【主張】原発の断層調査 結論ありきに見えないか
    
2012.12.23 03:15
http://sankei.jp.msn.com/politics/news/121223/plc12122303150008-n1.htm



 東北電力東通原子力発電所(青森県)の敷地内を走る破砕帯を活断層だとする見解が、原子力規制委員会の専門家調査団によって示された。



 東北電力は、これらの破砕帯に活動性はなく、活断層ではないとみなしてきただけに、両者の認識の隔たりは大きい。



 規制委は26日に開く2回目の評価会合で東北電力の説明を聞く予定だが、科学的な判断のためには、予断を捨てて謙虚に耳を傾ける姿勢が望まれる。



 本来なら20日の第1回評価会合に東北電力を参加させて議論を交わすべきだった。それをすることなく、活断層であるとの結果をまとめた上で、反論を聞くのは公平感に欠ける印象だ。



 法律で高い独立性が保証されている規制委には、不断の自省が求められるはずである。規制委の自己規制力が弛緩(しかん)すると、独善的な暴走が始まる可能性があることを指摘しておきたい。



 先に行われた日本原子力発電の敦賀原子力発電所での破砕帯調査も、1回限りの審議で活断層との断を下した前例がある。



 電力会社は、原発の敷地の地層に関して多くの調査データを保有している。規制委にはそれを十分に検討し、活用してほしい。破砕帯を科学の対象として見詰める上で、データ軽視の傾向があるとすれば、由々しき問題だ。



 そもそも、規制委設置の目的は原子力発電の安全性向上に置かれていたはずだ。「原子力利用における安全の確保」は、規制委の任務としても規定されている。



 原発敷地内の破砕帯調査は、安全確保の手段の一つに位置づけられるもののはずだ。しかし、最近の規制委の活動からは、調査した破砕帯を活断層と即断することがその目的と化しているかのごとき印象を受けてしまう。



 東通原発の場合は、破砕帯が活断層であると断定されても、重要施設の下を通っていないので、廃炉とはなるまい。しかし、再稼働が大きく遠のくのは確実だ。



 原発の働きを火力発電で代替する結果として、東北電力の赤字は膨らみ、電気料金の値上げ幅の拡大を余儀なくされよう。電気代の上昇は震災被災者の暮らしを圧迫し、復興の足取りを重くする。



 規制委の判断は、地元社会の要請からも独立しているとする考え方もあるが、目的や現実との乖離(かいり)はあまりにも寂しい。





いすけ屋



 このようにまっとうな記事を書いてくれる新聞社は「産経新聞」ぐらいだろう。原子力規制委員会の専門家調査団という触れ込みだが、何せ民主党政権が選んだメンバーである。安倍さんはコノメンバーで引き継ぐと言ってるが、もう少し考えた方がいい。



 私個人的には、民主党の残したものは一切排除してもらいたい。せっかく「脱原発」も見直すんだから、脱原発一色の規制委員会では日本の足を引っ張るだけである。産経が書いているように、この委員会は全くデータを見ないで、科学的な見解は全く出していない。そして「活断層ありき」で報酬をもらっている集団にしか見えない。



 たとえば敦賀原発について下表が浦底断層とそれにつながるヒゲ断層の違いをまとめたものであるが、最新活動時期は「少なくとも後期更新世より古い時代」となっており、この時点での基準12~13万年前によれば明らかに活断層ではなかった。ところが、このメンバーが発足してから後にこの基準を40万年前としたのである。では何故40万年前としたのか、その科学的説明が全くない。



いすけ屋のブログ


 原電が納得できないのもわかる。いわゆる事後法で現在にあてはめているのだから、法的には無効である。それでも純粋に危険だからと言うのであれば、数値計算によってその発生地震の大きさを示すべきでだ。原電は数値計算も行っており、規制委員会よりずっと長期間にわたり調査解析を行っている。規制委員会はこの報告に勝てないから、40万年前まで伸ばしたのは見え見えだ。それで結論は「浦底断層の影響を受ける可能性がある」だから、国民を素人扱いしてなめている。少なくとも私だって地質基礎構造専門の端くれだ。



 原電が「敦賀発電所敷地内の破砕帯の追加調査について」という文書を出しているので、テキスト化したものをここに掲載しておく。(図省略)



げんでんつるが
敦賀発電所敷地内の破砕帯の追加調査について   
                           日本原子力発電株式会社

 当社は、4月24日に実施された国の「地震・津波に関する意見聴取会」の現地調査におけるご意見と国の指示を踏まえ、5月14日、敦賀発電所敷地内の破砕帯※1の追加調査計画を国の意見聴取会でご説明しました。


 今回は、本件に関する当社の考え方と、追加調査の概要についてお知らせします。

 当社では、これらの追加調査に真摯に取り組み、発電所の安全性をお示ししてまいります。


【破砕帯に関する当社の考え方について】


○敦賀発電所敷地内の地質・地質構造については浦底断層及び破砕帯゛1を含め、従来から 各種の調査や数値計算等により把握してきており、その結果を踏まえ、 当該破砕帯は、

        1.耐震設計上考慮すべき断層等(活断層※2)ではない。
        2.浦底断層(活断層)の活動に伴い活動しない。
 と評価してきました。


○今般の国の意見聴取会でのご意見を踏まえ、これまでの調査データのさらなる拡充を行うため追加調査を実施し、上記評価の信頼性向上に取り組んでまいります。

。「耐震設計上考慮すべき断層ではない」根拠(自ら地震を発生させない)
・破砕帯には、変動地形(活断層が活動した時に出来る崖などの地形)が認められない。
・破砕帯は、後期更新世以降の地層をずらしていない。
・破砕帯は、約2 100万年前の地層(ドレライト岩脈)をずらしていない※3。
・破砕帯のずれ方向は、現在の西南日本に想定されるずれ方向と調和的でない。

。「浦底断層の活動に伴い活動しない」根拠(浦底断層に引きずられて同時に活動しない)
・破砕帯は少なくとも後期更新世以降は活動していないので、約4、000年前以降に活動した浦底断層と「司時に活動していない。
・浦底断層が活動した時に破砕帯が同時に活動するかを数値計算で評価した結果、同時に活動しないことを確認。


【参考:破砕帯と岩盤等の関係(イメージ)】

①破砕帯は、後期更新世以降の地層をずらしていない
 ⇒破砕帯は、その上に地層が堆積した後、活動していないと評価
【敦賀発電所の場合】【後期更新世以降に動いた楊合の模式図】②破砕帯のずれ方向は、現在の西南日本に想定されるずれ方向と調和的でない
 ⇒破砕帯のずれ方向(鉛直方向)は、現在の西南日本の地盤に加わる力から想定されるずれ方向と異なっている
③破砕帯は、約2、100万年前の地層(ドレライト岩脈※4)をずらしていない
 ⇒破砕帯は、少なくとも後期更新世以降は活動していないと評価

○破砕帯の活動時期が…
 ドレライト岩脈の生成前の場合
 (ドレライト岩脈がずれていない)
【敦賀発電所の場合】【ドレライト岩脈の生成後の場合】(ドレライト岩脈がずれている)
【岩脈生成後に動いた場合の模式図】



※1:岩盤中の割れ目をいう。

※2:過去に繰り返し活動し、将来も活動する可能性のある断層。原子力発電所の耐震設計では、後期更新世以降(12~13万年前以降)の活動が否定できない断層を活断層として考慮しており、当該断層と構造的に関連する断層(副断層)を含め、その直上には重要な施設を設置しないこととしている。
※3:場所により異なるが、破砕帯は約3~10万年前の地層をずらしていないことを確認している。
※4:火成岩の一種で玄武岩の石基部分の結晶が大きくなったもの。敦賀発電所敷地では、3、4号機建設予定地に岩脈がある。





 これはほんの一部であるが、規制委員会は原電が調査した結果に、ひとつひとつ反論すべきではないのか。独裁者みたいに、鼻から「認められない」ではなく、どうして認められないのか科学手に反証してもらいたい。一旦、国が認めたものを、土足で振り払うようなやり方は、公的機関としてどうなのか。これまでの経緯を見ていると、産経新聞「主張」にあるように、「活断層ありき」の委員会である。



 安倍さんは、ホントにエネルギー政策を見直すのであれば、まずはこの委員会メンバーの解散から始めなければならない。遅れると手をつけられなくなる。何度でも繰り替えすが、「民主党のアカ」はきれいさっぱり洗い落として、新政権の運営にあたってもらいたい。