沖縄返還密約の存在を、当時の交渉担当官が認める
昭和47年の沖縄返還をめぐり、日米間で交わされた密約文書の開示を求める行政訴訟で、
当時の交渉担当官が密約の存在を認めました。

この問題は、沖縄返還時に返還後の米軍用地の原状回復補償、
つまり、米国が軍用などに接収していた土地を、
元の田畑などに戻すための費用償費400万ドル(当時のレートで14億円)を、
国際法上はアメリカが払うところを、日本が肩代わりするとした密約が交わされたとされるもので、
これまで、日本政府は密約の存在を否定してきました。
今回の訴訟ので、当時日米交渉の担当官であった吉野文六氏は、密約の存在を初めて認めました。
吉野氏も存在を否定した一人でしたが、平成12~14年に、
密約を裏づける米国文書が相次いで公開されて以降、
メディアの取材に対し密約を認める発言していました。
他に密約では、沖縄に設置されていた米短波放送施設の移転費を日本側が負担することや、
沖縄返還協定の額を大きく上回る額を日本が負担すること等とされています。
吉野氏は、当時の米国が景気の悪化のため、沖縄返還のための保障をするくらいなら返還しなくて良い、
との意見が米国議会で上がっていた当時の背景を説明しています。
今回の証人喚問は、原告の元毎日新聞記者、西山太吉氏等が申請したものです。
西山氏は、昭和46年に、この密約にからむ外務省の機密電文のコピーを入手しましたが、
入手もととなった外務省女性職員とともに国家公務員法違反の容疑で逮捕され、
執行猶予付きの有罪判決を受けた経緯があります。
そして、吉野氏はこの事件で、検察側の証人として密約を否定していました。
結局、浮かび上がった事は、わが国の領土返還に関する重大な問題が、
米国の景気の悪化を理由に、本来払わずに済むものを肩代わりさせられ、
さらに他の施設についても移転費用を負担させられるなど、
わが国の主権が如何に侵害されて来たかということを、改めて実感するものです。
今回の訴訟によって、沖縄返還密約に絡む様々な事柄が明らかになる可能性があります。
注視すべき問題です。