先日西川悟平さんのトーク&コンサートに行ってきた。著書を読み、どんな人かとても楽しみにしていた。

右手は5本とも動くが、まだ2本は不自由な状態で、左は2本しか動かないと語っていたが、そうは思えないほどに見事な演奏だった。

でも私が感動したのは7本の指で見事な演奏をしたからではなく、彼が出す音が非常に美しく、重厚で豊かな響きを持っていたからだった。
特に左手の低音などは大変に厚みのある聴いている人の胸に響いてくるような素晴らしい音で、その日に弾いていたスタインウェイは小型だったが、こんなに響くんだな~と思った。

実は私のピアノ教室ではこのホールで発表会をやっているので毎年私もこのピアノを弾いているが、なかなかあのような分厚い響きは出せない。

弾く人によってこんなに音って違うんだと実感した。前にコンセルヴァトアールの教授、イヴ・アンリ氏のレクチャーの時も素晴らしい響きで感動したが・・・やはりピアニストによって同じピアノでも色々な響きがするのは当たり前だがおもしろいと思う。

でも西川氏の音は私が今まで聴いたことのない響きがすると思った。今はまだ指の調子もやっと戻ってきたところだろうし全部の指が使えるわけではないのだから、他のピアニストが弾くよりも、テクニック的にはやさしい曲を弾いているが、それでも彼の演奏には特別な何かを感じる。
非常に男性的で構築的な、でも人間的な温かさを感じる演奏・・簡単に言えないがアメリカでも皆がスタンディングオベーションしたというのはわかる気がする。

彼をニューヨークに呼んだブラッドショー氏はその特別な才能を見抜いていたと思う。やはり15歳からピアノを始めても彼はピアニストになる運命だったのだろうと思った。

話もすごくうまいので、ピアニストとしてだけでなく講演の仕事も十分やれると思うし自分だけの特別なスタンスを持てる人だと思った。 人間的にも引きつける魅力を持っているし、話を聞いていると変な意味でなく、人を救うことができる宗教家みたいだと思う。

これからも世界中で活躍できるピアニストとして「楽しみながら」がんばってほしい。
また演奏を聴ける日を楽しみにしている。