日本におけるITガバナンス
の概念はどのように発展したのでしょうか。日本では、前述のとおり、1999年に通商産業省(現経済産業省)から『企業のITガバナンス向上に向けて』というタイトルのレポートが発表され、自社の状況を自己診断するための『ITガバナンス
スコアカード』と呼ばれるツールが提供されました。
日本で「ITガバナンス
」の言葉が注目された大きなきっかけとなったのは、記憶に新しい2002年4月に富士銀行、第一勧業銀行、日本興業銀行が統合し、みずほ銀行が誕生した際に起きたシステム障害だと言われています。(※1)
この事件により、旧来の管理体制や管理システムが、情報システムの構築と運用に不具合が生じ、ひいては企業活動の妨げになるということが明らかになりました。またこの事件をきっかけとして、世間のソフトウェア品質保証
への関心が高まり、それまでのソフトウェア開発
プロセスが見直されたと言っても過言ではないでしょう。
企業の統合や合併、提携等が頻繁に行われるようになった今日では、これまで以上に綿密かつ適切なシステム管理をおこなうことが要求されます。企業活動全体におけるIT利用について、企画の段階から、構築、利用、運用までの一連の作業を管理・統括し、継続的かつ効率的なプロセスを策定・実行し、適正なパフォーマンス管理
の下で実行していく必要があります。
※1 2002年4月1日、富士銀行、第一勧業銀行、日本興業銀行が統合し、預金残高85兆円の巨大バンク、みずほ銀行が誕生しました。ところが、業務開始直後のATMのシステム障害から始まり、4月12日時点で40万件の引き落としが未処理となりました。統合照会センターへの問い合わせも日に2,000件以上。一連のトラブルは、富士銀行は日本IBM、第一勧業銀行は富士通、日本興業銀行は日立製作所にそれぞれプログラムを開発させ、独自のシステムを構築していたために、統合前の3行のシステムを繋ぐリレーコンピュータの不具合が原因でした。