北神WS 本番初日のあらすじです 1 | イッセー尾形・らBlog 高齢者職域開拓モデル事業「せめてしゅういち」

北神WS 本番初日のあらすじです 1



8月3日に神戸 北神区民センターで行われたWS本番初日の様子です。




 案内人が登場して、この地、北神の説明をする。


 「神戸っていうから、海が見える所かと思ったら、電車は地下にもぐり、後は延々山の中。そしたら、鉈で山肌をえぐって、そこに住宅や商業施設が造られた新しい町が出てきたんです」


 案内人は「町作りコンサルタント」という。この新興住宅街の町内会に顔を出す。



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出席率は悪くない町内の集会所。


 「うちの『山木』っていう表札に線を一本足されて『山本』にされてたんですよ。どうやら子供のしわざではないようなんですよ」


 「うちの庭、ぶどうの木を植えてるんですよ。でもやっと出来たぶどうを誰かに食べられてたんですよ」


 夜更けなのに、集会所の片隅に幼子が遊んでいる。


 「あの子達、お父さんが居なくって、お母さんが仕事だから、あっちこっちの家を泊り歩いているんですって」


 「この間かき氷食べるときに、お財布に3万円入っていたんですよ」


 「みのりちゃん、エリーちゃんこっちおいでー」




子供達が入って来る


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「いつもどうやって遊んでいるの?」


「家族ごっこ。妹がお母さんで私が赤ちゃんでご飯を食べるの」




母親登場




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 「どーもーすみません。うちの子供がおじゃまして。あのね、今、会社では八月戦なんでね。契約一本でもとって来ないと『なにしとんねん。窓から帰れや』とか言われちゃうんですよ。休んでる場合ちゃうんですよ。月々5000円の保険料も払えないし。まー皆さんにとってはなんでもない金額でしょうよ。でもね、私達にとっては生きるか死ぬかの5000円ですよ。はいはい私なんかおじゃまですよ。はい邪魔ものは帰ります」






 案内人は、この新興住宅街の浮上しない問題点を、中学教師に演じてもらう。




 学校に呼び出される母親。



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先生「昨日、ちえみ、普通に家に帰って来ましたか?」


母「え、いつも通り帰って、御飯食べて寝ましたけど」


先生「いや、あのね昨日三宮で補導されたグループがおりましてね、その中にちえみも入っていたんですよ。実はねパンツ売ってたんですわ。お母さんちょっと一回ちえみと話してみてくれませんか」






 娘と話す母親。




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母「あんた昨日どこで何してたん?」


娘「……」


母「あんた口ついとるやろ、なんか言えへんの?」




長い沈黙




母「あんたがパンツ売ってたって先生から聞いたで。なにしてくれてんの?」


娘「何がいけないの?パンツ買って喜ぶ人がいて、お金をもらって私も嬉しい、それでええやないの!み  んなやってることやで!やらなかったら仲間外れにされるねん」


母「あんた、しょーもないな。みんながやってるからやるって。あんた自分がないん?そんなことで仲間外れにされるの怖がってたら社会に出てからはもっと大変なことが待ってるんやで」


 激しく言い返す娘は、母親の言いなりにはならない。






 中学の教師により、別の家庭の非行が明らかにされる。


 

 不良上級生に恐喝されていたタカヒロは、家の金を持ちだしていたが、母親のお金の管理が厳しくなり、小学生から金を取るようになった。プレミアが付いているカードを借りて、売っているという。小学生の親から中学校に苦情が持ち込まれたのだ。




 タカヒロと話し合う母親。




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母「タカヒロ、先生に聞いたで」


息子「……」


母 「タカヒロ、お母さんの目を見て話そ。


息子「……」


母「ごめんね、私があなたにお父さんの悪口や不満をぶつけ過ぎたね、ごめんね」


息子「ごめんなさい。これからは自分の食器も片付けるし朝もちゃんといい子になります」


母親はハラハラと涙を流す。


息子「.…….お母さん、ごめんなさい」




 


 案内人である街づくりコンサルタントは、この町から市会議員を送り出すことを提案する。選挙により、町を結束させるのが狙い。地域の人たちが参加する祭のようなもの。




 町内の主婦の立候補が決まる。




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「私は一般の主婦で市政のことは詳しくはわかりませんが、だからこそこの主婦の声を政治の世界へと届けたいのです!」


 そのまま、選挙の宣伝カーからのマイクの声となり、演説会となる。




(暗転)








家庭風景、1 (平田家)




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妻「今度のあの子の誕生日に何が食べたいと聞いたら、『お父さんの好きなもの』と言うんですよ。あなたが食べたいものはなんですか?」


夫「なんでもいいよ」


妻「なんでもいいよじゃないんですよ。何か一つくらいないんですか?」


夫「んー、君が作ってくれたものはなんでもいいよ」


妻「そういうことじゃないんですよ。例えば、暑いけどおでんが食べたいとか。そういうの無いんですか?」


夫「じゃーおでん」


妻「それ今私が言ったことじゃないですか!」


夫「ちょっと、おしっこ」


 夫はトイレに立つ。


夫「トイレにきれいな花飾ってあったね」


妻「いつも飾っていますよ、あなたが気付いてくれないだけでしょ。なにか食べたいもの思いつきましたか?」


夫「ビフテキ」


妻「ビフテキってお店で食べるときに使う言葉でしょ。なんですか外食がいいって言うんですか」


夫「君にまかせるよ」






家庭風景、2 (かけい家)



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妻「何で黙ってるん?私の何がいけないん?あ、アイロン?そうそう私Yシャツかけるの苦手やねんけど、それでも丁寧にやってるつもりやで。あ、こうやって私が先にべらべら喋るのがいけないねんね。分かった。あなたが喋りやすいように今から少し黙るね」


夫「……」


妻「なんでなん?何がいけないん?」


夫「僕が一話すとしたら、君から10かえってくるじゃない。そういうところが好きなんだよね」


妻「えーえー。ホンマ?あのなー実はな私パックとかちゃんとして肌のケアすごいしてるねん。でもなあなたの前でしたらな、あなた幻滅するかと思ってな、それでな……」






家庭風景3 (辻家)




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妻「何でお弁当のおかず食べちゃうのよ!」


夫「なんやねん、明日のお弁当なかったらコンビニか何かで済ませるからええねん。そんなことでぐちゃぐちゃ言うな」


 泣きだす妻。


夫「いや、あの、すまない」


 泣きやまない妻。


夫「ごめん、あなたのことは大事と思っているよ」


 泣きやまない妻。


夫「好きやねん。愛しているよ」


妻「じゃープロポーズの言葉覚えてる?」


夫「おう。覚えてるよ」


妻「言ってみてよ」


夫「一緒に暮らそう」


妻「全然違うやーん」。泣きだす。


夫「……」


妻「プロポーズした場所覚えてる?」


夫「覚えてるよ。六甲山の100万ドルの夜景見ながらや」


妻「え、それ私行ってない」


夫「えー?行ったやんか!」


妻「違うわ。ホテルの最上階のバーでな、ワイン飲みながらな...」


夫「それ、わしちゃうで」








家庭風景4 (松尾家)




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妻「んーなんでだまっとるん?私な明日会社休めるねん」


夫「ごめん」


妻「え?え?なんで謝るん?」


夫「ごめん」


妻「私の何がダメなんかなん?」


夫「俺な朝起きると指がめっちゃ痛いねん。なんかなぁー寝てる間に指輪をぐーっと外そうとしてんねん。」


妻「え?離婚したいってこと」


夫「無意識やねん、ごめんな」








家庭風景5 (長谷川家)



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娘「なんでうちがコロッケ3日続いたこと松本さんに言うのよ」


母「4日」


娘「もう、ばーちゃんボケたふりしないでよ。聞いてる?ばーちゃん」


母「ばーちゃん、ばーちゃんって、私はあんたを産んだかーちゃんなんだよ」


娘「どっちでもいいわよ。そんなこと言ってると養老院いれちゃうよ」


母「あ、今度花火大会があるねー」


娘「一緒に見に行こうか」








家庭風景5 (山本家)



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父「やっと阪神勝ったわ。鳥谷やで鳥谷」


母「イチロー?」


父「なんでやねん鳥谷やろ」


母「私、イチロー見たで」


父「オリックスの時代やろ」


娘「くだらな」


 娘部屋を出て行く。


 父、母そっと娘が出て行った廊下の先を伺う。


 娘戻る。


娘「私な学校でムシされてるねん。毎日孤独だった。でももうええねん」


父「そうか、そうか」


母「あんたがええなら、ええ。さ、御飯食べようか」




 家族3人は食事を始める。






(暗転)








 案内人が登場し、駅前に、行列が出来ているのを不思議に思う。その行列はカラオケ屋さんの順番待ち。


 登場人物が全員舞台上に並ぶ。


 案内人が言う。「そのカラオケは、個室になっていて、一人カラオケなんだって」




 登場人物が、一人ずつ明かりのスポットに入り、自己の内的な世界を、歌詞に載せて歌い上げる。演歌あり、ポップス、シャンソン、童謡、アニメソングなど、さまざま。


 一人カラオケだと、まともなものも、次々と展開されると、気味悪くも滑稽な世界となる。個人個人の「思い入れ」だけが抜き身でさらされる。






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(暗転)






 バラバラだったカラオケ屋の個人が、集会所で一体感を持って、真中のテレビの画面を見つめている。集会所は「選挙事務所」なのだ。


 集まった町民が選挙速報に集中している。


「当選確実」の選挙速報が入り、集まった人々の喜びが爆発する。


 喜びに満ちた候補者が表れ、後援会長が挨拶し、万歳三唱や花束贈呈などの一連の儀式が終わると、誰ともなく「六甲おろし」の合唱が始まる。


 この地の住民にとって、「六甲おろし」は誰しもの愛唱歌なのだ。「六甲おろし」に、観客を巻き込んだ、一体感が生まれる。






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町内万歳三唱「で六甲おろし」を合唱する。




(終わり)