『Tシャツが乾くまで』第6話。

一番怖かったのは、充が帰ってきたことではなく、何事もなかったように「普通」に戻ろうとすることでした。

台所でコーヒーを淹れる。

いつものように話す。

まるで、1年間の空白なんてなかったかのように。

待ち続けた咲子にとって、その「普通」は、むしろ残酷だったと思います。

今回は、4人それぞれの視点から第6話を考えてみます。


【充の視点】「嫌いになる前に離れる」の意味

充がバスを降りた理由。

その答えとして出てきたのが、

「逃げるなら今だと思った」

という言葉でした。

以前、充は、

「人を嫌いにならないコツは、嫌いになる前に離れること」

と話していました。

もしかすると充にとって、失踪は突然の逃亡ではなく、関係が壊れる前に自分から終わらせるための行動だったのかもしれません。

でも、それは残された側からすれば、とても身勝手です。

「嫌いにならないため」という理由で、相手に何も説明せず消える。

充にとっては自分を守る方法でも、咲子にとっては突然すべてを奪われる行為でした。


【咲子の視点】「悪いところがない」が一番苦しい

咲子が充に、

「私の何が嫌だった?」

と尋ねる場面。

ここが本当に苦しかったです。

充は咲子を責めません。

でも、

「さっちゃんが悪いわけじゃない」

と言う。

原因が自分にあるなら、直すことができます。

でも「悪いところはない」と言われたら、咲子には何もできません。

愛されなくなった理由を探しても、自分では直せない。

それは、咲子にとって一番苦しい答えだったのではないでしょうか。


【フィルターの視点】壊れていたのは「掃除」では直せないもの

第1話から登場している「フィルター」。

今回、ロボット掃除機のフィルターを掃除しても、結局直らないという場面がありました。

これ、すごくこのドラマらしいと思いました。

フィルターが汚れているなら、掃除すればいい。

でも、原因がもっと別のところにあったら?

人間関係も同じなのかもしれません。

咲子はずっと、

「何かを直せば、元に戻れる」

と思っていたのではないでしょうか。

でも充が抱えていた問題は、咲子が努力して直せるものではなかった。

「直せないものもある」

という現実を、フィルターが象徴しているように感じました。


【樹生の視点】「不倫だった」と思いたかったのかもしれない

充から、

「不倫じゃない証拠は?」

と突きつけられた樹生。

この言葉は、樹生自身にも返ってきます。

あずさと充が本当に不倫だったなら、樹生は「裏切られた夫」でいられます。

でも、もし二人が本当にただ話をしていただけだったら?

それは、

「あずさは、自分ではなく充と話すことを選んでいた」

という、もっと苦しい現実になります。

「不倫」という言葉があれば、怒る理由がある。

でも、理由すら分からない関係だったとしたら。

樹生にとっては、そのほうが受け入れ難いのかもしれません。


【充とあずさの視点】第3金曜日は「不倫」だけではない?

私はここが一番気になります。

充とあずさは、本当に恋愛関係だったのでしょうか。

コインランドリーで会い、二人だけで話をしていた。

それだけを見れば、不倫を疑うのは当然です。

でも充は、

「おしゃべりするだけの仲」

だと話しました。

もちろん、充の言葉をそのまま信じることもできません。

ただ、二人には夫婦には話せなかった何かがあった可能性もあります。

だからこそ「第3金曜日」が、単なる不倫の日ではなく、二人だけが逃げ込める場所だったようにも見えます。


【あずさの視点】薄緑の手帳が怖い

そして第6話の最後。

宮内が樹生に渡した、あずさの薄緑の手帳。

ここから、また物語が大きく動きそうです。

あずさは何を書いていたのか。

充とのことなのか。

樹生には言えなかったことなのか。

それとも、まったく別の秘密なのか。

今まで私たちが見てきた「あずさ」は、樹生から見たあずさでした。

でも、この手帳に書かれているのは、あずさ自身の言葉かもしれません。

もしそうなら、ここから初めて「あずさの視点」が見えてくることになります。



第6話を見て思ったこと

このドラマを見ていると、

「一番近い人だから、一番分かっている」

という考えが、少しずつ崩されていきます。

夫婦だから分かる。

一緒に暮らしているから分かる。

毎日顔を合わせているから分かる。

でも、本当はそうじゃないのかもしれません。