巻第四 飲酒
45 多飲の戒め
酒は各人にそれぞれの適量がある。
ほどよく飲めば益が多く、多飲すれば損失が多い
生来謹厳なひとも多く飲めば、欲深くなってみぐるしく、平常心を失い乱れてしまう。
言行ともども狂ったようで日頃とは似ても似つかぬものとなる。
身をかえりみて反省して慎まなければならない。
青年時代から反省して自分を戒め、父兄も早く子弟を戒めることが必要である。
長いあいだには性になってしまう。癖になってしまえば生涯改まらないものだ。
生来あまり飲まないひとは、一、二杯で酔い気持よく楽しい。
多く飲むひととこの楽しみは同じはずである。酒を多く飲めば害が多い
の詩に、「一飲一石なる者は、いたずらに多を以って貴しとなす。其の酩酊の時に及んで、我とまた異なることなし。笑って謝す多飲の者。酒銭(酒代)いたずらにみずから費やす」というのはもっともなことである。

白楽天:唐代の詩人