ちょっと区切りが変だったので前回掲載した分を一部こっちに移した。


----------------------------------------------------------


・アプローチについて
もっとも、全ての人が完全なアーキテクチャを把握する必要はありません。業務上必要になるメンタルモデルは、担当する分野によって異なるからです。
例えば、ネットワーク構成を設計する際に重要なのは、各機器の役割であり、その厳密な動作ではありません。この場合はアナロジーを用いた方が良いでしょう。
(ただし、技術的に実現可能かどうか検討が必要な場合もあります。)
逆に、システムで予期せぬ動作やトラブルが発生したといった場合は、アーキテクチャを意識した対応が肝要です。これは、個人の思い違い(メンタルモデルの誤差)によって間違った対応をしてしまったり、更なる不幸を招いてしまったりする恐れがあるからです。

また、新しい技術と向かい合う場合は、自身のメンタルモデルを意識することにより、その位置づけを明確に出来ます。同じ技術でも、担当する分野によって捉え方が異なるのが自然なことであり、むしろそうあるべきなのです。極端な話をすれば、インフラ担当者にとって新しい開発言語の登場などどうでもいいのです。
(一概にそうとも言い切れませんが、あくまで極端な話なので。)


・バイアスについて
バイアスとは、偏見や先入観を指す言葉です。
バイアスは技術の正確な理解を妨げます。自身の思い込みで物事を捉えたり、古い情報にいつまでも影響されたりしてしまうのは、このバイアスの働きによるところが大きいのです。
もっとも、認知におけるバイアスの本来の役割は、脳にかかる負担を軽減することにあります。これは、ある情報の内容の一部を無視したり、特定の記憶に優先して連動させたりすることで実現しています。
また、確証バイアスという言葉もあります。これは、自己の先入観に当てはまる情報だけに着目し、先入観を補強しようとする心理です。持説に確証が乏しいほどこの働きは強くなります。(もっともこれは社会心理学に分類されますが)
これらのバイアスは、完全に回避することこそできませんが、その影響を軽減することはできます。それには、客観的に物事を捉えること、自身のバイアスに対する意識を持つこと、そして論理的に物事を捉えることが必要です。

では、論理的に物事を捉えるとはどういうことなのか、軽く触れて見ましょう。


----------------------------------------------------------

つづく