いすけ屋

 甘利大臣はよく頑張ったと思う。米側の通商代表部(USTR)のフロマン代表は、これまでの日本と同じように扱えると、間違った判断をしたようだ。オバマが出発するまでのタイムリミットを突き付ければ、必ず日本側は折れてくると思っていたにちがいない。日本側は牛肉、豚肉で現行の38.5%から10%前後まで段階的に引き下げるという譲歩をしているが、アメリカ側は何も譲歩しない。日本では、外国車の輸入に関税はかけられていないが、アメリカでは、普通乗用車に対して2.5%、SUVやバンなどを含む“ライトトラック”に対しては25%の関税がかけられている。日本は、この関税の撤廃に向けて、タイムテーブルを示すようアメリカに求めている。

 アメリカの要求はさらに、乗用車の安全基準を米国基準のままでと無理を言ってくる。日本では、わざわざ左ハンドルにして、排ガス基準など米国のものより、厳しい数値のものを2.5%の関税を払って輸出している。逆に日本が外車を輸入する場合は、左ハンドルのままで受け入れている。もっとも、バカでかくガソリン大食いの左ハンドルアメ車をステータスとする日本人もいるから、外車ディーラーは大儲けするんだろうが・・・。それでも、安全基準まで譲ったら、日本の技術力を武器にしないことになる。だから絶対譲れない項目なのだ。

 オバマは日本の要求を少しでも受け入れて、譲歩した形で持ち帰れば、財界とつるんだ議会がOKするはずはない。だから麻生さんは、ほんとのことを言ったまで。もう彼には、TPPをまとめる力量はない。悔し紛れに、韓国で告げ口ババアの言い分を丸呑みして、「甚だしい人権侵害だ。戦争中の出来事とはいえ、衝撃を受けた」とか言ったが、これで余計に日本人の感情を悪くした。韓国に肩入れして、アメリカはなんかメリットはあるのか?まあ、来年には在韓米軍も引き上げるわけだから、どうでもいいけどね。

 まだある。米国産危険食品警告キャンペーンを週刊文春が行っている。ホルモン剤が過剰投与された米国産牛肉や遺伝子組み換え作物の危険性は前回にもお知らせしたが、今は国産牛乳にも、汚染が拡大しているという。アフラトキシンは熱帯性のカビが産生する発がん性物質で、輸入穀物によく発生する。調査は「市販国産牛乳のアフラトキシンM1汚染実態調査」として01年12月から02年2月にかけて行われ、市販国産牛乳208検体のうち、1検体を除くすべてから発がん性物質アフラナキシンM1が検出されたという。しかもアフラトキシンM1の国際基準値は0.5μg/㎏だが、日本では10μg/㎏という国際基準より20倍も甘い値が設定されている。亜米利加の為に基準を緩めているのだ。

 また、トウモロコシに撒く防カビ剤のように、収穫後の作物が腐らないように散布する農薬のことを「ポストハーベスト農薬」という。これが非常に危険なのだ。ポストハーベスト農薬の残留基準値を調べると、ここでも米国への配慮が感じられる。たとえば冷凍食品農薬混入事件で記憶に新しい猛毒マラチオンは、国産米の基準値は0.1ppmだが、輸入小麦は80倍の8ppm。有機リン系殺虫剤のクロルピリホスメテルはコメの0.1ppmに対し、小麦は百倍の10ppmと、米国産小麦に有利な基準値が設定されている。これらは関税では見えてこない日本政府の米国への「阿り」である。基準を緩めるということは、日米交渉では常套手段のようである。国民だけがバカにされているのだ。