消費増税法 成立
   
(日刊ゲンダイ08月11日)


 消費税増税を柱とする社会保障・税一体改革関連法は、経済環境の急変時に増税を見合わせる「景気条項」を盛り込んだ。増税実施の判断は、最初の税率引き上げの半年前にあたる平成25年秋に控える。世界経済の減速が国内景気の下振れを招く懸念がぬぐえない中、政府・日銀に対し、財政出動や追加的な金融緩和への圧力が高まる可能性がある。


「景気条項」克服カギ   


 法案は景気条項に加え、「努力目標」として名目3%、実質2%の経済成長率を明記。政府は、来年秋に26年4月の税率引き上げの是非を判断するが、この時点で景気が低迷していれば、増税実施は危うくなる。消費増税が後ずれすれば、財政健全化は遠のく。


 しかし足元では欧州價務危機を引き金とした海外経済の変調を受け、逆風が吹きつける。円高で輸出が伸び悩み、今年1~6月の貿易赤字は2兆9158億円と半期ペースでは過去最大。6月の鉱工業生産指数速報も3ヵ月連続のマイナスで、日銀は9日の金融政策決定会合で、輸出と生産の判断を下方修正した。


追加緩和に期待も   


 増税実施に向けた環境整備に向け、政府は「政策の総動員をしなければならない」(野田佳彦首相)として、今年度補正予算と25年度予算に景気対策を盛り込むことも検討。近年に一定の景気刺激効果があった、エコカー補助金や家電エコポイント制度などが想定されそうだ。ただ、市場からは「財政頼み」に批判も上がる。農林中金総合研究所の南武志主席研究員は「消費税増税の目的は財政健全化。(増税実施へ)財政出動するのは筋違い」と指摘する。


 「指数連動型上場投資信託(ETF)などのリスク資産の購入枠を大胆に増やすなどあらゆる策を考慮すべきだ」 (南主席研究員)と、日銀の追加緩和に期待する声が高まりそうだ。




いすけ屋


 野田さんと谷垣さんの密談密約によって、消費税増税を柱とする社会保障・税一体改革関連法が成立した。忘れてならないのは「景気条項」である。名目3%、実質2%の経済成長率が増税実施条件だったが、3党合意によって「努力目標」とされ、時の政権の判断に委ねられることになった。


 つまり、民主党単独案のときは、この景気条項が足かせになって実施できないだろうというのが多くの経済評論家の意見だったが、まったく足かせは無くなったと考えてよい。財務省は経済数値を捏造するのは得意中の得意であるから、なんとでもなると踏んでいたようだが、これで完璧に14年に8%、15年10%の実施が可能となった。少なくとも、2013年は駆け込み諸費が伸びるから、少々のプラス成長にはなる。景気条項はあってないようなものに変貌してしまったのだ。


 あとは、「いつ解散するか」である。谷垣さんは、今国会中にしてもらわないと困る。そうでないと「谷垣降ろし」によって次期総裁の椅子はないからだ。一方、民主党は出来るだけ引き伸ばしてほしい。すぐに選挙をすれば大敗するに決まっている。よって野田さんはこの圧力に押されるように見せかけて、ずるずる延ばしてゆく。「一定のめどがついたら」と言って、ずるずる延ばした前任者がいる。こんどは「近いうちに」だ。民主党とはこんな党だ。


 普通に考えて、国会の必要案件が全て通ってしまえば、もう野田さんにとって怖いものはない。いくら谷垣さんが催促しても、「はあ?解散の約束など、一切しておりませんが」と、とぼけれていればよい。谷垣さんに、まさか密談内容をテープに隠し録りするような才覚はないだろう。こういうのは、政界では「騙されるほうが悪い」そうだ。総裁と解散の両方を失った谷垣禎一が、地団太踏んで加藤の乱以来再び涙する姿が見えてくる。自業自得だろう。


 「民主党、自民党どちらかの党首が欠けた状態では3党合意は消滅する」と輿石東幹事長および野田さんが言明している以上、9月の代表戦で野田さんが降りれば、解散約束を反故に出来る。あるいは、谷垣さんが「解散不成功」で交代すれば、これでも反故に出来る。負けると分かっている選挙に突入する党首なんているわけがない。


 とにかく、民主党は公約で国民を騙し、自民党をも騙して増税法案を成立させ、まだまだ生き延びようとしている。所謂、反自民寄せ集め綱領なき集団に、政権を任せた国民の責任は重い。従って次回選挙では、鉄槌を下さねばならない。そうすることでのみ、責任をとったことになるのだ。