巻第五 五官洗浴

44 たらいの大きさ

入浴するためのたらいの寸法は、曲尺で縦二尺9寸(八十七センチ)、横二尺(六十センチ)。
それはいずれも囲りの板の内側からの寸法である。
深さは一尺三寸四分(四十センチ)、囲りの板の厚さは六分(一.八センチ)、底板はそれよりも厚いものがよい。蓋はあるのがよい。すべて杉材を用いる。冬期は、上部と囲りに風よけのかこみをつくる。
たらいが浅いと風にあたりやすくて寒い。夏でもたらいが浅いと湯があふれ出てわるい。
温湯は冬でも深さ六寸(十八センチ)をこえてはいけない。夏はとくに浅いほうがよい。
世間には水風呂といって、大桶に銅炉をはめ込んで、桶に水を深く入れて火をたき湯をわかして、そして入浴する。
水が深くて湯の熱いのは、身体を温めすごし、汗を出しすぎて気をのぼせてへらしてしまう。大いに害がある。
別の大釜で湯をわかしてたらいに移し入れ、湯を浅くして熱くない湯に入り、早めにあがって温めすごさなければ害はない。

桶から出るときに、万一、湯がぬるくて身体が温まらない場合には、はめ込んでいる炉で火を少したいてもよい。

湯が熱くなりそうだったら早く火を消すことである。かくすれば身体に害はない。