どうも。やまだです。
高校一年生の皆さん、現代文では「羅生門」を習いましたでしょうか?
芥川龍之介の作品として有名なこの物語は、高校生なら必ずと言っていいほど習う話ではないでしょうか。
学校ではほんの浅い部分にしか触れませんが、今回はもっと深いところを見て、羅生門の面白さを知ってほしいと思っています。
舞台
本文中にいくつかヒントがあります。それを拾っていくと、
・時代は平安時代末期
・季節は晩秋
・場所は平安京の正門、羅城門
ということが読み取れます。
ここでなにか引っかかりませんか…?
タイトルは羅生門なのに、舞台は羅城門です。
なぜ芥川龍之介はタイトルの漢字をわざわざ変更したのでしょうか?是非頭の片隅に置いてこの記事を読んでほしいと思います。
※本文を同時に読んで頂くとより分かりやすいかと思います。
①柱のきりぎりす
②下人の頬にあるにきび
③老婆の論理
④下人はなぜ老婆の着物を剥ぎ取ったのか
⑤物語を通して
①柱のきりぎりす
きりぎりすは季節が秋であることを象徴します。
また、少しあとに登場する「丹塗の柱に止まっていたきりぎりすも、もうどこかへいってしまった。」という描写には、「とうとう下人の他に誰もいなくなった」という下人の孤独も暗示していると考えられます。
②下人の頬にあるにきび
にきびは、『羅生門』に限らず、小説などで人物が若者であることを象徴します。
この描写によって、下人が若者であることがわかります。
この短い小説の中に、「にきび」というワードが何度も登場します。
ずっとにきびを気にしていた下人ですが、老婆との対話シーンのクライマックスで「不意に右の手をにきびから離し」ます。
先ほどにきびは若者であることの象徴だと書きましたが、この物語では加えて「若者であるがゆえの未熟さ、不安定さ」も表現していると考えられています。
つまり、にきびから手を離した下人は「若さ」と決別した、ということです。
③老婆の論理
下人との対話の内容から老婆の論理を読み解きます。要点をまとめると、
ⅰ 悪には悪で報いても良い
↓つまり
ⅱ 善人の髪は抜かない
↕
ⅲ 生きるために仕方なくした行為は、悪ではない
ここでおかしなことになりますよね。
生きるために仕方のない行為は悪ではないのなら、善人の髪を抜いても悪にならないのではないでしょうか。
つまり、老婆の思考はⅲだけで構成されているということになります。
老婆の論理
「生きることの前では、善悪に価値はない」
④下人はなぜ老婆の着物を剥ぎ取ったのか
皆さんは「通過儀礼(イニシエーション)」という言葉をご存知でしょうか。
言葉の意味としては、「青年が社会の一員になるために行わなければならない儀式」ですが、皆さんも経験したことがあるのではないでしょうか。
例えば、七五三、入学式、成人式など…。
成人式で急に20歳になるわけでもないし、入学式のその場で入学するわけでもありません。大して意味はないんです。
けれど、大人になったという、入学したという象徴的な行為としての意味なら十分にあります。
それと同じで、下人も老婆の着物を剥ぎ取ることで「盗人になる」ことの通過儀礼を行いたかったのではないでしょうか。
もう一つ、考えられる意味があります。
本文中に老婆が「檜皮色」の着物を着ているという描写があります。
「檜皮色」とは、檜(ひのき)の樹皮のような赤黒い色の事です。
これが檜皮色です。画像は作務衣といって、僧や尼が着用するものです。
このことから、老婆は尼だったのではないか、というのが私の考察です。
本来、人を救うべき人間が背徳的なことを行っていたため、下人は「お前にこの服を着る資格はない」という思いから、老婆の着物を剥ぎ取ったのではないでしょうか。
⑤物語を通して
この物語の前半では、対比がよく用いられています。
一つずつ見ていくと、
・時刻は暮れ方(昼と夜の境界)
・季節は晩秋(秋と冬の境界)
・丸柱(赤)に止まっているきりぎりす(緑)
↓
・下人の揺れ動く心情(善と悪の境界)
↓
生と死の境界
ざっとこの程度取り上げてみました。
これらの表現が、下人の迷いやためらいを表現しているのではないでしょうか。
そして、終盤には状況も変化します。
・時刻は夜(黒洞々たる夜)
・きりぎりすはいなくなる(秋の象徴)
↓
・季節も冬へ
・下人は盗人に(悪)←生を選択
芥川は下人の心情変化を情景描写によって見事に表現しています。
老婆の論理は皮肉にも下人が盗人となる口実を作ってしまいます。
下人の行方は、誰も知らない。
下人という一人の男が生きるためにためらいを断ち、盗人になる。
羅城門はその時、「生を羅(めぐ)る門」すなわち羅生門になったいたのです。
覚えてくれていましたか?タイトルにも意味が込められていました。
他に気づいたことがあれば何でも教えてほしいです。
ここまで読んでいただき本当にありがとうございました!
