巻第四 飲食 下
 

7 食物の陰と陽と
どんな食物でも陰の気がとどこおっているものには毒がある。食べてはいけない。『論語』の「郷党篇」に述べている聖人の召し上がらないものはすべて陽の気をなくして陰物となったものである。
穀物や肉類なども蓋をして時がたつと陰の気が生じて味が変化する。
魚や鳥の肉なども長くおいたもの、また塩づけにして時がたったものは、色、臭、味が変る。これはみな生気ある陽の気を失うからである。
野菜なども同じで、長くおいたものは生気をなくして味が変る。このようなものはみな陰物である。胃腸に害がある。かりに害はなくとも補養にはならない。
 水なども汲みたてのものは陽気盛んで、生気がある。時間がたつにしたがって陰物となり、生気を失ってしまう。
いっさい飲食物が生気を失い味と臭と色香とが少しでも変わったものは食べてないほうがよい。
天日にほして色が変わったものや塩づけにして損じないものなどは、陰物ではないから食べても害にならない。しかし乾物の気のぬけたものや塩づけの古いもので、色、臭、味の変化したものはみな陰物である。食べてはいけない。

『論語』の「郷党篇」
『論語』は、孔子とその高弟の言行を、孔子の死後に弟子が記録した書物である。儒教の経典である経書の一つで、朱子学における「四書」の一つに数えられる。*「四書」➡『論語』『大学』『中庸』『孟子』