ノルウェー無差別銃撃事件、隠された報道意図
22日、ノルウェーで発生した無差別爆破・銃撃事件が世界に衝撃を与えています。
我が国では、勝手ながら、こうした凄惨な事件とは無縁なイメージのある北欧の国で発生した事件であることと、
犯行の手口や、一人の人間が引き起こした事件としては尋常でない80人以上という犠牲者数が、
さらなる驚きをもたらしています。
犯人の男は、アンネシュ・ブレイビク容疑者(32)ですが、報道では「極右民族主義者」とされ、
こうした排外主義的な暴力行為の抑制のため、民族主義の暴走を取締り、監視しようとの論調が流れています。
しかし、奇妙なことに、当初ノルウェーの警察発表では、
ブレイビク容疑者について「キリスト教原理主義者」と発表されていました。
ところがその後、ノルウェーはじめ海外メディアも「極右民族主義者」と報道するようになりました。
しかし、「キリスト教原理主義者」と「極右民族主義者」とでは、話が違ってきます。
つまり特定の信仰に基づいて、異教徒や無神論者との共生を否定することと、
民族や共同体といった観点から、移民や侵入者を拒否する姿勢とでは、
排外的な表層は同じに見えても、根本の原理が違います。
したがって、ブレイビク容疑者を「極右民族主義者」という括りで、
欧州諸国で台頭している「極右」政党の政治活動と一緒にカテゴライズすることは不適切なのです。
ブレイビク容疑者が、特定の政党の党員という訳でもなく、政治活動の経歴もなく、
ネット上で暴力的で排外主義的な言説を行っていたネットウヨクのような男で、
組織的な犯行の線は薄いものと思われます。
また、仏では、「極右」政党の国民戦線前党首のジャン=マリー・ル・ペン氏が、
この事件とブレイビク容疑者と非難するコメントを発表しています。
このことからみても、欧州各国の民族主義やナショナリズムに基づいた「極右」政党の活動と、
ブレイビク容疑者の犯行や思想・信条とは無関係であること分かります。

これは、この事件で非常に重要な点ですが、なぜか「極右民族主義者」の一言で片づけられています。
これには、こうした事件を利用して、欧州で台頭する「極右」政党に対するネガティブキャンペーン的な、
なんらかの意図が働いているような気配があります。
ことに仏では、先の国民戦線の現党首であるマリーヌ・ル・ペン女史が、
来年の大統領選で当選しかねない情勢です。
躍進する欧州「極右」政党に対する、何らかの謀が、
この「極右民族主義者」というレッテルに現れているのではないでしょうか。