「イニョン王妃の男」の胸の奥以外のお話を
久々に書いてみました。
半ば命を諦めかけたその時
彼は再びこの地に戻る事ができた
それは運命のいたずらなのか…
二人の強い想いが起こした奇跡なのか…
いずれにしてもそれはただの通過点
結末はまだ誰も知らない
これからずっと続く
長い長い愛の物語
いつのまにか朝陽の昇る時間が早くなった。
陽射しが強くなり、そろそろ夏も近いのだと知らせている。
季節を肌で感じるのはいつ以来だろうか…
大きく開けた窓が薄いカーテンを揺らしながら夜に冷やされた気持ちの良い風を運んでくる。
その風に額にかかる髪の毛が弄ばれて、
夜通し夢中になって熱を伝えた体が冷まされてゆく
腕の中で規則正しい寝息を立てて気持ち良さそうに寝ていた女人の顔に
窓からの朝陽があたり、まだ眠い彼女は眩しそうに閉じたままの瞼をキュッと強く結ぶ
ブンドはくすりと微笑んで手のひらを彼女の顔のそばにあげて日差しを遮る。
しばらくして寝返りを打ったその人は、
目を閉じたまま探る様に手を伸ばしブンドの首筋に両腕を絡みつかせ、
ブンドの厚い胸板にピタリと体を押しつける様にしがみついてきた。
ブンドはそれに答える様に彼女の背中に腕をまわし、
より体が密着する様にとまわした腕に力を込め、自分に向かって彼女の背中を押した。
白く柔らかい絹のように滑らかな彼女の胸が押しつぶされて
自分の体に吸いつくように張り付くのがこの上なく心地よかった。
ぅん…
小さな声をあげて気持ち良さそうに顎を上に突き出す彼女の少し開いた唇が
無防備に自分に向けられて、その唇を見つめてまた新たな欲望が湧き上がる。
渇きを知らない泉の様に溢れ出る感情に溺れそうになって我を忘れてしまいそうになる。
生きて再びこの女人を腕の中に抱ける日が来るとは思いもしなかっただけに
胸の内は大きな喜びで満たされていく。
一晩中自分の名前を呼んで喜びに震えていたその唇に、
もう一度触れて見たい誘惑が抑えきれなくて
壊れ物を扱うように慎重に、そっと唇を合わせた。
とろける様な柔らかさと彼女の放つ甘い香が鼻孔を刺して、
あと少し、もう少しと、いつしか夢中になって彼女の唇を貪った。
昨日までの自分とは思えないほどの生きる歓びに心が震える様だった。
彼女の事を思えば思うほど己の胸が高鳴ってゆく
胸が高なれば高鳴るほど生きる喜びが湧き上がり
戻る事が出来て良かったと
再びこの者に会い、胸に描き抱く事が出来て良かったと
体中の血が湧き上がる様な感情が押し寄せてきて涙が溢れそうになる。
眠くて目を開ける事のできない彼女が瞳を閉じたまま
ブンドの動きに応じるように体をあずけ、
小さな吐息を絶え間なく放ち
彼女が体をしなやかにくねるたびにブンドの体が熱くなり
次第に高みに登り詰めた彼は再びその熱を彼女の中に解き放つ
弾む息を押さえて彼女の顔を覗き込むと
全身から力の抜けた彼女の閉じた瞳からは涙があふれるように流れていて
無理を強いたのかと胸が締め付けられて
声をかけると彼女は目を閉じたままこうつぶやいた
幸せすぎて目を開けるのが怖い
また夢だったらどうしよう…
また…と言う言葉に痛む胸を押さえ
ブンドは流れる涙を指で丁寧に拭うと
彼女の瞼に唇をそっと押し付けて
再び彼女を抱きしめる
まるで、これは夢ではないと諭すかのように
優しく力を込めて
彼女は答えるようにブンドの背中に腕をまわし
きつくきつく力を込めた
再び涙があふれだしてその涙はしばらく止まらなかった。
二人はただ抱きしめ合いお互いのそのぬくもりを伝えあった
終