恣意的な「人道介入」は繰り返されるのか ―シリア情勢
現在内戦状態にあるシリア情勢について、ロシアのラブロフ外相は9日、記者会見において、
シリア国民の決定であるならば同国のアサド大統領の退陣を容認するとの考えを示しました。
外相は、欧米諸国の主唱する制裁強化やシリアへの軍事介入には反対の立場を改めて強調した上で、
ロシアの意向を反映した外交的決着がなされるならば、
アサド氏の処遇には拘泥しないことを示唆した形になります。
現代も戦闘が続くシリアに対して、欧米を中心に軍事介入を求める声があります。
こうした軍事介入は、昨年のリビアもさることながら、
1999年のNATO軍によるコソボ問題介入を思い出させます。
この時欧米は「人道的理由」の錦の御旗のもと、国連決議を経ずにコソボ問題に軍事介入しました。
この時は宣戦布告すらありませんでした。
要は当事国のユーゴスラビア(当時)を国民国家、主体として認めなかったのです。
これは、主権国家のみを主体と認める国際法への明確な違反であり、
もっと言えば近代以降のウェストファリア体制を根本から揺るがす大問題でもありました。
また世界中に人道問題が溢れる以上、
欧米の掲げる「人道的理由」も恣意的なものに過ぎませんでした。
その証拠に、コソボ紛争の後、当時インドネシア領だった東ティモールで
コソボに勝るとも劣らない深刻な人道問題ならびに民主主義への脅威が生じました。
この時、米国は東ティモールに軍隊を派遣したか。答えはノーです。
コソボ介入は結果として、恣意的な「人道介入」で国際法を破っても是とされるという
「悪き先例」を作ってしまったのです。
現在のシリアは混乱の中にあり、まずは国民の平穏な生活が取り戻されなければなりません。
しかしながらコソボの時のような欧米による恣意的な「人道介入」が繰り返されることには
民族派として反対せざるをえません(F)。
+++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++
第127回 一水会フォーラムのお知らせ
日時・平成24年6月15日(金)/18時30分開場・19時00分開会
演題・自立の思想~日本の行方~
講師・辻井喬先生(作家)
場所・ホテルサンルート高田馬場
; 3階会議室