上越のこれからの一品になるか!? 米粉製品の広報戦略
《はじめに》
米粉製品の普及は、マスコミで頻繁に取り上げられている割に進んでいない、そういう感触がある。とりあげられ方が「キワ物」である限り、広がりを期待することは出来ない。
《目的》
米粉製品が当たり前に使われる、食べられる日常を実現する広告広報展開戦略を打ち出す。
「米や小麦粉はCMがないのに買われる。米粉もそうなるにはどうしたらよいのか」
《これまでの米粉普及経緯》
日本では米の消費が1963年度の年間1341万トンから近年は900万トン台まで落ち込んでおり、一人あたりの消費量は1962年度の118.3kgから2005年度には61.4kgと激減している。
このような状況のもと、行政や関係団体は消費拡大を目指した取り組みを行ってきた。従来からある、煎餅、団子、落雁、大福餅、さくら餅などの和菓子製品だけでは消費拡大を期待することは難しく、小麦粉グルテンを添加してパンや麺などを量産する技術が確立されたことによって米の消費拡大への期待が高まったが、10年以上普及しなかった。理由は米と小麦の価格差によるものであった。一部には米粉製品を学校給食に取り入れる自治体もあるが、技術的問題により品質にばらつきがあるなど急激に普及するまでには至っていない。
しかし近年、麦の国際相場が「中国やインド等での食糧需要の増大」「世界的なバイオ燃料の原料としての穀物等の需要増大」「地球規模の気候変動の影響」、といった構造的な要因に加え、輸出国における輸出規制に伴い大幅に上昇しており、小麦粉代替品としての日本国産の米粉が脚光を浴びることとなった。
小麦価格高騰を受け、農林水産省は代替原料として米粉の増産支援に乗り出すこととなり、2009年4月に米穀の新用途への利用の促進に関する法律が成立した。
《現状の課題点 米粉の5つの「ない」問題》
1.米粉=こめこという言葉自体が認知されていない。
2.米粉製品に触れる機会が少ない。
3.米粉製品への、流通・卸・小売り業界の意気込みが高まらない。
4.米粉をメジャーにする広告展開が足りないか、認知されていない。
5.実際の食味の評価が高くない。
この5つの「ない」をどう克服していくか。
《目標》
「米粉っておいしいね!」家族みんなが大好きな米粉製品の実現
「我が家の定番食品化」を! 親しまれる・愛される商品を開発する
「えっ米粉が入っているの?」
知らないうちに広がっている米粉製品の実現
消費者の預かり知らぬところで業界に浸透させる
商品の広告戦略は、結局は、いかに消費者と触れあい、親しまれるかにある。
「出会い」の機会をつくり、「親しみ」を継続する
《戦略》
※課題点は、そのまま戦略起点となる
「1.米粉=こめこという言葉自体が認知されていない」からの戦略
(課題)
「こめこ」という響きが良くない。品格がない。
またこの漢字をどう読むかも混乱している。べいふん、べいこなど、亜流の読み方がマスコミによって為されることはさすがに減ったが、一般には「こめこ」という名称は、さほど認知されていない。「こめこって読んでいいの?」程度の認識である。
小麦粉と言った場合、消費者は小麦粉100%であることを疑わないし、実際の商品もそうである。ところが米粉は、後述する食味の課題もあり、100%米粉でない場合も多い。それでいて「米粉」という名称を使うことは「表示法」上も問題がある可能性がある。
(戦略)
この名称を変えるか、そのままをメジャーにするかである
名称を考察する
「こめ粉」(一部ひらがなとする)
「こめこ」(ひらがな表示を徹底する)
「米粉」(必ずルビをつける)
「ライスパウダー」
お薦めは 「こめ粉」
‘米粉(こめこ)’という言葉を徹底的に売る!
こめ粉くんゆるキャラをメジャーデビューさせる。
「2.米粉製品に触れる機会が少ない」
「4.米粉をメジャーにする広告展開が足りないか、認知されていない」
からの戦略
(課題)
米粉製品は、製品になったこと自体が今でもニュースになる。つまり、物珍しい存在に過ぎない。悪く言えば「キワモノ」あつかいである。
「深く静かに潜航する」必要がある
敢えて米粉と声高に言わない。いつのまにか小麦粉にとって替わる存在になっていた…消費者にかかわりなく、業界全体での戦略となる。1企業体が、出来る戦略ではない。
「派手に目立つ」必要がある
米粉はおいしい、米粉食べましょうと消費者にアピールし続けて「愛される、親しまれる存在」まで持っていく。売り場にあったら「いつもどおり買っておかなくては・・・」と手に取ってもらえる親しみ感を醸成する。
(戦略)
マス展開と口コミ
タイアップ
旅番組やグルメ番組とタイアップし、米粉製品をタレントに食べさせる。
時に番組制作費一切を負担する必要がある。とはいえ、1000万円程度の負担でCMを超える効果が期待されるため、いまだに有効な手段である。やはり1企業体ができる戦略ではない。
プロダクト・プレイスメント(Product Placement)
映画やテレビドラマの劇中において、役者に特定の商品を絡ませる。現在はCM飛ばし等の流行により、テレビ番組だけでなくCMの効力そのものが急降下している為、新たな宣伝手段として日本でも活発化し始めた。
口コミ
インターネット口コミをマーケティングに利用する手法。その一つが消費者形成型メディアと呼ばれるCGM (Consumer Generated Media)という考え方である。背景にはブログやSNSの爆発的な普及と、企業の利害関係が生じにくい生の声による判断をする人の増加が考えられる。
多くの新サービスが特定カテゴリー+口コミという形で生まれている。
かつての消費者は文字通り企業から提供される商品やサービスを金銭で消費するだけの存在であったが、市場が成熟していくにつれ、消費者でも確かで肥えた目を持つ消費者が生産者並の知識を持ち始めたことに由来する。口コミサイト、Q&Aコミュニティ、ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)、ブログポータル、BBSポータル、COI(Community Of interest)サイト等がこれにあたる。
バズチューニング(Buzz Tuning)
CGMの一種。特定の企業や広告代理店が商品宣伝のために、宣伝対象商品に関連するBBS(電子掲示板)に一消費者のふりをしてその商品に肯定的な投稿を行う。2000年代半ばより、一部の企業により実施されている。商品購入検討段階においてBBS上のクチコミへの参照依存度が高まる中、極めて有効なネット広告手法の一つ。
「米粉倶楽部」他米粉普及を図る各種団体との連携
http://www.syokuryo.jp/komeko/index.html
「5.実際の食味の評価が高くない」からの戦略
(課題)
日本人は誰もが、ご飯のおいしさを知っている。炊きたての新米の湯気、香り、食感、甘味、喉越し…普通に炊いたご飯が最高と言うイメージが出来上がっている。そこに米粉が斬り込んでいくのは並大抵のことではない。
「あのおいしいお米をわざわざ粉にして・・・」「しかもおいしくないし・・・」評価は低いと言わざるを得ない。
(戦略)
話題を呼ぶアイデア商品をだす
米粉ナン。「味にうるさい日本人、満足100%のナン」
「カレーにナン」ようやく広がってきた状況。このナンを米粉でつくる。米粉パンの応用である。「ナンはおいしいけれど、パンにカレーみたいで、何となく物足りない」「インド中近東の貧しい感がどことなくある。ぱさぱさのパンって感じ」という消費者心理を衝く。
お米のもちもち食味、腹もちのよさを持つ米粉ナンは、消費者の満足感を得る可能性が高い。
米粉に砕いた米を混ぜて焼きあげ、ご飯の食味を加えるアイデアも有望。
子どもたちをターゲットに、安心を売りにする
輸入品が多く出自の不安な小麦粉に対し、米粉は国産100%。かつてくず米を使っていた事件はイメージを著しく損ね、いまだ消費者の心のどこかに引っ掛かっている。それを踏まえ、良質な米粉使用をはっきりと打ち出し、「安心な国産100%、しかも良質なお米だけを使いました」をうたい文句に、製品を展開する。
「子どもに安心なものを」と考える若い主婦層がターゲット。このF1層を得れば、年配主婦等他の層は必ず引きずられる。
徹底した「給食普及展開」を図る手もある。