めを帰すべき事由によって契約で定められた時期までの完成が不能となることが明らかな場合には、完成時期が到来しなくとも543条により直ちに解除しうる(大判大15・11・25)
請負契約葉に任意規定であるため特約を付すことも出来る
損害賠償を負わない特約 や 所有権が注文者とする特約 ・完成時期が遅れたときに代金減額や不完全な物権に対しての代替物の特約など可能
建物工事で出来形部分の所有権が注文者に帰属するとする特約の場合 最判平成5年10月19日
建物建築工事の注文者と元請負人との間に、請負契約が中途で解除された際の出来形部分の所有権は注文者に帰属する旨の約定がある場合には、元請負人から一括して当該工事を請け負った下請負人が自ら材料を提供して出来形部分を築造したとしても、注文者と下請負人との間に格別の合意があるなど特段の事情のない限り、右契約が中途で解除された際の出来形部分の所有権は注文者に帰属する。
注文者の責に帰すべき事由により仕事の完成が不能となつた場合における請負人の報酬請求権と利得償還義務 最判昭和52年02月22日
(請負人は地下室で冷暖房装置のボイラーの設置工事の請負ったが、地下室の水漏れがあり、注文者に地下室の防水工事をするよう頼んだが、防水工事をしてくれなかったため、冷暖房装置を設置できなかった件)
請負契約において仕事が完成しない間に注文者の責に帰すべき事由によりその完成が不能となつた場合には、請負人は、自己の残債務を免れるが、民法五三六条二項により、注文者に請負代金全額を請求することができ、ただ、自己の債務を免れたことにより得た利益を注文者に償還すべきである。
請負契約が請負人の責に帰すべき事由により中途で終了した場合に注文者が残工事に要した費用の賠償を求めうる範囲 最判 昭和60年05月17日
請負契約が請負人の責に帰すべき事由により中途で終了した場合において、残工事の施工に要した費用として、注文者が請負人に賠償を請求することができるのは、右費用のうち、未施工部分に相当する請負代金額を超える部分に限られる。
それでは
請負人の担保責任 である。
- 第634条(請負人の担保責任 )
民法第533条 (同時履行の抗弁)→注文者が損害賠償を請求する場合において、注文者の損害賠償請求と請負人の報酬請求権とが同時履行の関係にあること
請負契約の目的物に瑕疵がある場合には、注文者は、瑕疵の程度や各契約当事者の交渉態度等にかんがみ信義則に反すると認められるときを除き、請負人から瑕疵の修補に代わる損害の賠償を受けるまでは、報酬全額の支払を拒むことができ、これについて履行遅滞の責任も負わない。最判H9.2.14
建築部材の鉄骨が本来より細く、耐震構造に問題があったケース(最判H14.9.24)
建築請負の仕事の目的物である建物に重大な瑕疵があるためにこれを建て替えざるを得ない場合には,注文者は,請負人に対し,建物の建て替えに要する費用相当額の損害賠償を請求することができる。
「瑕疵が重要でなく修補に過分の費用を要するとき」とは、「瑕疵がたいして重要でないのに、必要以上に費用がかかる場合」
例:太い鉄骨を使うところ、それより、細い鉄骨を使っていたケース(実際にあったケース)で、耐震構造には影響が少なかった場合
→修補請求できない
なら 損害賠償請求となる可能性がある
請負契約における約定に反する太さの鉄骨が使用された建物建築工事に瑕疵があるとされた事例
最判平成15年10月10日
建物建築工事の請負契約において,耐震性の面でより安全性の高い建物にするため,主柱について特に太い鉄骨を使用することが約定され,これが契約の重要な内容になっていたにもかかわらず,建物請負業者が,注文主に無断で,上記約定に反し,主柱工事につき約定の太さの鉄骨を使用しなかったという事情の下では,使用された鉄骨が,構造計算上,居住用建物としての安全性に問題のないものであったとしても,当該主柱の工事には,瑕疵がある。
材料が設計図とは異なるので「瑕疵」にあたるが、請負契約の内容に反していたり、建物として通常期待される性質等を備えていないことで、瑕疵にあたるかどうかは、施工においてだけでなく、設計や材料なども含めて総合的に判断される。
瑕疵が重要な場合 → 費用がどうでれ、請負人が負担
・費用をかけて直せるなら直す
・費用がかかりすぎる場合や直せないときは損害を賠償する
瑕疵が重要でない場合
・相当な費用で直せるなら直す
・過分な費用(多額の費用)がかかる場合は、請負人は直さなくても良い場合があるが、損害賠償で対応ということもありうる。
- 第635条
(請負人の担保責任) - 仕事の目的物に瑕疵があり、そのために契約をした目的を達することができないときは、注文者は、契約の解除をすることができる。ただし、建物その他の土地の工作物については、この限りでない。
これは、売買契約で新築の建物を買ったときに、欠陥があって、通常は損害賠償請求できるが、これでは買った目的(家が傾いて住めないなどで)が果たせない場合、その売買契約は解除できる。
ソフトウェアの保守サービス(請負)も、あまりにもバグがひどく、ソフトとしては使えないような時は、契約解除もできる
しかし、
新築工事・リフォームのような建物や土地に絡むような工作物請負工事では、目的が達成できなくても、契約は解除できないことをさしている
その代わり、注文者には 損害賠償請求権 ・ 瑕疵の修補請求権がある
- 第636条
- 前二条の規定は、仕事の目的物の瑕疵が注文者の供した材料の性質又は注文者の与えた指図によって生じたときは、適用しない。ただし、請負人がその材料又は指図が不適当であることを知りながら告げなかったときは、この限りでない。
工事をしてくれと頼んだ側(注文者)が請負人に「こうしてほしい」、という指示や「この品物をつかってほしい」と指定してきた場合、基本的には請負人には責任はない
ゆえに、
注文者の指示や指定があって作業したが、それによって欠陥が発生した場合は、注文者の責任となる。
この場合には、契約の解除
ただ、そのときに、請負人が注文者に「そのような使い方はできない」とか「その使い方は不適切だ」と「ここにこんな部品を取り付けると事故につながるからできません」を言わず、それも知りながら、注文者に言わずに放置すると、請負人にも責任がある。
- 第637条
(請負人 の担保責任の存続期間)
- 前三条の規定による瑕疵の修補又は損害賠償の請求及び契約の解除は、仕事の目的物を引き渡した時から一年以内にしなければならない。
- 仕事の目的物の引渡しを要しない場合には、前項の期間は、仕事が終了した時から起算する。
仕事の目的物の引渡しを要しない場合・・・エレベータやPC本体やソフトウェアの保守サービス など
仕事さえ終われば、目的物を引き渡しを要しないので、仕事終了時を起算点とする。
- 建物その他の土地の工作物の請負人は、その工作物又は地盤の瑕疵について、引渡しの後五年間その担保の責任を負う。ただし、この期間は、石造、土造、れんが造、コンクリート造、金属造その他これらに類する構造の工作物については、十年とする。
- 工作物が前項の瑕疵によって滅失し、又は損傷したときは、注文者は、その滅失又は損傷の時から一年以内に、第634条 の規定による権利を行使しなければならない。
担保責任の存続期間
原則 引渡しの日から1年以内
例外:建物その他の土地の工作物(特に木造の建物) → 引渡しの日から5年
石造等堅固な工作物(レンガ造・鉄骨造・鉄筋コンクリート造などの建物)→ 引渡しの日から10年以内
ここは
売買での瑕疵担保責任とは異なる
売買の瑕疵担保責任の期間では、瑕疵を知ったときから一年以内 かつ 引渡しの日から10年以内である
請負契約は任意規定なので、債権消滅時効10年というしばりを、特約で延長できることが規定されている
品質確保法が20年まで延長可能としている
- 第640条
(担保責任を負わない旨の特約)
- 請負人は、第634条 又は第635条 の規定による担保の責任を負わない旨の特約をしたときであっても、知りながら告げなかった事実については、その責任を免れることができない。
請負人でも、「一切、瑕疵担保責任を負いませんという契約は特約で認められる。
ただし、請負人が欠陥があることを知りながら、欠陥を放置して、契約時に「欠陥が見つかっても、責任を追いません」とか、
請負人が部品を普段と違う付け方では事故が起きるかもしれないからといっておきつつ、注文者に誤った付け方をしてほしいと懇願された場合は、万一事故が起きても、注文者責任となるが、請負人が「事故となる可能性があることをしりながら、ハイハイと部品注文者の指示通りつけると、特約を付けても請負人に責任が降りかかることをさしている。
第641条
(注文者による契約の解除)
- 請負 人が仕事を完成しない間は、注文者は、いつでも損害を賠償して契約の解除をすることができる。
建物建築中に注文者が、この建物は気に入らないから、やめた などと気が変わることがある。
そんなことがあると、請負人に損害が及ぶので
この場合、契約を解除できるが、注文者が損害賠償(建築資材や人件費などの損害)を請負人にしなければならない
また、仕事が完成すると、注文者はもはや契約を解除できず、請負人に報酬を支払う必要がある。
これで問題となるのが
労働と請負
労働は・・・時間が決まっていることが多く、仕事の完成は関係ない
請負は・・時間の指定は決まっていないことが多く、仕事さえ完成すればよく、時間は1分で1時間でもよく、下手をすれば半年とか1年かかるものもある。