日本企業中国撤退アリ地獄
(日刊ゲンダイ09月24日)経済ジャーナリスト 岩崎博充


パナソニックはたった100ドルで合弁会社を投げ捨てた  


 「内密に、中国からエ場を撤退できないかと本社から打診されたのが、反日デモ発生から約半年後のことでした。当初あて込んでいた中国国内での需要の伸び悩みと人件費の高騰が原因ですが、本社はベトナムとかミヤンマーにエ場を移転させたがっています。結論はまだ出ていません。というのも、仮に撤退の可能性がバレただけでも、ストライキになる可能性があり、最悪、我々経営陣が軟禁される恐れもあります。まさに戦々恐々の状態です」


 こう話すのは、中国の地方都市に進出している食品加工会社の日本人幹部だ。


 今や、日本から中国に進出する企業は、ざっと2万3000社(11年末現在)。香港、マカオを含めれば14万人の在留邦人がいる。


 中国に進出中の日本企業にとって忘れられないのが、09年に起きたパナソニックのブラウン管工場で起きたトラブルだ。この工場は、現地の中国企業と共同出資で合弁会社として設立されたが、中国人従業員がリストラに反発した。


 中国では人員削減の際、従業員に退職金に相当する「経済補償金」を支払うが、その額をめぐってトラブルとなり、結局同社は合弁会社にわずか1OO㌦で譲渡して撤退した。いわゆる「持ち分譲渡」で解決したわけだが、大企業でさえも実質的にすべてを投げ捨てなければ撤退できないと、話題になった。



「出資金すべてを失うのが当たり前」   



 経済補償金は、法的には勤続1年ごとに1ヵ月分だが、中国人従業員は経営者と直接交渉して額を決めれば増額できることを知っている。実際、”勤続年月数分”の補償金を請求されたケースもある。つまり、5年勤続なら60ヵ月分を払ったということだ。労働争議になれば「なぜ最高額を支払わないのか」と迫られ、最悪は日中の歴史問題まで持ち出される。


 日本企業は、身銭を切って多額の経済補償金を支払うか、合弁会社に全資産を譲渡して撤退するかの選択しかない。


 「中国では撤退でトラブルになったら、それまでに出資した資金をすべて失うのは当たり前です。場合によっては、資産を隠したといった罪状で、当局に逮捕される恐れもあります」 (前出の日本人幹部)


 実際、今年1月には日系電子部品メーカーの上海工場で、日本人10人を含む18人の経営幹部が軟禁された。6月には北京市の米国系製薬会社のエ場で、米国人社長が6日間も軟禁され、多額の経済補償金を要求された。1人当たり50万㌦の経済補償金を請求されたという報道もある。尖閣諸島国有化による反日デモからほぼ1年、日中関係は悪化したままだ。中国に進出している企業にとって、悩みは尽きない。





いすけ屋



 中国進出は、宮崎正弘氏や青木直人氏といった中国専門家が早くから「やめときなさい!」と警告を発していた。にもかかわらず、目先の利益を求めて、人治国家にノコノコ出かけて行ったんだから、自業自得である。



 とは言うものの、5年務めて経済補償金(退職金)が60ヵ月とは、日本なら5ヵ月もあれば良いほうだから、いかに脅しが効いたかということだろ言う。実態は暴力団の恐喝というところか。



 聞くところによると、撤退専門のコンサルタントがあるらしい。それでも撤退は1~2年かかるという。10年以内だと、それまでの優遇税制(2免3半)が外され、普通に取られて、延滞税・加算税もついてくるそうだ。



 そのうち、人質に取られて帰ってこれなくなるから、すべてをあきらめて帰った方がいい。尖閣戦争が始まってからでは遅いんだから・・・。