巻第七 用薬

35 煮散の法


宋の沈存中の著書『筆談』に、「近世は湯を用いずして煮散を用ゆ」と書かれている。とすれば中国ではこの方法を使っているのであろう。煮散については『筆談』でもその方法を詳しく書いていない。おそらく、煮散は薬を粗い粉にし、目の細かい布の薬袋のひろいのに入れて、熱湯の沸騰したときにその薬袋を入れ、しばらく煮て薬汁が出たときに早くとり上げて服用するのであろう。粗い粉の散薬を煎じるゆえに煮散と名づけたのではなかろうか。薬汁が早く出て、早くとり上げて煮えばな(はじめのもの)を飲むので、薬力は強い。煎じすごすと、薬力は弱くなって効力がなくなる。
この方法は利湯を煎じるときによく、薬力は強いはずである。補薬の場合にはこの方法はよくない。煮散の方法は他の医書ではまだ見当らない。