巻第七 用薬
39 中国と日本との味つけ
中国の書である
『居家必要』、
『居家必備』、
『斉民要術』、
『農政全書』、
『月令広義』
などには料理の方法が多く書いてある。
その方法は日本の料理と大いに相違し、みな脂っこくて味つけも濃く、膳立ても甘美である。その味もひどく重くてくどい。中国の人は胃腸が厚く、生まれつき強いから、こうした重味を食べてもよく消化する。この頃長崎にやってくる中国人もこのようであるという。
日本人は元気な壮年のひとでも、こうした食事をすると、すぐに満腹し、消化不良になって病気を起こすであろう。
日本人の食事は、淡白で軽いのがよい。脂っこくて味の濃いものを多く用いない。料理人の腕前も味の軽いものをよしとして、その味つけをするひとをすぐれた職人とする。これは中国と日本との風土や気風の違いからであろう。であるから、補薬を小服にして甘草を減じ、棗を少し用いることは当然といわなければならない。