巻第五 五官
11 導引の方法

導引の法を毎日実行すれば、気がよくめぐり、食物をよく消化して積聚(かんしゃく)を起こさない

  • 朝まだ床から起き出ないうちに、両足をのばし、濁った気を吐き出し、起きて坐り、頭を仰向かせて、両手を組み、前方へつき出し、上にあげる。
  • また歯を何度も噛みあわせ、左右の手をもって首筋を交互におす。
  • ついで両肩をあげ、首をちぢめ、目をふさいで急に肩を下げる動作を三度ばかり繰り返す。
  • それから顔を両手でたびたびなでおろし、目をも目がしらから目じりに何回もなで、鼻をも両手の中指で六、七度なで、耳朶を両手ではさんでなでおろすこと六、七度、さらに両手の中指を両耳に入れてさぐり、しばしば耳孔をふさいだり開いたりし、そして両手を組み、左へ引くときは頭を右に廻し、右へ引くときは左に廻す。このようにすること三度。
  • ついで手の背で左右の腰の上や京門(第十二肋骨部)あたりを、すじかいに下へ十遍ばかりなでおろし、それから両手で腰を指圧する。
  • 両手の掌で腰の上下を何度もなでおろすのもよい。こうした動作で気をよく循環させ、気を下すことになる。
  • さらにまた両手をもってを軽く十遍ばかり打つ。
  • ついで股膝をなでおろし、両手を組んで、三里(膝がしらの下)をかかえて、足を前にふみ出すようにし、左右の手を自分のほうに引きつける。両足ともこのように何度も繰り返すがよい。
  • ついで左右の手をもって両方のふくらはぎの表裏をなでおろすこと数度。
  • それから足の心、ここを湧泉の穴(土ふまずの中心部)というが、片足の五指を片手でにぎり、湧泉の穴を左手をもって右穴を、右手で左穴を十遍ばかりなでる。
  • また両足の大指(親指)をよく引きながら他の指をもひねる。
    これが術者の行う導引の術である。

暇のある者は毎日つづけてこれを実行するがよい。
また召使いや子供たちに教えて、ふくらはぎをなでさせ、足心をひどくこすらせて熱くなったときにやめさせるのもよい。
足の指を引っぱらせるのもまたよい。
朝晩こうすると、気が下がり、気をめぐって気分がおちつき、足の痛みもなおるのである。大いによい。遠方へ歩いていこうとするとき、またそのあとに、足心を以上のように按摩しておくことはもっとも大切なことである。

しり【尻・臀・後】