電気の実験や教材に興味津々のタロウ(小4)。
だいぶ前に学校から自宅にもらって帰った豆電球の教材を、以前からやりたそうにしていたのですが、改めて机上を片付けようとしたタイミングで、目についたその教材を自分で手に取ってみたくなった様子。
そこで私からタロウに勧めてみました。
「担任の先生が、一緒にやってくれるよ。」
「先生、タロウに会いたそうにしているよ。」
「先生と作業する、ということを課題にしてみない?」
タロウは自分ひとりでやりたそうでしたが、声掛けにかろうじて応じた風ではあったので、後日私と担任の先生とで日時を決めて、先生に会うことができるかを試してみることになりました。
本当は本人が先生と直接電話ででも会話できたらいいのですが、現状そんな感じでも無かったので、とりあえずこちらで勝手に設定して誘ってみる感じです。
こんな時、10月の宿泊行事での発言を思い返します。
「前のぼくなら、そう(参加)すると思ったから。」
タロウのこの発言の裏には、どんな気持ちがあるのだろう。
担任の先生との直近の面談でも、「タロウ自身がどうしたいと思っているのか」が今大事なのではないかという話になりました。
そんなことから担任の先生は、今はタロウと距離を詰めるのではなく、慎重に見守るスタンスでいるようでした。
私もこれまで、タロウ自身から発信されるものを基準にして、見守りとサポートを心掛けてきているけど、ここにきて先生とはは少し違うとらえ方もしています。
タロウは、以前と比べてそこそこ元気で、家の中ではやることが限られて困っている。
そして外出することを、以前よりも楽しめるようになりました。
今こそ背中を押して、学校との関り方を積極的に試したいと私は思っている。だってやっぱり学校は、タロウの目に映る一番身近な”社会”だから。大事な保育園仲間も数人います。
フリースクールでも、塾でも、形にこだわるつもりは全く無くて、それらのものもタロウ自身で考えることのできる選択肢に入るように、体験を増やすことも考えています。でもまずは身近な地域の学校を改めて検討したいのです。
そういう機会をなるべく自然な形で設けることが、今の私の最大の課題だと思っている。
家から出て、外で過ごす、関係を持つ、学ぶということを試したい。
今試さなくていつ試すのか、と。
でも、担任の先生にも同じような表現で私の考えとして相談してみたのだけど、先に挙げたように先生は、「本人がどうしたいのか」ということ、それに従って動くという考えでいるようでした。
まぁ、これまでも私からお願いして先生にはタロウに向かってさりげなくそれなりのボールを投げかけ続けてもらっているので、そういう流れからの先生の判断なのだろうと思います。
今こそ私はもう一歩踏み込んで刺激して欲しいと思うのですが…
その感覚が先生と私とで違うのがもどかしいです。
学校との関りを試す、ということで言うと、私は表向きでは、あまり学校とタロウの間に入りたくありません。
基本的にタロウと学校の問題であることから、間に入ることでタロウが私の顔色を伺ったりすることになるのは嫌なのです。
先生には、なるべく直接的にタロウに向けて何か声をかけてほしい。
もう少し、話をしてみるべきなのかな。
とりあえず、豆電球の教材を利用してタロウに先生に会うことを勧めて日時を設定してみましたが、1度目の機会は見送る結果になりました。
その日誘ってみたのですが、タロウは気が乗らない様子だったからです。
* * *
別の日の晩、寝る前の寝室でタロウから私にいつものように、他愛のない質問がありました。
好奇心とか興味からの雑学のような話題の質問です。
私は一言で簡単に返事をしながら、もし私にもっと知識があれば(時間も有れば、用意も有れば)、今の話題を膨らませて、とても面白い学びの機会になるだろうな、と想像しました。
モヤモヤと考えていたところ、少しして再びタロウから私に、
「江戸城ってあるの(現存するの)?」
という質問が有りました。
この質問なら私でも面白く説明できそう!
そう思って、手元のスマホでグーグルマップを開く。
石垣やお濠は残っているけど、お城そのものは残っていないんだよ。
じゃあそれはどこにあるのか。
地図、見る?
江戸って今の東京のことだと知っているよね。
日本の地図を見てみると、発展する都市には、だいたい立派な港がある。
(我が家の住む地域は港を中心に栄えた歴史があって、それを肌で感じる機会が度々あります。)
そういう都市は、昔から長い時間をかけて発展してきたんだ。
そう説明しながら、スマホのマップから、本州を中心に大阪、名古屋、横浜、そして東京の位置と地形を、順に確認していく。
よく見ると道路が、都市と都市を結ぶように、加えて都市を中心に放射状につながっているね。
これは物や人が活発に移動する為の、古くからの大事な道。
東京をよく見てごらん。
放射状になった道路の中心が緑色になっているね。
この中心の緑色がどんな場所かというと…
皇居なんだよ。
そしてこれが、江戸城のあった場所。
細い水色の部分が今も残っているお濠。
昔は徳川将軍の住んでいた場所で、今は天皇陛下が住んでいるところ。
(実際はもっとお互いの質問回答のやりとりが有りました。鼻息荒めの。)
「おー!!!!!!!!」
タロウがおもしろがる様子を見て、うれしかった。
そして私は言葉をつないで、こう言いました。
さっきも質問してくれたよね。
質問に対して、本当はもっといろんなことを話したかったけど、お母さんには、あまりうまく説明する自信が無かった。
勉強って言い方をするとプレッシャーかもしれないけど、本当はこういう風に、とってもおもしろいものでもあるんだよ。
タロウはいつも知りたいことがたくさんあるみたいだから、いつかまたちゃんと勉強する環境に戻ったら、きっとどんどんできるようになるんだと思ってる。
(はにかむような顔で「本当に?」とタロウ。)
タロウの今の生活の中にはそういうことを学ぶ機会が無くて、
さっきのように質問があっても、お母さんにはうまく説明できないことも多いから、
そういうことがお母さんは悔しいんだ。
と言うと、
「ぼくもイシヤク…」とタロウ。
一瞬「?」となったけど、僕も悔しいと言っていることに気が付きました。
ふざけてオウムのように返しただけかもしれせん。
それでもやっぱり、これを受けて私の今やるべきことはなんだろう、と考えてしまいます。
後日、タロウはひとりで豆電球の教材を開封し、組み立てようとしました。
私の仕事中に、留守番中のタロウからオンラインのチャットで「やってもいい?」と確認のメッセージがきたので、
「教材は先生がタロウにくれたものだから、タロウが好きすればいいんだよ。」
と答えました。
帰宅すると、テーブルの上に作業途中のキットが散らかっている。
どうやら組み立てることが出来なかったようです。
諦めてほしくないんですよ。
タロウが手を伸ばしたなら、その手を掴んでくれる人はたくさんいるはずなんです。(私以外で。)
それをタロウに理解してほしいのですが、どうしたらいいのでしょうね。
「前のぼくならそうすると思ったから」
前のぼくと、手を伸ばそうとするぼくの姿は、重なるのかな。
おまけ