こりゃダメだ!安倍汚染水「抜本対策」の致命的欠陥    
(日刊ゲンダイ09月07日)


 世界が懸念している福島第1原発の汚染水問題。安倍首相は「国が前面に出て抜本的な措置を講じる。五輪招致に問題がないことを説明する」と言っているが、まったく説得力がない。なぜなら、安倍政権がやろうとしている抜本対策の目玉、「凍土方式」は、原発事故直後に却下された不適切工法なのである。


 民主党政権は当時、汚染水対策を馬淵澄夫首相補佐官に委ねた。馬淵は横浜国大工学部卒、建設会社技術職研究員の経歴を持つ。土木に詳しく、当時から地下水が汚染されることを問題視、吉田所長と対策を練ったという。馬淵に改めて、当時の経緯や凍土方式の問題を聞いてみた。「凍土方式は完成まで2年間もかかるだけでなく、エ法自体にも問題があります。首相補佐官時代の2011年5月、私は遮蔽プロジェクトチームの責任者として、4種類のエ法を検討しました。その結果、『凍土方式』ではなく、チェルノブイリで実績がある『鉛直バリア方式』を選定しました。凍結管を入れて土を凍らせる『凍土方式』はそもそも永久構造物ではなく、地下水流出を抑えてエ事をしやすくするために一時的に設置するものです。これによって、地下鉄工事でトンネルを掘削しやすくなるなどの効果はあります。しかし、大きな汚染区域を取り囲んで地下水を遮蔽できるかというと、そんな実績はなかった。しかも、真水を凍らせるわけではないのです。地中の水分量の分布はバラバラだし、不純物の混ざり具合など、ありとあらゆる自然界の条件の中で、大規模の凍土壁を造って、地下水を完璧に遮断できるのか。非常に怪しいと思います」


なぜ吉田所長も認めた工法を取らないのか 


 だから、「鉛直バリア(ベントナイトスラリーウオール)方式」が採用されたのだ。


 「これは地下30㍍の難浸透層まで掘り下げて地下遮水壁を造り、原子炉建屋の四方を囲んで完全に遮断しようという案です。壁の材質は、クラック(ヒビ)などが入るコンクリートではなく、ベントナイトと呼ばれる鉱物が入った粘土を使うことになった。これで原子炉建屋の放射性物質を封じ込め、地下水流入も防げる。私は2011年6月11日、国会議員として初めて原発のサイトに入つて、吉田所長とともにこの地下遮水壁の境界か確定する仕事をやりました。吉田所長は当初、 『他のエ事と干渉する』という理由で地下遮水壁建設に反対した。当時は、粉塵を封じ込める飛散防止剤散布や建屋を覆う工事などが並行して進んでいたからです。それでも吉田所長を説得して、地下遮水壁を進めようということになった。ところが、6月に記者発表をする段階で、東電からストップがかかった。


 『(地下遮氷壁工事で)新たに1000億円の費用が発生すると、株主総会に影響を与えるから待ってくれ』というのです」


 結局、地下遮水壁のプランは、馬淵がその後、首相補佐官を外されたこともあって、立ち消えになっていく。大甘の東電は海側にだけ遮水壁を造ることにして、お茶を濁し、これが目下の惨状を招いたのだ。


 当時から遮氷壁建設に取り組んでいれば、今頃、汚染水であわてることはなかった。五輪招致でつっつかれることもなかったわけだ。


 「これからベントナイトスラリー方式をやっでも完成まで時間がかかる。緊急対策として鋼鉄製の矢板を打ち込んで、山側の地下水の流入を止めるべきです。今後はそれを提案しています」


 無責任東電と泥縄安倍政権に任せていても、どうにもならない。
  (取材協力・横田一)




いすけ屋



 新聞が「日刊ゲンダイ」なので安倍さんたたきの内容になっているが、実は民主党政権の失政たたきなのだ。民主党政権時、事故処理の土木専門として馬淵澄夫首相補佐官がいた。確かにこの人は専門知識も深く、期待していたが、いつの間にやら消えていた。党代表選に立候補して2度とも敗れているからか。事故処理の全体を仕切ったのが、例の路上キスで名を売った細野豪志だ。除染基準を年間1ミリシーベルト以下という馬鹿な数字に決めた男だ。この人選が日本の原発事故処理を誤ったのである。



 記事では、遮水壁には「鉛直バリア方式」を選定したとある。実はこの方式でも完全に遮水できるか否かは100%保証は出来ないが、あとで採用が決まった「凍土方式」よりは確実性がある。ベントナイトのカーテンウォールは、円形を重ねて隙間がないようにするので、結構スペースが必要だ。時間もかかる。



 凍土方式はパイプを等間隔に打ち込んでそれらをつなぎ、ポンプで冷凍液を循環させ、周りの土層を凍土化して遮水するもので、土中水分の成分が一定ではないから、同程度に凍土化できるとは限らない。それと、以前にも触れたが、今後永遠に冷凍液を循環させねばならない。これは問題である。設計者は維持管理費をどの程度カウントしたのか疑問でもある。



 馬淵氏が心配するように、この方式はベストではない。では何故「凍土方式」が採用されたのか。答えは簡単。当座の費用が一番安かったからだろう。民間企業に任せると、こういうことになる。もちろん公営事業でも「安い」を追求する。しかし機能面で満足しない場合は選定から外すのが常道である。安倍政権が本気で”尻ふき”をするつもりなら、まず鋼管矢板で囲ってしまうことだ。そうすれば域外への漏出も心配しなくてよい。



 なお馬淵氏は「鋼鉄製の矢板を打ち込んで、山側の地下水の流入を止めるべき」と言っているが、そうではなくて、汚水タンク用地を囲うように矢板を打ち込んで、そこから出ないようにすることと、用地内に井戸を設け、ポンプアップして処理設備を通過させるようなシステムを構築するのが、当面の課題だと思う。山川からの地下水は、そこを通らずに海へ抜けるようにするである。



 安倍首相はオリンピック招致プレゼンで、安全を保障した。おかげで「東京2020」が決まったが、まずはここから掛かるべきだろう。余談だが、安倍さんはよくやったと思う。