「八百長」で動く官民関係日本社会に遍在する「相撲部屋」的構造とは 
2011.02.09(Wed)  池田 信夫
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/5424


世の中はNHKニュースから夕刊紙に至るまで、相撲の八百長の話題で持ちきりだ。


 それほど重大な問題とも思えない話がこのように多くの人々の関心を引きつけるのは、そこに日本社会によくある(誰でも心当たりのある)構造が見られるからだろう。


 官民関係でも八百長は広く見られる。最も典型的なのは建設談合で、落札率(落札価格/予定価格)が95%を超えるケースは珍しくない。


 ただ、建設談合は何度も刑事事件になり、業者の手口も巧妙化して、あまり露骨な八百長は見られなくなった。昔のゼネコンのようなあからさまな談合が行われているのが電波行政である。


八百長で落札業者や電波の免許を決める官民関係 


 2007年に2.5ギガヘルツ帯の「美人投票」(比較審査)が行われ、2つの枠にNTTドコモ、KDDI、ソフトバンク、ウィルコムの4グループが申請した。


 美人投票の結果、KDDIとウィルコムのグループが当選したが、その「比較審査の結果」を見て関係者は驚いた。ウィルコムが「継続的に運営するために必要な財務的基礎がより充実している」という項目で最高の「A」評価を得て、「B」のドコモを上回ったのだ。


 経営危機が表面化して外資系ファンドに買収され、資金的な不安がささやかれていたウィルコムが、日本の全企業の中でも最大級の利益を上げているドコモより「財務的基礎」が充実しているというのは何を基準にしたのか、関係者は首をひねったが、その理由は2010年になって判明した。


 アナログ放送が終わったあとのVHF帯で行われる予定の「携帯マルチメディア放送」で、ドコモ・民放グループが、KDDI・クアルコムと最後まで争った。


 この時、「ドコモが民放を支援するのとバーターで、2.5ギガヘルツ帯はウィルコムに譲った」と当時のドコモ幹部が証言している。


 2.5ギガヘルツ帯で誰もが本命だと思っていたドコモが落選したのは、その代わりにVHF帯の周波数をドコモに与える密約による八百長だったのだ。


 2年も経たないうちにウィルコムの経営は破綻し、「財務的基礎」が極めて脆弱だったことが判明したが、その窮地を救ったのがウィルコムを買収したソフトバンクだった。


 この「貸し」によって、周波数の再編に伴って空く900メガヘルツ帯がソフトバンクの「指定席」になったという。


日本の会社はまるで相撲部屋 


 電波行政が相撲部屋に似ているのは偶然の一致ではない。この種の「貸し借り」は日本社会に広く見られる慣習である。


 会社の中の人間関係でも商慣習でも、「貸しをつくった」とか「借りを返す」といった行動が実に多い。これは未開社会に多い「贈与」の一種と考えることができる。


 約束を守らせる仕組みとしては司法機関があるが、そういう制度のない社会では、約束を破った者をコミュニティーから追放する「村八分」によるペナルティーが有効だ。


 こういう仕組みが効果を上げるためには、長期的関係が切れることによって失うものを大きくする必要がある。


 未開社会では、人々は多くの贈り物をし、互いにご馳走する。これはそういう互恵的な関係をつくることによって結びつきを強め、コミュニティーを離れられなくするメカニズムだと考えられている。


 同じような構造は、日本の会社にも見られる。大学を卒業した社員にコピー取りをさせたり、自転車で集金させたりするのは、このような徒弟修業のコストを回収するために会社に長く勤務させる贈与の一種である。


 若い時に長時間労働で会社に「貯金」を強いられた社員は、それを年功賃金と楽な仕事で回収するため、定年まで会社にとどまる。


 官民関係の中で最大の贈与は、天下りを受け入れることだ。これは役所から強要されるわけではないが、企業にとって賢い戦略は、役所に言われなくても先に贈与して、彼らに大きな貸しをつくることだ。


 ソフトバンクがウィルコムを救済するのも、NTTドコモが赤字覚悟でVHF帯のマルチメディア放送をやるのも、総務省への贈与である。


今、日本に必要なのは「長期的関係」ではなく「法の支配」 


 このような相撲部屋型システムは、必ずしも非効率とは言えない。高度成長期に日本の企業がどんどん成長していた時期には、優秀な人材を引き止めておくために若い時に徒弟修業で奉仕させ、年を取ってから高給で報いる年功序列は、インセンティブとしてうまく機能した。


 官民関係においても、国内産業を育成する時期には、既存業者だけで談合させてレント(超過利潤)を保証する必要がある。時には役所が仲介して「官製談合」によって利害調整することもあった。「不況カルテル」と称して、役所が公然とカルテルを組ませることさえ珍しくなかった。


 しかし、こうした長期的関係は、成長が止まってレントが枯渇すると維持できなくなる。今、入社する社員に「40年後には楽になるから今は雑巾がけしろ」と言っても、40年後に会社があるかどうかは分からない。


 官民関係でも、こうした既得権を守り続けてもビジネスとして成り立たないものが増え、談合のメリットがなくなってきた。

 

八百長で免許をもらったウィルコムは経営破綻し、マルチメディア放送の免許をもらったドコモも「貧乏くじ」と言われている。天下りが批判されるようになったのは、企業の側にそのメリットがなくなったからなのだ。


 それでも天下りや外資の排除で通信業者に借りをつくった電波官僚は、途中で約束を破ることができない。このため、900メガヘルツ帯でソフトバンクの「指定席」を守るために、今度の電波法改正では民主党の要求していた周波数オークションをやめ、また美人投票で決めることになった。


 相撲の八百長は、プロレスのような興業として楽しめばいいが、電波の八百長は時価1兆円以上の電波を無償で業者に贈与し、その見返りに官僚が天下りなどの便宜を図ってもらうものだ。「光の道」論争で激しく「公正競争」を叫んだソフトバンクが、周波数オークションに反対して八百長に加担していることも不可解である。


 今、日本に必要なのは、高度成長期から続く長期的関係を清算し、透明なルールに基づいて新しい企業の参入と対等な競争を可能にする法の支配である。


 そのためには、日本社会の隅々に巣食っている相撲部屋的な関係を見直す必要がある。霞が関は相撲協会を見習って、これまでやってきた八百長を再点検してはどうだろうか。



いすけ屋


 マスコミが集中的に相撲の八百長をやり出したのも、明らかに裏がある。この2.5Gヘルツ帯の官製談合の様子がここまで明らかになっても、どの大手新聞も報じない。ましてやテレビでは皆無だ。相撲の八百長は犯罪でもないのに警察がわざわざリークしたのも、こういった裏技があるからだ。どちらが悪どいか、一目瞭然である。


 一方で、英国のエコノミスト誌が菅政権の日本開国政策を手放しで褒めている。JBpress2011.02.10(Thu)版だ。

http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/5429

この英エコノミスト誌は小泉構造改革を絶賛し、世界のグローバル金融化に与して世界を大不況に陥れた元祖みたいな経済誌である。お前が言うな!といいたい。単にTPPに参加するとか、実現性の全くない保険制度、消費税増税を、日本の事情も知らずに褒め称えるのは、裏になにかがあるに違いない。ここの分析力は、先ほど日本国債の格付けを下げた「S&B社と大差ない。ちなみにイギリス経済は益々暗闇に向かっている。自国の政策を批判する方が大衆受けするよ、エコノミスト誌さん。


 こういった怪しい情報が、インテリジェンスに弱い今の日本に満ち溢れている。くれぐれも情報操作には気をつける必要がある。本日、菅さんは、小沢さんに「自主的に離党」するよう勧めたらしいが、聞き受ける人間でないことぐらい分かり切っているはずだ。菅さんは、「申し入れたよ」というアリバイをつくっただけだろ。また自民党は、何時までも小沢さんの「証人喚問」とばかり突っ込まない方がいい。裁判はすでに破綻しているんだから、恥をかくだけだ。


 放送電波の八百長は1兆円規模の事業がベースにある。倒産するような会社を選んだ「お笑い」を、国民には知らされず、大相撲の八百長問題を真面目な顔して報道するNHKをはじめとする大手メディア。もう、どうしようもないね。ほんとの八百長を見極めなくちゃ。