試験問題の作成に関する手引き(平成30年3月)

作成日付:21/01/25
 更新日付:23/01/24

 

第5章 医薬品の適正使用・安全対策

Ⅰ 医薬品の適正使用情報
1)添付文書の読み方

 

Ⅰ 医薬品の適正使用情報

1)添付文書の読み方

 

 


○相談すること
その医薬品を使用する前に、その適否について専門家に相談した上で適切な判断がなされるべきである場合として、次のような記載がある。

(a)「医師(又は歯科医師)の治療を受けている人」
医師又は歯科医師の治療を受けているときは、何らかの薬剤の投与等の処置がなされており、その人の自己判断で要指導医薬品又は一般用医薬品が使用されると、治療の妨げとなったり、医師又は歯科医師から処方された薬剤(医療用医薬品)と同種の有効成分の重複や相互作用等を生じることがある。
そのため、治療を行っている医師又は歯科医師に
あらかじめ相談して、使用の適否について判断を仰ぐべきであり、特に、医療用医薬品を使用している場合には、その薬剤を処方した医師又は歯科医師、若しくは調剤を行った薬剤師に相談するよう説明がなされる必要がある。

(b)「妊婦又は妊娠していると思われる人」
胎児への影響や妊娠という特別な身体状態を考慮して、一般的に、医薬品の使用には慎重を期す必要がある(第1章Ⅱ-4)(c)参照)。
「してはいけないこと」の項で「次の人は使用(服用)しないこと」として記載されている場合と異なり、必ずしもヒトにおける具体的な悪影響が判明しているものでないが、妊婦における
使用経験に関する科学的データが限られているため安全性の評価が困難とされている場合も多い
そのため、一般の生活者の
自己判断による医薬品の使用は、最低限にとどめることが望ましく、既に妊娠が判明し、定期的な産科検診を受けている場合には、担当医師に相談するよう説明がなされる必要がある。

(c)「授乳中の人」
摂取した医薬品の成分の一部が乳汁中に移行することが知られているが、「してはいけないこと」の項で「授乳中の人は本剤を服用しないか、本剤を服用する場合は授乳を避けること」として記載するほどではない場合に記載されている。
購入者等から相談があったときには、
乳汁中に移行する成分やその作用等について、適切な説明がなされる必要がある。

(d)「高齢者」
使用上の注意の記載における「高齢者」とは、およその目安として
65歳以上を指す。
一般に高齢者では、
加齢に伴い副作用等を生じるリスクが高まる傾向にあり、また、何らかの持病(基礎疾患)を抱えていること等も多い((第1章Ⅱ-4)(b)参照)。
65歳以上の年齢であっても、どの程度リスクが増大しているかを年齢のみから一概に判断することは難しく、
専門家に相談しながら個々の状態に応じて、その医薬品の使用の適否について慎重な判断がなされるべきであり、使用する場合にあっては、副作用等に留意しながら使用される必要がある。

(e)「薬などによりアレルギー症状を起こしたことがある人」
その医薬品を使用してアレルギー症状を起こしたことはなくても、他の医薬品でアレルギーの既往歴がある人や、
アレルギー体質の人は、一般にアレルギー性の副作用を生じるリスクが高く、その医薬品の使用の適否について慎重な判断がなされるべきであり、やむを得ず使用する場合には、アレルギー性の副作用の初期症状等に留意しながら使用される必要がある。

(f)「次の症状がある人」
その医薬品の使用の適否について、一般の生活者において適切な判断を行うことが必ずしも容易でなく、軽率な使用がなされると状態の悪化や副作用等を招きやすい症状(その医薬品では改善が期待できないにもかかわらず、一般の生活者が誤って使用してしまいやすい症状を含む。)や、その状態等によっては医療機関を受診することが適当と考えられる場合について記載されている。

 

専門家に相談しながら、個々の状態に応じて慎重な判断がなされるべきであり、症状の内容や程度によっては、要指導医薬品又は一般用医薬品の使用によらず、医療機関を受診するべきであることもある。

g)「次の診断を受けた人」
現に医師の治療を受けているか否かによらず、その医薬品が使用されると状態の悪化や副作用等を招きやすい基礎疾患等が示されている。
その医薬品の使用の適否について、専門家に相談しながら、個々の状態に応じて慎重な判断がなされるべきである。
また、使用する場合にも、基礎疾患への影響等に留意する必要がある。なお、医師の治療を受けている場合には、治療を行っている医師に相談するよう説明がなされる必要がある。

その医薬品を使用したあとに、副作用と考えられる症状等を生じた場合、薬理作用から発現が予測される軽微な症状が見られた場合や、症状の改善がみられない場合には、いったん使用を中止した上で適切な対応が円滑に図られるよう、次のような記載がなされている。

(a)副作用と考えられる症状を生じた場合に関する記載

  • i)「使用(服用)後、次の症状が現れた場合」
  • ii)「まれに下記の重篤な症状が現れることがあります。その場合はただちに医師の診療を受けること」

副作用については、

  • i)まず一般的な副作用について発現部位別に症状が記載され、そのあとに続けて、
  • ii)まれに発生する重篤な副作用について副作用名ごとに症状が記載されている。

一般的な副作用については、重篤ではないものの、そのまま使用を継続すると状態の悪化を招いたり、回復が遅れるおそれのあるものである。
また、一般的な副作用として記載されている症状であっても、発疹や発赤などのように、重篤な副作用の初期症状である可能性があるものも含まれているので、軽んじることのないよう説明がなされることが重要である。


重篤な副作用については、入院相当以上の健康被害につながるおそれがあるものであり、そうした重大な結果につながることを回避するため、その初期段階において速やかに医師の診療を受ける必要がある。
主な副作用の症状、医師の診療を受ける以前の対応等に関する出題は、第2章Ⅲを参照して問題作成のこと。

(b)薬理作用等から発現が予測される軽微な症状がみられた場合に関する記載

各医薬品の薬理作用等から発現が予測され、容認される軽微な症状(例えば、抗ヒスタミン薬の眠気等)であるが、症状の持続又は増強がみられた場合には、いったん使用を中止した上で専門家に相談する旨が記載されている。

(c)一定期間又は一定回数使用したあとに症状の改善が見られない場合に関する記載

その医薬品の適用範囲でない疾患による症状や、合併症が生じている可能性等が考
えられ、また、その医薬品の適用となる症状の性質にかんがみて、要指導医薬品又は一般用医薬品で対処できる範囲を超えており、医師の診療を受けることが必要な場合もある。
漢方処方製剤では、ある程度の期間継続して使用されることにより効果が得られるとされているものが多いが、長期連用する場合には、専門家に相談する旨が記載されている(本記載がない漢方処方製剤は、短期の使用に限られるもの)。
一般用検査薬では、検査結果が陰性であっても何らかの症状がある場合は、再検査するか又は医師に相談する旨等が記載されている。

 

 

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