【主張】首相官邸 危機管理がなっていない
 
2010.11.26 02:19
http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/101126/plc1011260219002-n1.htm


 北朝鮮の韓国砲撃に関する衆参両院予算委員会での集中審議は、政府の危機管理体制がいかに不備かを露呈した。

 菅直人首相は「迅速な対応がしっかりとられていたと言って間違いない」と釈明したが、耳を疑う発言だ。


 政府見解の公表は、砲撃発生から約7時間後であり、米国より約3時間も遅れた。米国は現地時間午前4時半ごろだった。

 23日は宮中行事などもあったためというが、国民の生命・安全を守ることが国家の最大の責務であることをどの程度認識していたのか。深刻な懸念をぬぐえない。


 公邸で砲撃の一報を聞いた首相が、直ちに官邸入りしなかったことが自民党などから追及された。首相は砲撃から約1時間後の午後3時半に秘書官から報告を受けたとしているが、その後、4時過ぎから公邸で民主党の斎藤勁国対委員長代理と30分以上会談した。


 仙谷由人官房長官に対する問責決議案への対応が焦点となっていたことから、野党側は斎藤氏との会談は危機管理よりも国会対策を優先させたものだとただした。

 首相は「斎藤氏との会談は以前から予定していた」「執務は公邸でもできる」などと反論したものの説得力は乏しい。


 米政府は第一声の段階から北朝鮮を強く非難していた。これに対し、首相が5時過ぎに最初に述べたコメントでは、北朝鮮への非難や韓国支持を表明しなかった。

 首相は「その時点では確実な情報がなかった」などと釈明したが、民家への砲撃などは明らかになっていた。無防備な一般人への攻撃について、なぜ非難しなかったのだろう。


 官邸には3時20分に情報連絡室が設置されていたものの、仙谷氏や伊藤哲朗内閣危機管理監の官邸入りは5時近くになった。

 岡崎トミ子国家公安委員長が発生当日、警察庁に一度も登庁しなかったことも問題だ。


 こうした初動対応の遅れは、尖閣諸島沖の中国漁船衝突事件での失態と重なる。

 今回の砲撃は、日本の安全保障上の危機である。

 政府が、日本の平和と安全に影響を与える周辺事態法の適用を早々と見送ったことにも疑問が残る。有事への備えが十分かどうかは、不断に検討しなければならないからだ。



いすけ屋


 北朝鮮による韓国砲撃は170発。これに対して韓国の反撃は80発だったということで軍部が非難されている。反撃が始まったのが13分後だったのが、早いか遅いか分からないが、韓国防衛大臣は更迭されている。


 これがもし、日本だったらどうだろう。自衛隊法では、もともと武力攻撃が有った場合は、総理大臣の命令で出動出来る旨、定められていた。しかし実際に出動した場合、自衛隊の行動の妨げとなりそうな事態が数多く想定されるため、有事法制関連法が制定されている。(例えば国立公園内に陣地を造る場合、環境省の許可が必要等)


 それでも防衛省幹部、防衛大臣、総理大臣にまで情報があがってくるのに、どれくらい時間がかかるのか。総理大臣は緊急の場合はその場で出動命令が出せるが、直後には閣議決定、国会の同意が必要である。なお国会で否決されたら、出動命令は取り消しとなる。国会で承認されて初めて「出動命令」は本決まりとなるのだ。とても13分では反撃できないだろう。


 反撃にかかっても、許される武力行使は、武力攻撃を排除するために必要限度とされている。どこまでが必要限度なのかわからないし、一体誰が判断するのか。我々国民には知らされていなくても、行動プログラムぐらいは出来ているのだろうが、そもそも日本には憲法上、「非常事態権の保有」すら明記していない。平時と有事では憲法を使い分ける事も必要ではないか。


 ほんとの危機管理とは、官邸に入るのが遅れた云々はもちろんの事であるが、一連の法があまりにも非現実的であり、シビリアンコントロールを履き違えている。攻められたら、現場の指揮権と行動の責任は現場の制服に任せるぐらいでないと、とても間に合わない。リアリズムの伴った法規整備こそ、必要である。


 国民の生命と財産を守る事が政治の第一義である。ならば、昔の軍隊は侵略したとか変な洗脳は振りほどいて、優秀な軍を育て信じるのが最高司令長官(総理大臣)の職務であり、危機管理の第一歩である。


 有事法制の制定時には相当の反対者がいたが、その大半が、ソ連が崩壊して、日本に攻めてくる国など有り得ないという、誤った見方によるもので、9条信者に多かった。彼等は、いま、どのような弁明をするのだろう。危機管理とは、常に最悪の場合を想定しておく必要がある。「おままごと」には、つきあっていられないのだ。