この時代は私の仕事も順調に回りだしていたので、事務所も父の会社の間借りから4Fの自宅と屋上のペントハウスに移す、という大移動とリフォーム工事が始まった。

 

●平面計画
 新居には来客も多いと予想されたため、接客にも対応できるセミフォーマルスペースと、家族だけが使うプライバートスペースに分け、来客時でも子供達がノビノビと過ごせる住いをめざした。具体的には、主婦の部屋であるWORK SPACE (KIT)を中心に、左をプライベート、右をセミフォーマルに分けた。セミフォーマルスペースといっても毎日来客があるわけでは無いので、ここを単なる応接間にせずにいかに有効に使うか、いろいろと考えた。

○セミフォーマルスペースをプライベートスタジオに使う
 建築設計という仕事は、事務所だけで行うのではなく、私の場合自宅で作業をすることも多い。妻もクラフトや洋裁を良くやる。そこで、ここを二人のスタジオに使いながら、来客にも対応する場としての活用を考えた。

 

● 玄関の靴の問題

 既存の玄関はこの広さの家にしては狭かった。これは、2戸分のスペースを1戸に使いながら、玄関ドアーは全戸共通にしたからだった。4Fの自宅でも悩んだ問題であったが、来客時などは玄関に靴が溢れる。特にこの時代女性のブーツが大流行しており、玄関が脱ぎ捨てたブーツで溢れる様子は異常に見え不気味でさえあった。
 そこで来客は土足可とし、家族は自室で上履きに変えるシステムにした。これによりパーティー時などに、女性のハイヒールに合せたファッションをスリッパで損なうこともなくなった。何よりの効果は下駄箱と踏込みが不要になったため玄関ホールが広くなることだった。姿見の鏡を大きくした結果、玄関ホールは2倍の空間に感じられた。

 

○掃除について
 日本の都市は道路鋪装が完備せれているため、土足でも床の汚れは少ない。床をコルクタイル貼りにしたため、一般的な清掃で充分で、土足のための特別な清掃は必要ない。広尾には外国人が多く住んでいるが、今では皆この方式を採用している