いすけ屋


 田母神俊雄元航空幕僚長は「日本は侵略国家なのか」と題して、国家国民のためという信念に従って書いた論文が、「政府見解とは異なる意見である」という理由で更迭された。その政府見解というのが「村山談話」である。


 村山談話とは<・・・わが国は、遠くない過去の一時期、国策を誤り、戦争への道を歩んで国民を存亡の危機に陥れ、植民地支配と侵略によって、多くの国々、とりわけアジア諸国の人々に対して多大の損害と苦痛を与えました。私は、未来に誤ち無からしめんとするが故に、疑うべくもないこの歴史の事実を謙虚に受け止め、ここにあらためて痛切な反省の意を表し、心からのお詫びの気持ちを表明いたします。云々・・・>といったものである。


 「過去の一時期、国策を誤り」とあるが、それは「上海事変」の事をいうのか、それとも「真珠湾攻撃」の事を言うのか。どちらも正当な理由があり、その時点では最善の手段だった筈だ。現時点で現在の視点で判断しても、それは「たら、れば」の話になるだけだ。「戦争への道を歩んで国民を存亡の危機に陥れ」もおかしい。戦争せずとも日本は存亡の危機に陥っていたというのが正確である。また、ルーズベルトとチャーチルの洋上会談で約束した以上、日本はどうあがこうと戦争に引き込まれていたのは間違いない。


 さらに「植民地支配と侵略」もGHQによる洗脳工作の一環である。台湾は確かに植民地支配したが、台湾からはむしろ感謝されている。朝鮮は併合であり決して植民地支配ではない。また、西洋列強が行った植民地支配は強奪に等しかったが、日本は台湾にも朝鮮にも、持ち出しで近代化にずいぶん貢献している。世界に誇ってよい歴史である。このことはGHQの方針により教育では教えてくれなった。


 田母神論文に対しては、歴史学者の泰郁彦教授が批判を加え、まさに御用学者の面目躍如と言ったところだ。これに反批判をしているのが若狭和朋氏の「昭和の大戦と東京裁判の時代」(WAC)である。田母神論文の正しさを説明するには、これを読んでいただくのが一番手っ取り早い。そこで以下よりシリーズで一部紹介する。



(引用始まり)


 まえがき


 昨年の九月、『日露戦争と世界史に登場した日本』を上梓した。本書はその続編である。とは言いながら、それぞれに独立した構成とした。そして、両書のカバー右肩には、「日本人に知られては困る歴史」という共通キャッチコピーを記した。


 「知られては困る」嘘の歴史が日本人の頭を支配している。誰が嘘の歴史を編んだのか。言うまでもないが、GHQである。


 七年八ヵ月に及ぶ彼らの支配の眼目は、敗戦の惨禍は軍国日本の指導者の責任であり、つまりは日本人の自業自得であるという意識の刷り込みにあった。刷り込まれた意識の標本が広島のあの碑文である。


 「安らかに……過ちは繰り返しませんから」


 GHQは日本人にロボトミー手術を施したのである。この手術の成功例のひとつが、異常な少子化である。一人の女性が生涯に出産する子供の数(特殊出生率)が、2.01を超えていなければ人口は減少する。現在の日本は1.04を割っており、東京では0.96という。結果として三十年後の日本人は一億人を割り込み、凄まじい少子高齢社会の日本が出現することになる。


 家族制度の否定と性道徳への嘲弄が、「戦後思想」の柱として定礎された。二〇八〇年の日本人は七千万人と減少し、百年後には三千万人が辛うじて生存しているかと推計されている。日本はいままさに、崖っ淵に立っているのだ。


 キンゼー報告に端を発する産児制限の思想的基盤は、明らかに共産主義に根を持っている。マルクーゼやアドルノらのフランクフルト流の共産主義思想が、敗戦日本を支配した時期が厳存したのである。昭和二十一年~二十五年生まれくらいを団塊世代というが、その世代は途中で切られた世代なのだ。以降の出生数の減少は、堕胎が合法化され、のみならず推奨された結果である。


 レーニンたちボルシェビキに不満な共産主義者たちは、フランクフルト大学を中心に拠った。彼ら「先進国型マルキスト」が主導したのが、ワイマールドイツである。ワイマールドイツ、がナチに打倒されると、フランクフルト・マルキストたちはアメリカに逃れた。ルーズベルト大統領は彼らの強力な庇護者であった。ルーズベルトは社会主義者であると聞いて慌てて否定する人は、善意ならば別だが、承知でなら共産主義の仲間に違いないのだ。いまのアメリカでは、ルーズベルトについて語ることはタブーに近い。


 日本人は、GHQによる七年八ヵ月に及ぶ長い追撃戦の期間の後遺症を意外と気づいていない。東京裁判というのは、追撃戦の一部に過ぎない。公職追放によって、七十万人の日本人の指導者は教育界、言論界、政界、財界から追われた。代わってわが世の春を謳歌したのが、アメリカ軍公認の日本人たちである。波部昇一先生は、彼らのことを「戦後利得者」と呼ばれる。言いえて妙なりである。


 本書では彼らのことを詳しく占いておいた。現在でも彼らは各界の圭要な地位を占めている。民主党のイデオロギーは戦後利得者たちの編み出したものである。戦後レジュームからの脱却を唱える安倍政権への敵意は凄まじい。


 日本はいま崖っ淵に立っている。日本人は本気にならねばならない。


 平成二十五年一月

                                    若狭和朋

(続く)