辛酉 七赤友引 晴
伝え聞く。
伊勢守2代目杉野ディーノ、側近に曰く、
「6年以上前のことは覚えちゃいないが、この5年間敗戦に次ぐ敗戦を重ね、屈辱に耐えてきた。
自分で言ったらイケナイのかも知れないが、私ほど誠実で優しい男もそうはいないハズだ。
それなのに、理解されることはなく、冷たくされて、マキシン追悼を名目に多摩川丸子橋を見に行ったことすらある。
しかしながら、このまま膝を抱えて恨み言連ねるだけでは負け犬のままである。雪辱は勝負に勝つことによってしかなされないのだ。
好きではない言葉だが、ナウなヤングが言うところの【『非モテ』を脱し『リア充』になる】には、『血の汗流せ涙を拭くな』なのである。
すなわち、雪の中でうさぎ跳びをする恥を掻かねばならぬだ。
オレ、この戦争が終わったら位階官職を返上し、愛する一人のために生きてゆきたいんだ」

(了)