発送電分離5~7年後、小売り自由化は3年後 専門委、電力改革へ工程表
   
2013年2月9日
http://digital.asahi.com/articles/TKY201302080728.html?ref=comkiji_txt_end_s_kjid_TKY201302080728



 経済産業省の電力システム改革専門委員会(委員長・伊藤元重東大大学院教授)は8日、電力システム改革の工程表を盛り込んだ報告書をまとめた。電力を家庭などに自由に売れる「小売りの全面自由化」を3年後から始め、電力会社から送配電部門を切り離す「発送電分離」に5~7年後に踏み切る。これで、各家庭が料金や発電方法などで電力会社を選ぶ環境が整い、大手電力会社が地域ごとに独占してきた体制が崩れる。



 茂木敏充経産相は自民党内の議論を経て月内にも最終決定し、今国会に電気事業法改正案を提出する。発送電分離は法改正の作業に時間がかかるため、法律の主な事項(本則)ではなく、付則に進め方や時期などを盛り込む方針だ。



 改革は3段階で進める。

 第1段階は2015年をめどに広域系統運用機関をつくり、電力会社が電力を送り合う「融通」をしやすくする。第2段階は16年をめどに家庭向け電力販売を新しく参入する業者にも認める。これで、大企業向けから家庭向けまで電力販売がすべて自由化される。



 第3段階は18~20年をめどに発送電分離に踏み切る。電力会社の子会社に送配電部門を切り離す「法的分離」(別会社方式)をして、送電網を自然エネルギー発電会社なども公平に使えるよう開放する。準備に時間がかかる電力会社があり、時期に幅を持たせた。



 発電などにかかる費用から電気料金を計算する「総括原価方式」、家庭向け電気料金を政府が認可する制度もやめ、自由に料金を決められるようにもする。



 経産省幹部は「戦後最大の電力改革」と言う。たとえば、東京電力管内でも太陽光発電会社や中部電力から電力が買える。価格競争が起きれば、電気料金が下がる可能性もある。



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 「(野田)前政権の出した改革をしっかりと進めたい」。1月30日、2年ぶりに開かれた経産省と電力会社首脳の懇談会で、茂木経産相はこう切り出した。



 「技術的にも検討する余地がある」。電力会社でつくる電気事業連合会の八木誠会長(関西電力社長)は当然、反論した。だが、茂木氏は受けつけなかった。「懸念があるから前に進められない、では困る」



 前日夜、茂木氏は甘利明経済再生相と会っていた。甘利氏は自民党で電力政策を仕切る実力者。電力会社の力を弱めるおそれがある発送電分離にはこれまで反対だった。だが、関係者によると「改革を進めたい」という茂木氏に、甘利氏は容認姿勢を示したという。



 なぜ改革を進める姿勢に転じたのか。

 経産省は電力を効率よく送ったり電力市場を広げたりするため、1990年代から改革を試みてきた。この動きを電力業界と自民党がつぶしてきた。



 転機は東京電力福島第一原発事故だ。原発を推進してきた自民党に対し、電力業界との関係に厳しい視線が注がれた。脱原発を求める世論も強まった。



 安倍内閣はすでに脱原発を転換しており、さらに電力改革まで後退すれば「電力業界寄り」との印象を与えかねない。今年夏に参院選を控え、「改革に後ろ向きと思われないためだ」(政府関係者)。



 経産省も先手を打った。実質国有化した東電は発送電分離を見越し、今年4月、発電、送配電、小売りの各部門を分ける「社内カンパニー制」を導入する。業界を引っ張ってきた東電を先兵にして流れをつくる。



 だが、改革が「骨抜き」になる可能性も残る。

 発送電分離はこれから党内の反発で後退していくおそれがある。さらに発送電分離の改正法案を提出するのは参院選後の来年以降。自民党が大勝した場合、先祖返りがないとは言い切れない。「(各国の発送電)分離が必ずうまくいっているわけではない。検証が必要だ」。7日の衆院予算委で甘利氏はこう釘も刺した。(藤崎麻里、上地兼太郎)







いすけ屋



 これを後押ししているのは自民党の一部の議員だろうが、なんでもアメリカの真似をすればいいってもんじゃない。現にアメリカでは発送電分離で失敗している。即ち、なんでも民営化すればいいってもんじゃない。たとえば、水道事業を民間業者に任せられるか?中国資本が入って、ヒ素がチビリチビリ混ざっているかもしれない。電気は生活の必需品だ。安定供給が一番である。競争原理が必ずしも正しくないことも、学習したはずだ。



 「何でも民営化」の裏には天下り先の確保という官僚の思惑が透けて見える。どうせ許認可権は役所にあるんだろうから、もってこいだろう。いったい発送電分離のメリットって何なんだ。競争して電気代が安くなるか?逆に倒産して電気が止まるリスクの方が高い。



 極論を言えば、現状の独占企業状態が一番安定供給できるシステムだ。しかも発送電を一社でコントロールしているから、常に直後の発電量を無駄なく調整することができる。効率を追求するのが「構造改革」なら、現状のシステム以上のものはない。発送電分離は「構造改悪」となる。「構造改革」派のみなさん、それでもいいの?



 そんなことより、東西の周波数を揃えて日本中を電力ネットワークで結び、どこからでも不足電力を補えるようにすることの方が先ではないのか。自然エネルギー利用電力に走るのは結構ではあるが、必ず同等のバックアップ電力が必要となる。日本国民が北朝鮮のような電力事情になっても耐えられると言うのなら、話は別ではあるが・・・。ヨーロッパ諸国と一緒に考えてはいけない。



 私は、発送電分離には反対である。各家庭が料金や発電方法などで電力会社を選ぶ環境が整うなんてことは有り得ない。これは改革とは限らないからだ。従って、自民党の先祖帰りは大歓迎である。なお、小さな政府を目指した、米国、ヨーロッパ諸国の失敗にも目を向けなければなるまい。日本人は狩猟民族と違い、自己責任では行動できない民族のようだから、何でもあちらのものを取り入れれば上手くいくとは限らないのだ。