Mws#47-3 二子玉芝居子どもも出たよ-3 | イッセー尾形・らBlog 高齢者職域開拓モデル事業「せめてしゅういち」

Mws#47-3 二子玉芝居子どもも出たよ-3

Mws#47-3 二子玉芝居子どもも出たよ-3

 

 

  10 祖母と母と孫

 

ほっぺ真っ赤な祖母。丸々と太った赤ん坊を抱きしめています。もう、ほおずりしっぱなし。隣にはキャリア風のしれっとした娘。祖母は新潟弁の明るい声音でつべつべ言います。

あんたが最後にこの子抱いたのいつ?あんたが知ってるとき、体重5キロだったでしょ。今、8キロもあんだよ。

「甘やかし過ぎなんだって」

はは、この間わし保健婦さんに怒られちまった。酒の粕板みたいになったのあんだろ。あれ、焼いたの食べさせたら、おばあちゃん、赤ちゃんも酔うんですよって。ははは。

この子なんだってよく食べるんだあ、ははは。

お前、養育費もらってんのか。

「いらないって言ったの。この子、私だけの子だし。8時から夜中まで人の倍働いてるの。外資系って言ったって、イラン人とトルコ人が上司。上司の子どものプレゼントまで買いに行くのが仕事なのよ。で、5時に終わったら、バーで働くの。この子が大きくなって、私立に行きたいって言ったら出してやる。ピアノ習いたいって言ったら払えるよう。お金貯めるんだ。で、自立してなんでも一人でデキる子にするの」

はー、お前、抱いてみ?

ほれー、あいやー、泣いてまったでねえか。

 

と、娘に母親らしくさせたいのか、自分で孫を育てたいのか。

 

もちろん、祖母を演じているのは、赤ちゃんの実のお母さん。普段はそれほど可愛がりばかりではすまされない母ですが、もう、祖母役にはまって、なめんばかりに可愛がる演技がすてきです。子どもとお母さんのユニットはとても演劇的です。

 

七五三幼子のままでおればよい

 

12 CM家族写真

 

このシーンだけは、衝立の前面から登場です。スタジオにやってきた家族という設定。本当の家族を核に、少し子どもは増えてます。5人います。中でも2歳?のよしきの動じないところが、もうすてき。子どもって見てるだけで幸せになる。子どもの存在そのものを演劇化した場面です。

家族の写真がCMに使われるかもしれないという設定。小さい息子はわけもわからず、姉たちを見て、いいお顔したり変顔したり。その一生懸命さにカメラマンも客も幸せになります。最後にポーズをキメて股のぞきする姉たちに気づき、このチャンスを逃さじとばかり、おしりめがけてキックしたり、叩いたりするよしきに爆笑、涙付き。

 

福だるま胸に抱えし希望(のぞみ)かな

 

13 ベリーダンス母娘

 

ベリーダンスを踊る母。本当の娘さんもお母さんと踊るのです。らくちん堂では先日、2人のダンスを見る夜も設定されました。そんな2人をどうやって演劇として見せるか。親子を見せるには、演技はいりません。ただ、親子がいることを客が受け入りやすい設定をして、舞台に押し出せばそれでいいのです。そんな簡単なことですが、そのためには、親子家族がいつもの関係性のまま、そのまんま舞台に存在するという実は難しい課題があります。この日は、舞台を含むスペース全体を家族が一緒にいる場所にしてしまったことによって実現しました。子どもたちは、芝居の最中も、仕切りの向こうの窓に面したスペースで、静かにのびのびと過ごしていました。大声を出すべきではないとわかっていて、でもみんながいて嬉しくて仕方がない。呼ばれたら舞台に出ますが、舞台から降りたら、それはそれで楽しい時間。

お母さん、ベリーダンスを踊り始めます。やがて気持ちが昂ってきて、至上の存在との交流を表現し始めます。そこに娘も普段着のまま踊り出します。

 

空にはね、神様がいて、そして身体におりてきて。

水をね、かき分けてかき分けて、また空に帰っていく。

 

と娘に伝えるのか、ただつぶやくのか。2人は連れ舞に舞います。音楽も流れてきて、お母さんは自由に踊り出しますが、と同時に娘の動きも自律的に変化していきます。

 

鶴舞いてやがて鎮まる夕べかな

 

14 大道芸

 

赤い鼻のピエロが登場。実は2番めのシーンで叱責する手足の長い上司を演じた中島さん。若いころ大道芸で十分に食えていたそうです。でも今日はエア芸で見せます。

お座布席にはそのころ子どもたちがすずなり。舞台から

はい、近寄ってね、と呼びかけると、お客さん本当にわやわや近寄ります。

 

あー、近すぎ!近すぎ!

 

と距離を取らせて

トランプ手品を披露します。見事に広げたら、あれ、なくなっちゃった。

はい、拍手!

 

手品はエアですが、お客さんはリアル。反応がいいです。

 

玉と取り出し、一つ放り上げてゆっくり取る。次に一個増やして、また一個増やして。決めポーズ。どんどん調子づいてきて、危険な芸に突入。ナイフでお手玉。

 

近寄ってくる子どもたち、というか、さっきからまつわりついているお客さんもいるのですが。ピエロはさばきながら、ナイフ芸に移ります。この頃には見えないナイフにおびえてみせるノリのよい子どもたち。

やんややんや。

 

居並びて子ばかり見入る里神楽

 

これにて終了です。

たくさん集まった子どもたち、幼児も赤ん坊も。ベビーカーの中から芝居を見ていた子も何人かいます。1時間半の間、泣き声は一度も聞こえませんでした。大人が興奮せずに楽しんでいると、子どもはとても落ち着くものなのですね。終わっても、久しぶりの挨拶やお茶を呑むやら。さっきまで、多摩川に向いた窓からは、冬の夕日がさしていました。

今夜は双子座流星群。楽しかった半日。夜にはなにかを寿ぐように星が降るでしょう。どうぞ、このまま子どもたちの平和が続きますように。

 

 

芝居観る一時ありて師走かな