大船渡ワークショップ2015開催決定 | イッセー尾形・らBlog 高齢者職域開拓モデル事業「せめてしゅういち」

大船渡ワークショップ2015開催決定

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去年のワークショップレポートNPOらららの公演レポート欄におりこまれています。
また、このBlogの元旦にも一部投稿しています。下記に引用しました。
どうぞ、東北に見に来てください。参加してください。
泊まったホテルの朝ごはんがすごく美味しかった。

 

 

大船渡リアスホール  8月22日 

それにしても、今日の舞台上の演技者は、客が笑おうとそうでなかろうと、なんだかとても自信満々。慌てる気配がありません。今回のワークショップの稽古は、3日目あたりに大枠ができあがり、みな大人の大はしゃぎという感じで進めてきたのです。はしゃいだテンションも一巡りして、本番の前日と当日本番までの稽古では、雄三さんの細かい駄目だしをきちんと受け止めて真剣でした。作り上げたものを客からどう見えるか、そこを指摘されて、うまく演じられないと首をかしげながらも、なんだか楽しくてしかたがないという参加者。大体、今度のワークショップでは、競争とか比較ということがなかった。それと、みな舞台で演じているよりも濃い人生と選択を経て、なんとなく、ワークショップに流れ着いたのでした。振り返れば、舞台なんてちっとも怖くない。

雄三さんは、それを「何かを選んだ人」と呼びながら、シーンを作っていきました。
選ぶといっても、3.11がすべての人の共通の何かを編みこんでいます。ボランティアにきてとうとう貯金が底をついたから、一たん中部地方の実家に帰る人。青年期に気を病んだ子どもを見て、首都圏から家族揃ってリアス海岸の故郷に帰って来てくることを両親が選び、一気に元気を取り戻した人。ここらで生まれ育って、大型洋服店で販売のしごとに単身赴任中の人は、4日間の夏休みを隣県の家族のもとに戻らずに、ワークショップでニコニコしています。都会の恵まれた環境で育ちながら、企画されたような学校教育に背を向けて、ボランティアとして来て、そのまま腰を据えている人。豊かな子ども時代ののち、父を失い、個人事業主として働くことを選んだ人。暖かい街の自治体から助っ人として2年間こちらで働くことを希望した人などなど。

ここに住んでいない人も、福島、宮城、岩手の内陸と、東北の当事者です。まるで、1人1人を描いていくとそのまま映画ができそうなくらい、日常がたっぷりしています。自分たちの人生を稽古で問わず語りに語り、それを呑み込むように聴いた森田雄三、清子、ピアノも担当したスタッフの尾辻。わたしが参加した3日目には、自立しながらも強いコミュニティが成立していたのです。どおりで、みんなの人格がすっきり立ち上がっていたはずです。

6 とあるバーで

下手落ち着いた声の男性と、テンション高めのサラリーマンが止まり木で各々酒を飲んでいます。やがて、酒を注いでくれた酒場のママも姿を消して、間を図るように、上手の男性が相手に話しかけます。どうやら小学校の同級生の兄さんと分かったよう。しかも、お向かいに住んでいた。そうと分れば、近所のあれやこれやを次々とお互いに、「あれ、知ってる?」と挙げていっての楽しみになります。校庭のでっかい滑り台は大雨降ると着地点が水浸し。尻の濡れた気分。校舎から飛び出た形のトイレの匂い。おもちゃといえば、店の前にちゃちなゲーム機があった、まるや。実はこのシーンは少し実話です。稽古のやりとりの最中に、子どもの頃の話をしていたら、なんと同級生の兄貴だとわかった、もうすぐさま、稽古の衆そっちのけで、2人で子どものころの近所の白地図をぐんぐん色塗りしていったのでした。1人は宮城県でお店を出していて、数年前にここへ帰って来たのですから、本当に不思議な偶然。お互いが生き延びてここで出会ったことは、3.11のあとでは、それだけで恩寵なのでしょう。とても大切なエピソードとして、真ん中につかうことになりました。待機している出演者が話題を引きとり、各々自分の子どものころの家の近所を描写します。

駅から下りてきて、歯医者さん。歯医者に見えないモダンな建物で、

前の路地を出て、木造のガタガタ言うガラス戸の家が、せんべい屋。内側からだと簡単に開いた。

家の前に車一台通る道。真っ白な平屋の床屋。くるくる回るのがあって一部壊れてた。向かいが大売り出しのビラをいつもたくさん貼り付けたふとん屋さん

大家さんの家には土蔵があって、藁とか組んだ竹とかが見えてた。雨宿りしたら背中に土くれがついた。

遠回りして川沿いの道を行って、古い木造の家の塀になぜか手をついて歩く。とげがささるのに。

芝居を演じる人も作っている人も、観客も、それぞれが自分の育った街の匂いや手触りを思い出す時間。三陸にはすっかり様変わりした海沿いの街が広がっています。

再びやりとりは、舞台上に戻ります。上手男性が

小さいときよく海に釣りに行ったなあ。でも、ずっと海見てたな。

引き取るように、同級生の兄さんは、

嫌なことがあると海に行って、じっと岸壁に座っとったなあ。何時間でも。

2人の目の前には穏やかなリアスの海が広がっているのでしょう。

そこへ、バン!と驚くようなピアノの音が響きます。


大船渡ワークショップでは、つなみの来た海を避けて何かを表現するわけにはいきません。それにしてもまあ、3日目には参加者上機嫌。自分たちが、一人一人全く異なる動機や背景で、今この小さな港町に住んで活動していることを表出してみたところ、なんだかとってもフリーになったのではないかと思います。自分が自分であること。そして、なおかつだれかと一緒に活動すること。それがとても愉快だと改めて気づいたのではないかと思います。この愉快さ、爽快さ、は他の開催地では、また少し趣きが異なります。そこがまた、興味の尽きないところです。
本日はここまで。どうぞ、これからもお暇なときに、尋ねてみてください。次は、どのように稽古するのか、お見せしましょう。