人体の水の出口は「呼吸」「発汗」「大便」「小便」の4つです。
水の性質(體)と作用(用)
地球は地表の70%が水に覆われた惑星です。水が太陽に熱せられ蒸発して天に上り雲となり、冷やされて雨となって降りそそぎ山から川へ、そして海へと循環します。雨と云うものは陰の気が萌きざしている所へ陽の気が入ってくる時に初めて降らせることが出来ると云われております。
水は「潤うるおす」と云う性質(體たい)と、天上から地表へ落下して低い所へ向かって「流下りゅうかする」する作用(用よう)があります。この水の體・用を「潤じゅん・下か」と呼びます。
人体における水の働き
1. 生命活動の基本となる酵素反応を活性化する。
2. 血液中に入り栄養素や老廃物、ホルモンの運搬をする。
3. 体内の不要物(老廃物)を発汗・大便・小便により排泄させる。
4. 発汗・大便・小便により体温調節をする。
水の摂取は1日で2000ml~2500mlで、排泄は水が蒸発して出て行く呼吸から400ml、発汗からは600ml、腎臓を経由して泌尿器から小便として1000ml~1500ml、消化器を経由して大便として200ml(糞便250g×80%)で摂取と排泄のバランスが調和します。
糞便中の水分が80%ならばバナナの様な柔らかさの快便となり、60%以下ならば「大便堅だいべんかたし」というカチカチ・コロコロ便となり、水分が90%以上ならば水状の下痢便となります。つまり人体に於ける水の排泄は「呼吸」「発汗」「大便」「小便」の四通りなので、これらの調和が大切になります(図95)。
身体の中に熱を持つと小便は褐色で濃くなり尿量も減少します。身体の中が冷えると(少陰腎経の冷え)小便は白く透明で回数や尿量も増加します。傷寒論には、大便が堅くなるのは亡津液=大腸の水分不足が原因で、「桂枝去桂加白朮湯けいしきょけいかびゃくじゅうつとう」など桂枝を去って白朮が配合された方剤を用いなさいと云っております。白朮は茯苓と組み合わさると利水剤として作用しますが、白朮や茯苓は単体では生体内の水を調和させる作用となります。
方術説話よれば白朮は「ボク曰く 水をさばき、その滞とどこおりを除き、よく小便を調ととのう。故に小便不利しょうべんふり、小便自利しょうべんじりを治す。不利は出具合悪きを謂う。又小便少なきをも謂う。則ち出過ぎる者の事。小便の出が悪い筈なのに反って出の好よい者の事も自利と謂う。小便が少なくて下痢する者、小便の出が好くて便秘する者、筋や骨の痛む者、めまいのする者、頭の重い者、胃がふくれて食進まず或は吐く者、朮のゆくべき場合には必ず小便の出具合を確むべし」。とあり決して利尿作用だけではありませんと書かれております。
問診は大小便の二便の状況に加えて、水の収支バランスを調べます。つまり摂取した水の量と呼吸・発汗と大便、小便で体外へ排泄された水の量を勘案します。多汗症の人は大便が堅く小便量が少ない傾向が見られるので、水を小便から通す治法、「複方霊黄参丸」+「防已黄耆湯」を用います。コーヒー(カフェイン)などを沢山飲む人や、降圧利尿剤を長期連用している人は低体温で小便量が多く、大便は堅く、発汗はしない傾向が見られるので、「複方霊黄参丸」+「桂枝去桂加白朮湯(白朮附子湯びゃくじゅつぶしとう)」で大小便を調える治法で大腸の水分量を増やします。
便秘だから大黄・芒硝の下剤を使う、多汗症だから黄耆製剤を使うのでは無く、先ずは水の出口を考えて小便を調える事から始めます。

