消費増税の結末はすでに示されている
(Fuji Sankei Business i 7月23日)
田村秀男
ロンドン五輪まであと1週間足らず、通常、五輪開催国は個人消費ブームなどに沸くのだが、英国経済は暗い、英実質国内総生産(GDP)伸び率は昨年第4四半期、今年第1四半期と2連続で前期比マイナスに落ち込んだ。ユーロ危機の余波による、とみるのが一般的のようだが、ユーロ圏のフランスより景気は悪化し、マイナスの度合いはスペイン並みである。どうやら主因は、2011年1月から実施した付加価値税(消費税に相当)増税に行き着く。
キャメロン保守党・自由民主党連立政権による緊縮財政は付加価値税率17.5%の20%へのアップのほか、株式などの売却利益税の増税、子ども手当など社会福祉関連の予算削減にも踏み切った。
付加価値税収は増税前の10年には前年比30%前後の増収となっていたが、増税後の11年4月以来、マイナスに落ち込んだままだ。増税前の「駆け込み消費」が発生し、増税後はその分が剥げ落ち、消費が減ったとみなす向きもあるが、肝心なポイントを外している、増税を機に、消費者の心理はリーマン・ショック直後並みに冷え込んでいる点だ。
英国の「消費者信頼度指数(2004年5月=100)は付加価値税率引き上げ後の11年2月には前年比52%減と落ち込んだあともマイナスが続き、今年初めにいったん下げ止まったっそのあと、再び下がり始め、この5月、40、9まで下がった、前年同期の水準に比べ28%のマイナスである。
税の減収は付加価値税にとどまらない、所得税や法人税収は11年4月あたりから伸び率が鈍化し始め、今年3月からとうとう前年比マイナスに落ち込んでしまった、付加価値増税に心持ち程度に合わせた所得税と法人税の実質減税の影響がないわけではないが、個人消費の落ち込みに伴う景気後退がより強く反映したとみるべきだろう。
英国の大失敗が明白になっても、野田首相はまったく意に介していない。
中央銀行であるイングランド銀行は昨年秋から、ポンド札を大増刷して国債を買い上ける量的緩和(QE)政策を再開し、今年5月の資金供給残高11マネタリーベース)はリーマン前の3.7倍と、米QEをしのぐ水準に達した。ボンド相場はユーロやドルに対して上がらずに済み、長期金利も下がってきたが、下降局面に突っ込んだ実体景気は浮上しない、いわば、ブレーキをかけたままアクセルを踏み込むようなものだ。
日本では1997年4月に消費税率を3%から5%に引き上げた翌年からデフレ不況に陥り、現在に至る。
もともと今回の日本の消費増税は「英増税に倣え」、という財務官僚にそそのかされた菅直人前政権や大手メディアが前のめりになったのがきっかけだ、英国の大失敗が明白になっても野田佳彦首相はまったく意に介さず、日本のメディアの多くももっぱら華やかな祭典の取材合戦に血道を上げるのが、何とももどかしい。 (産経新聞編集委員)
(いすけ屋)
英国のキャメロン政権が目の前で緊縮財政、増税失敗の実例を見せてくれている。同政権は2011年1月から付加価値税率17.5%の20%へのアップのほか、株式などの売却利益税の増税、子ども手当など社会福祉関連の予算削減にも踏み切った。
その結果、増税施行前は駆け込み需要で付加価値税収は30%の増収となったらしいが、施行後は減収が続いている。田村秀男氏によれば、「増税を機に、消費者の心理はリーマン・ショック直後並みに冷え込んでいる」という。イギリスはオリンピック直前なのにサッカーのチケットも売れず、スペイン並みに景気が落ち込んでいるのだ。
そもそもが、「英増税に倣え」という財務官僚にそそのかされた菅直人前政権、野田政権の無知蒙昧が生んだ消費税増税である。それに手を貸した自民党・公明党および大マスコミも共犯なのだが、どことも他国のこういった例を全く示さない隠蔽体質が染み付いている。常に国民は騙されている。
財務省はこの“2名の民主党代表”に「このままでは日本はギリシャのようになってしまうから、消費税をあげないと大変なことになる」とかなんとか、そそのかしたのであろう。ところが財務省のホームページには、2002年5月に財務省が格付会社に送付した意見要旨が今も載っている。
http://www.mof.go.jp/about_mof/other/other/rating/p140430.htm
これによると、「日本は世界最大の貯蓄超過国であり、国債はほとんど国内で極めて低金利で安定的に消化されており、世界最大の経常黒字国、債権国であり、外貨準備も世界最高である」と述べている。どこにギリシャのようになる要因があるのか。総理大臣にウソを教えちゃイカンだろ。イギリスの惨憺たる結果も伏せとんのか?
日本の法務省もいい加減だが、財務省も酷いものだ。次回選挙では、政治主導のできる政党?を選ぶことは、日本を守る上で、われ等の最低限の義務である。