北朝鮮が6度目の核実験強行か!? 国際社会に脅威与える狙いは?わが国の戦略・戦術は?
北朝鮮・朝鮮中央テレビは9月3日、午後3時の「重大放送」で、大陸間弾道ミサイル(ICBM)に搭載できる水爆実験に「完全に成功した」と発表した。
もしこれが事実であれば、北朝鮮による核実験は今回で6回目、昨年9月9日の建国記念日以来一年ぶりということになる。
このところ頻発しているミサイルの発射実験もさることながら、いずれも米国主導による米韓合同軍事演習に対し、北朝鮮の国家体制を維持することを目的とした行動であり、我が国に対する直接の侵略的意図がないとしても、ミサイルの我が国の排他的経済水域(EEZ)への落下、ならびに核を使用した実験は大変な暴挙であり、看過できるものではない。
北朝鮮の狙いは国際社会に対して、金正恩委員長主導による国家体制、ならびに核保有国としての存在を認めさせることである。「核なき世界」が人類の目指すところと言いながら、実際には核拡散防止条約(NPT)によって核の保有が認められた五大国(米、英、仏、露、中)や、インド、パキスタン、イスラエルといった実質の核保有国が存在するのに、国際社会が北朝鮮にだけ核の放棄を強く求め、制裁を行なっているという現状は、客観的に見ても理不尽であると言わざるを得ない。
弊会では旧来より、この不公正で不当なNPT体制に反対をしてきた。本来NPTは核が拡散しないよう、核保有国に対して、いかに「核を使用させないか」を話し合う場であり、独占的に核を保有することで大国然としている姿勢は、誤りと言わざるを得ない。まさに戦後体制の歪な現象なのである。これに対して、「窮鼠猫を噛む」ではないが、国際社会から追い込まれた北朝鮮が大国と対等な立場を主張するため、核を保有するしかないと考えるのは、もしも自身が同じ立場だったら、誰にだって分かる話であろう。
安倍首相は3日当日、米・トランプ大統領、ロシア・プーチン大統領と電話会談を行ない、会談後の会見で「米国、ロシアと現状認識を共有した」と述べたが、トランプ大統領とプーチン大統領が考える施策は全く異なるもので、相反すると言っても過言ではない。
北朝鮮による核実験の強行が、国際社会とって脅威であることには違いないが、米国主導のもとで制裁などの圧力の強化を行なったところで北朝鮮の態度を軟化させることが出来るのだろうか。むしろ何ら解決の糸口に結びつかない可能性が高いことは、安倍首相自身も充分承知しているはずである。
プーチン大統領は、今回の核実験を「国際法違反で平和と安定に脅威をもたらす」と非難しつつも、北朝鮮に対しては「政治的、外交的な手段で臨むしかない」と主張している。怒りや憎しみ、異質なものを排除する考えにとらわれず、国際社会に対して冷静な判断を求めるプーチン大統領の認識は至極まっとうである。
「北風と太陽」に例えられるように、冷たい北風を浴びせて無理矢理にコートを脱がせるのか、または太陽で暖めて自らコートを脱ぐよう仕向けるのか。日本は米国の意向ばかりを気にしているが、日本独自の対応を基本に、国際社会、とくに敵対的な国ではなく、影響を与えられる国と、対応を共有していくべきではないのか。
この局面で各国のリーダーに求められているのは、自国の国益を鑑みたうえで「いかに危機を回避するか」であり、他国より優位な立場に立つことではないのだ。
それにしても、日本国内のメディア報道は、ことさらに「危険」や「脅威」を煽りすぎである。ミサイル発射を知らせるJアラートが、まるで空襲警報であるかのように報じ、避難を強いられる地域住民の不安をかき立てている。EEZに落下したミサイルはいずれも、兵器としての殺傷能力は搭載しておらず、大気圏外を飛行するあくまでも「発射実験」である。報道が過熱すればするほど日本国民の反北朝鮮感情を煽り、ひいては日本政府や閣僚、首相の政治的態度にも影響を与えることになってしまうのだ。
今月7日には、ロシア・ウラジオストクで「東方経済フォーラム」が開かれる。安倍首相はプーチン大統領、韓国・文在寅大統領と首脳会談を行なう予定であるが、米国に同調した制裁一辺倒の施策ではなく、きわめて冷静に、国際社会と連携し、まず議論を尽くすべきであろう。
そして日本は独立国としての立場で、北朝鮮との外交問題は二国間で交渉するべきである。そのためには、ダイナミックな発想で米国をテーブルに着け、交渉するくらいの勢いで、安倍首相が平壌を訪問し、拉致問題を含むさまざまな問題について、金正恩委員長と直接交渉を行なうことも、国にとって最大の防衛になるのではないだろうか。