登録販売者試験─試験問題の作成に関する手引き(平成30年3月)
第3章 主な医薬品とその作用
作成日付:20/02/14
更新日付:21/09/12
Ⅲ胃腸に作用する薬
2腸の薬(整腸薬、止瀉薬、瀉下薬)
1)腸の不調、薬が症状を抑える仕組み
1)腸の不調、薬が症状を抑える仕組み
腸における消化、栄養成分や水分の吸収が正常に行われなかったり、腸管がその内容物を送り出す運動に異常が生じると、便秘や軟便、下痢といった症状が現れる。
水分の吸収は大半が小腸で行われ、
大腸では腸内容物が糞便となる過程で適切な水分量に調整がなされるが、糞便には、腸内細菌の活動によって生じる物質や腸内細菌自体及びその死骸が多く含まれ、それらも便通や糞便の質に影響を与える。
腸の働きは自律神経系により制御されており、異常を生じる要因は腸自体やその内容物によるものだけでなく、腸以外の病気等が自律神経系を介して腸の働きに異常を生じさせる場合もある。
下痢が起こる主な要因としては、
急性の下痢では、
- 体の冷えや消化不良
- 細菌やウイルス等の消化器感染(食中毒など)
- 緊張等の精神的なストレス
によるものがあり
慢性の下痢については、腸自体に病変を生じている可能性がある。
便秘が起こる主な要因としては、
一過性の便秘では、環境変化等のストレスや医薬品の副作用などがあり、
慢性の便秘については、
- 加齢や病気による腸の働きの低下
- 便意を繰り返し我慢し続けること等による腸管の感受性の低下
などがある。
また、これらの要因が重なり合って、便秘と下痢が繰り返し現れる場合もある。
整腸薬は、
- 腸の調子や便通を整える(整腸)
- 腹部膨満感
- 軟便
- 便秘
に用いられることを目的とする医薬品であり、
その配合成分としては、
- 腸内細菌の数やバランスに影響を与えたり
- 腸の活動を促す成分
が主として用いられる。
止瀉薬は、下痢、食あたり、吐き下し、水あたり、下り腹、軟便等に用いられること(止瀉。瀉はお腹を下す意味。)を目的とする医薬品であり、
その配合成分としては、
- 腸やその機能に直接働きかけるもの
- 腸管内の環境を整えて腸に対する悪影響を減らすことによる効果を期待するもの
もある。
瀉下薬(下剤)は、便秘症状及び便秘に伴う肌荒れ、頭重、のぼせ、吹き出物、食欲不振、腹部膨満、腸内異常発酵、痔の症状の緩和、又は腸内容物の排除に用いられること(瀉下)を目的とする医薬品であり、
その配合成分としては、
- 腸管を直接刺激するもの
- 腸内細菌の働きによって生成した物質が腸管を刺激するもの
- 糞便のかさや水分量を増すもの
等がある。
整腸薬、瀉下薬では、医薬部外品として製造販売されている製品もあるが、それらは人体に対する作用が緩和なものとして、配合できる成分(瀉下薬については、糞便のかさや水分量を増すことにより作用する成分に限られる。)やその上限量が定められている。
また、効能・効果の範囲も限定され、例えば、下痢・便秘の繰り返し等の場合における整腸については、医薬品においてのみ認められている。
(a)整腸成分
腸内細菌のバランスを整えることを目的として、
- ビフィズス菌
- アシドフィルス菌
- ラクトミン
- 乳酸菌
- 酪酸菌
等の生菌成分が用いられる。
- ケツメイシ(マメ科のエビスグサ又はカッシア・トーラの種子を基原とする生薬)
- ゲンノショウコ(フウロソウ科のゲンノショウコの地上部を基原とする生薬)
- アセンヤク(アカネ科のガンビールの葉及び若枝から得た水製乾燥エキスを基原とする生薬)
等の生薬成分が、整腸作用を期待して配合されている場合もある。
日本薬局方収載のケツメイシ、ゲンノショウコについては、煎薬として整腸(便通を整える)、腹部膨満感等に用いられる。
【トリメブチンマレイン酸塩】
消化管(胃及び腸)の平滑筋に直接作用して、消化管の運動を調整する作用(消化管運動が低下しているときは亢進的に、運動が亢進しているときは抑制的に働く。)があるとされる。
まれに重篤な副作用として肝機能障害を生じることがある。
肝臓病の診断を受けた人では、使用する前にその適否につき、治療を行っている医師又は処方薬の調剤を行った薬剤師に相談がなされるべきである。
NEXT⇒第3章主な医薬品とその作用Ⅲ胃腸に作用する薬2腸の薬(整腸薬、止瀉薬、瀉下薬)2)代表的な配合成分等、主な副作用(b)止瀉成分
【第2類医薬品】セレキノンS
商品紹介
セレキノンSは、消化管運動調律剤トリメブチンマレイン酸塩を有効成分とし、過敏性腸症候群(IBS)の症状を改善するお薬です。IBSは、ストレスなどによって腸が過敏になり、腸管運動機能に異常が生じることで発症・増悪します。トリメブチンマレイン酸塩には、腸の動きを正常化する作用があります。そのため、下痢型、便秘型、混合型などのいずれの病型のIBSに対しても効果を発揮します。
●使用上の注意
■■してはいけないこと■■
(守らないと現在の症状が悪化したり、副作用が起こりやすくなります)
1.次の人は服用しないでください。
(1)医師から過敏性腸症候群の診断・治療を受けたことがない人。
(2)過敏性腸症候群の再発かどうかよくわからない人(例えば、今回の症状は、
以前に過敏性腸症候群の診断・治療を受けた時と違う)。
(3)就寝中などの夜間にも、排便のためにトイレに行きたくなったり、腹痛がある人。
(4)発熱がある人。
(5)関節痛がある人。
(6)粘血便(下血)がある人。
(7)繰り返すひどい下痢がある人。
(8)急性の激しい下痢がある人。
(9)排便によってよくならない腹痛がある人。
(10)嘔吐がある人。
(11)6カ月以内に、体重が3Kg以上、予期せず減少した人。
(12)大腸がん、炎症性腸疾患(クローン病、潰瘍性大腸炎等)の既往がある人。
(13)本剤又は本剤の成分によりアレルギー症状を起こしたことがある人。
(14)15才未満の小児。
2.長期連用しないでください。
■■相談すること■■
1.次の人は服用前に医師、薬剤師又は登録販売者に相談してください。
(1)医師の治療を受けている人。
(2)妊婦又は妊娠していると思われる人。
(3)授乳中の人。
(4)50才以上の人。
(5)貧血がある人。
(6)薬などによりアレルギー症状を起こしたことがある人。
(7)次の診断を受けた人。
肝臓病、糖尿病、甲状腺機能障害、副甲状腺機能亢進症
(8)大腸がん、炎症性腸疾患の家族がいる人。
(9)腹痛、便秘がひどい人。
2.服用後、次の症状があらわれた場合は副作用の可能性があるので、直ちに服用を
中止し、この添付文書を持って医師、薬剤師又は登録販売者に相談してください。
[関係部位] [症 状]
皮膚 発疹、かゆみ、じんましん
消化器 便秘、下痢、おなかが鳴る、口のかわき、
口内しびれ感、吐き気、嘔吐
精神神経系 眠気、めまい、倦怠感、頭痛
その他 動悸、排尿困難、尿閉
まれに下記の重篤な症状が起こることがあります。
その場合は直ちに医師の診療を受けてください。
[症状の名称] [症 状]
肝機能障害 発熱、かゆみ、発疹、黄疸(皮膚や白目が黄色くなる)、
褐色尿、全身のだるさ、食欲不振等があらわれる。
3.1週間服用しても症状がよくならない場合又は症状の改善がみられても2週間を超えて服用する場合は、この添付文書を持って医師、薬剤師又は登録販売者に相談してください。ただし、2週間を超えて服用する場合は最大4週間までにしてください。
●効能・効果
過敏性腸症候群の次の諸症状の緩和:腹痛又は腹部不快感を伴い、繰り返し又は交互にあらわれる下痢及び便秘(以前に医師の診断・治療を受けた人に限ります。)
●用法・用量
次の量を食前又は食後に水又はお湯でかまずに服用してください。
[年 齢] [1回量] [1日服用回数]
成人(15才以上) 1錠 3回
15才未満 服用しないでください
<用法・用量に関連する注意>
(1)用法・用量を厳守してください。
(2)錠剤の取り出し方
錠剤の入っているPTPシートの凸部を指先で強く押して裏面のアルミを破り、
取り出してお飲みください。(誤ってそのまま飲み込んだりすると食道粘膜に
突き刺さるなど思わぬ事故につながります。)
●成分・分量
成分(1日量:3錠中)
トリメブチンマレイン酸塩 300mg
添加物:エチルセルロース、カルメロースCa、ステアリン酸Mg、セルロース、ヒプロメロース、マクロゴール
●保管及び取扱いの注意
(1)直射日光の当たらない湿気の少ない涼しい所に保管してください。
(2)小児の手の届かない所に保管してください。
(3)他の容器に入れ替えないでください。
(誤用の原因になったり品質が変わります。)
(4)使用期限を過ぎた製品は服用しないでください。