ジャズピアニスト、D・ブルーベック氏が死去
  
(2012年12月6日10時19分 読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/entertainment/news/20121206-OYT1T00273.htm?from=ylist



 AP通信などによると、米ジャズ・ピアニストのデイブ・ブルーベック氏が5日、心不全のためコネティカット州内の病院で死去。91歳。



 第2次世界大戦で従軍した後、1940年代後半から活躍し、51年にサックス奏者のポール・デズモンドらとカルテットを結成した。クラシック音楽の品格とジャズの即興性を融合させた優美な旋律が世界の聴衆を魅了し、59年のアルバム「タイム・アウト」はジャズ界初のミリオンセラーとなった。このアルバムに収録された「テイク・ファイブ」は、日本でもCMで使われるなど広く親しまれている。(ニューヨーク)







いすけ屋)



 高校生時代はベニー・グッドマンやグレン・ミラー等のビッグバンド・スウィング・ジャズに興味があったが、大学時代、私をジャズ喫茶に入りびたりにさせたのは、デイブ・ブルーベックだった。もちろんビッグバンドでも、生で聴く音の迫力やソロ・アドリブはかっこよかったが、ブルーベックのテイク・ファイブは、5/4拍子という衝撃的なジャズで、今までの音楽の認識をがらりと変えてしまった作品であり、私にとっても衝撃的だった。



 ズチャンチャチャ ズンチャ ズチャンチャチャ ズンチャ。これは明らかに3/4+2/4拍子で、それまでは音楽とは、2拍子、3拍子、4拍子の3種類しかないものと思い込んでいたのに、5拍子の音楽が表れた。もっとも私が知らなかっただけで、クラシックでも結構存在することが後で知るところとなった。例えば、ムソルグスキー作曲:「展覧会の絵」のプロムナード、チャイコフスキー作曲:交響曲「悲愴」2楽章、ホルスト作曲:組曲「惑星」より「火星」等々。



 ブルーベックの「タイム・アウト」ではテイク・ファイブの他、1曲目に「トルコ風ブルーロンド」という曲があり、これは9分の8拍子。いきなり、「なんじゃ、これ!」となる。とにかく、いつ聴いても何度聴いても楽しいアルバムだ。ただ、アルバムの全曲がブルーベックの作曲なのに、「Take Five」だけが、アルトサックスのポール・デズモンドというのも、ちょっとした皮肉かな。ちなみに曲名の「テイク・ファイヴ(Take Five)」は、「5拍子」と「(5分程度の)休憩をしよう」という略式英語の2つを掛けたものだそうな。



 ジャズはコード進行は守るが、メロディは途中でアドリブで変えてゆく。テイク・ファイブも正調ではない変拍子だ。私はこの「自由さ」にあこがれた。コード進行は法律みたいなもので、それには最低限従う。楽器演奏が好きなので、歌はあまり聞かないが、英語はどっちみちわからないので、一つの楽器として聴く。そうすると英語のイントネーションがジャズにぴったりなことがわかる。よく日本人の歌手が日本語でジャズを歌ったりするが、うまくはまらないから、やめた方がいい。



 ブルーベックも91歳なら長生きした方だろう。日本でも有名人が次々亡くなるなか、この記事を発見して、やたらと「テイク・ファイブ」がなつかしくなった。そして、あのころは「自由」にあこがれていたんだということを思い出した。社会人になって、嫌と言うほど「規制」というものに、いじめられてきたので、なおさらである。



 最後にブルーベックの、安らかな眠りを祈りたい。