巻第五 五官
7 眠入るまでの軽い運動

夜床に入って、眠入るまでは両足を伸ばしておくのがよい。眠入る前に両足をまげて脇を下にしてそばだって(横向きになる)寝るがよい。これを獅子眠という。一晩に五度まで寝返りをうつのがよい。胸や腹に気がとどこおったならば、足をのばして胸部や腹部を手でなでおろし、上気するひとは足の親指を盛んに動かすと気持ちがよくなる。ひとによっては、こうした方法で、何度もあくびをするようになり、とどこおった邪気を吐き出してしまうことができる。大きなあくびをしないほうがよい
眠りにつくとき、口を下に向けて寝てはいけない。睡眠中によだれが出てよくない。
仰向け寝てはいけない。うなされやすいからである。
両手の親指をまげて、これを他の四指を握って寝ると、手が胸の上をふさがないのでうなされない。これが習慣になって眠っているときも指を開かなくなる。この方法は、『病原候論』(随代の医者巣元方の著書)という医書に書かれている。
寝るまえにはのどにある痰をかならず吐き出さなければならない。痰があると眠入ってからうなされて苦しむ。とくに老人は、夜寝るとき、去痰薬を飲むように医書に書いてあるのもこのためなのである。
夕食や夜食に気ふさぎ痰のでるようなものを食べてはいけない。うなされることを恐れるからである。