15.4.4ナースナイトレポート-1 | イッセー尾形・らBlog 高齢者職域開拓モデル事業「せめてしゅういち」

15.4.4ナースナイトレポート-1

ナースナイト

2015.4.4 楽ちん堂カフェ

 

4月1日から「せめてしゅういち」もオープンし、お花見も無事に済ませた楽ちん堂。4月4日夜は、現役ナース2人による、現場そのもの芝居です。現場がどれだけおもしろいかは、センセーズで立証済み。口をへの字にして耐えているいろんな現場を、もし天使の羽と天狗の隠れ蓑でもって地上50センチくらい浮いて見ることができたなら、大体が可笑しくて仕方がないと思います。そういう視点から見なおして自分たちの日常を優しく笑い直そうよ、というのが、Mワークショップの一つの目的。私言うところの、日常の再受容ですな。

 

お医者さん、病院、クリニック、検診。これは慣れた場面ですが、なぜか緊張が伴います。必要以上でなく必要ぴったしの口角上がり具合でニコッとはされます。しかし、絶対そこからはみ出さない笑顔。胃カメラ飲むときに、必要以上に笑かされたら困るけれど。お医者さんの前に出たら、自分がツッコミそうになったり、ボケようとしている言葉を3回に2回は飲み込みます。日常ツッコミ過ぎということですが、それだけでなく、そこはかとない不安感に、相手も笑って欲しくなるのですね。

 

それと、日々の暮らしの中ではぜったい人に見せることのない状態をさらして平気というのが病床。それに慣れるある種のなんでもなさが必要です。摘便だろうと、下の清拭だろうと、恥ずかしくないようにパターン化されていきます。それを淡々とこなすナース。不思議なことに、日常的な若干崩れた笑顔や冗談言うナースって、むしろちょっと不安になります。病院にいる自分を日常と地続きだと思いたくないのでしょうか。

 

ということで、普段は近隣家族のナオさんと、半分スタッフのトヨコの2人が二人そろって、長身足長のナース姿を披露します。芝居が始まる前は、やや照れてるところが、かわいい。でも、カフェスペースの小さな置き舞台にあがったとたんに、口角への字、とっても無機的なベテランナース。舞台というトポスの魔法を感じる瞬間です。

 

始まり始まり

 

トヨコ、上手から台にあがりただじっと立っている。口角への字気味なれど、声は拒否的でない空気を作り、

確認のため、お名前いただきます。

オオツカ カスミさんですね。

アルコール大丈夫です?

ハイ、少しチクっとしますよ。

と、間合いがあまりにも決まりすぎて、消毒用アルコールの匂いがしてくる。順番待つドキドキ感も。右手が血液を入れたアンプルを器用に振る。入れ替えて、もう一本。針を抜く。中年のご婦人の白いファットな腕が浮かぶよう。

はい、揉まずに5分間押さえていてくださいね。

 

無表情。

 

確認のため、お名前いただきます。

コマツダイスケさまですね。

脈をさぐり、ポイントを確かめる。

アルコールは大丈夫ですね。

ハイ、チクっとしますよ。

手首が優雅に振られる。

 

無表情。

 

そして、また同じように繰り返される。お名前だけが違う作業。この確認がなければ、製品になって箱詰めされてしまうような画一性。というか、ここでは名前も製品になっていくような感じ。

 

ナオさん

 

病棟での作業らしく、口はへの字ではない。かといって笑顔でもない。これは日常ではどんなときの表情だろう。相手との関係を認識し、友好的な関係を維持しつつ、自分は出さない。

 

今日の体重の計算しますね。今日は2.4増えてますね。じゃ、お水引きは・・・・

ええ、ラキソレオン?はい、処方してもらうようにしますね。それでは、もう少々お待ちください。

 

トヨコ

先と同じ繰り返し

はい、チクっとしますよ。

揉まずに5分押さえてくださいね。

 

 

ナオ

おはようございます。体重の計算させていただきますね。

今日、すごくいいですね。1.2の増えですね。食欲ありますね。

じゃ、1.2のお水引きさせていただきますね。

 

はい、ネスク、30ミリいれさせていただきますね。

 

トヨコ

お名前確認・・・・・

アルコールは大丈夫ですね・・・・・

 

ナオ 

なんですか。なんでニヤニヤするんですヵ。

はい、体重。

今日は4キロか、これはお水引けないかな。こないだ足吊っちゃったじゃないですか。

足吊ったら呼んでくださいね。

 (同僚に)ちょっと、待ってて

 

トヨコ

ハイ、グーパーしてもらえますか?

 

ナオ

お・は・よ・う ゴザイマス!(大声で患者の耳元に口を近づけて)

じゃあね、計算、待っててくださいね。

増えてるのが少ないんですけど、お通じ出てますか?

お・つ・う・じ?

出てるなら大丈夫です。

 900のお水引きしますからね。順番までちょっとまっていてくださいね。

 

(2人一緒に舞台からはけて)

延々とした繰り返し作業。ストレスとも言えるかれど、でも、これ、つまらないというより、こういう作業に凭れてほっとすることもあるのじゃないかと思う。繰り返しといっても、単調でもない、相手がいる。少しこちらの具合が悪くても、決まり事の殻に凭れて仕事はできる。そういうこともあるような気がする。カウンセラーしていると、ナースのお母さんが子どものことで相談にくる。専門職に相談することに慣れているから、カウンセリングの敷居が低いということもある。数ヶ月話しを聞いていると、仕事に行っている間が一番楽、と異口同音に言う。仕事の殻にもたれながらも、責任と変化に対応する仕事。結構女はこういう仕事嫌いじゃない。

大体、育児と家事がそうだ。大変だ毎日の繰り返しだ、と言われるし、そういう面もあるけれど、朝起きてやることがはっきりしていて、身体を動かして、こなして。救われることもある。かといって、何か歯車が狂うと、たまらなくつまらなくなる瞬間も訪れるだろう。それも家事育児も同じかもしれないが。どちらにも振れないように、知恵でもって表情と態度を決めているように見える。

次のシーンは、患者の容態が変化するシーン。これがまた、同じ声のトーンの延長で作業されるところがすごい。